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2020年10月13日

発行元:(株)資生堂

技術・研究開発

資生堂、加齢による皮膚免疫力変化のメカニズムの一端を解明

資生堂は、マサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(CBRC)*1との共同研究により、加齢した皮膚では真皮中のランゲルハンス細胞*2の前駆細胞*3 (以下、LC前駆細胞)が減少するとともに、LC前駆細胞を表皮に誘引する因子の産生が低下することにより、成熟したランゲルハンス細胞の減少を引き起こしていることを発見しました。
今回の研究によって、これまで未解明だった、皮膚中のランゲルハンス細胞の加齢による減少メカニズムの一端が解明されました。今後、この研究成果から加齢によるランゲルハンス細胞の減少を予防し、皮膚の生命力を高めて皮膚本来の力を引き出す新たなスキンケア技術の開発を目指していきます。なお、本研究成果はJournal of Investigative Dermatology誌に掲載されました。
*1 CBRC (Cutaneous Biology Research Center)…1989 年に資生堂のサポートにより、ハーバード医科大学とマサチューセッツ総合病院が設立した皮膚科学領域の先進的な研究開発をする総合研究所。資生堂からも研究員を派遣し、世界的な研究者とともに共同研究を行っている。
*2 ランゲルハンス細胞…骨髄で造られる樹状細胞で、表皮で網目状のネットワークを形成するように存在している(ランゲルハンス細胞は表皮全体の細胞数の2~5%)。1886年に発見した医学者パウル・ランゲルハンスにちなんで名づけられている。
*3 前駆細胞…幹細胞から特定の細胞へ分化する途中段階の細胞。真皮に存在するLC前駆細胞は、表皮に移動して分化すると、正常なランゲルハンス細胞として免疫機能を発現する。

【研究の背景】
皮膚を若わかしく・美しく保つためには、皮膚本来の力を引き出し、皮膚の生命力を高める恒常性(ホメオスタシス)を維持することが重要です。皮膚の恒常性を維持するための機能である皮膚免疫で重要な役割を果たすのがランゲルハンス細胞であり、資生堂は30年以上にわたりCBRCと皮膚の免疫に関する共同研究を行ってきました。今回の共同研究では、加齢に伴う皮膚免疫機能の変化に着目し、これまで以上に厳密な実験条件の下で、詳細なメカニズムの解明を目指しました。

図1. 今回の研究で示唆された加齢によるランゲルハンス細胞の減少メカニズム

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加齢により、ランゲルハンス細胞、LC前駆細胞、LC前駆細胞誘引因子いずれも減少する

若年層(16-28歳、N=20)および高齢層(53-74歳、N=21)の女性に共通した非露光部位である胸部から採取された皮膚中の、ランゲルハンス細胞、LC前駆細胞、LC前駆細胞誘引因子について、多重免疫染色法※4などの手法を用いて詳細に解析しました。
*4 多重免疫染色法…同一の試料において、複数の目的因子を異なる蛍光色で染め分ける方法。複数の因子間の相関関係を明確に判定できる利点がある。

(1) 表皮中のランゲルハンス細胞数は加齢により減少する
過去の研究結果同様に、加齢した皮膚において表皮内のランゲルハンス細胞は大きく減少していることが確認されました(図2)。

(2) 真皮中のLC前駆細胞数は加齢により減少する
次に、LC前駆細胞と考えられるCD14、CD207およびCCR6陽性細胞の数を検証したところ、高齢層の真皮では有意に減少していることを見出しました(図3)。

(3) LC前駆細胞の誘引因子は加齢により減少する
さらに、LC前駆細胞を表皮へと誘引する因子の発現を調べたところ、それらの中でも、加齢した皮膚ではCXCL14の発現量が著しく減少していることが分かりました(図4)。

図3. 真皮中のLC前駆細胞数の比較

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図4 若年層と高齢層の皮膚内におけるLC前駆細胞誘引因子CXCL14の発現量の比較

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LC前駆細胞の皮膚への移動(遊走)は加齢により顕著に低下する

実際に皮膚を器官培養し、LC前駆様細胞(THP-1)を使って皮膚への遊走を解析しました。
その結果、高齢層の皮膚では、若年層に比べてLC前駆様細胞の遊走が著しく低下していることが確認されました(図5)。

図5. 若年層と高齢層の遊走比較

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LC前駆細胞誘引因子CXCL14はLC前駆細胞の遊走に関与

若年層皮膚におけるLC前駆様細胞の高い遊走に対して、抗CXCL14抗体を加えることで誘引因子の働きを抑制した影響を評価したところ、LC前駆様細胞の遊走が顕著に低下しました。一方で、遊走の低い高齢層皮膚に対してCXCL14を添加したところ、遊走は大きく増加しました(図6)。

図6 LC前駆細胞の遊走に与えるLC前駆細胞誘引因子CXCL14の作用

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今後の展望

ランゲルハンス細胞は、加齢によって減少することが報告されていましたが、今回の研究データは、そのメカニズムの一端を示唆していると考えられます。
これは、LC前駆細胞の誘引因子CXCL14の機能を保ち、LC前駆細胞の表皮への供給能力を維持することが、表皮中の成熟したランゲルハンス細胞の維持のために重要であることを示唆しています。今回の発見により、加齢によるランゲルハンス細胞の減少を予防し、皮膚の生命力を高め皮膚本来の力を引き出すことで肌を若々しく、美しく保つための新たなスキンケア技術開発を目指していきます。

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。