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オンライン版 統合レポート2023

CM&IO

ビューティーイノベーション戦略CM&IO
MESSAGE

CM&IOメッセージ

常に生活者の変化や社会の潮流を捉え、生活者の期待を上回る
高付加価値を創出する資生堂のエンジンとなるべく、
基礎研究シーズの価値を最大化して商品につなげ、
サステナブルに生活者に価値を提供し続けていきます。

執行役 エグゼクティブオフィサー 副社長
チーフマーケティング&イノベーションオフィサー(CM&IO)
チーフブランドオフィサーブランドSHISEIDO
岡部 義昭

常に生活者の変化や社会の潮流を捉え、生活者の期待を上回る高付加価値を創出する資生堂のエンジンとなるべく、
基礎研究シーズの価値を最大化して商品につなげ、サステナブルに生活者に価値を提供し続けていきます。

ブランドイノベーション改革

2021年からスタートしているブランドイノベーション改革は、宝の山である基礎研究シーズをブランド成長や生活者の価値に結び付けていくことを最大のテーマとしています。まずは、研究開発(R&D)の強みや競合との差別化要因の分析から、一見相反するように見える価値を巧みに融合する、資生堂ならではのアプローチを導き出し、「別タブでリンクを開くアイコンDYNAMIC HARMONY」という研究開発理念を定義しました。

DYNAMIC HARMONY
DYNAMIC HARMONY

今では、まさに研究員のDNAとして全員が同じ言葉で語れるまで浸透しています。しかし、当初制定した5つのアプローチは先人たちが培ってきたものです。今、研究員たちは、6つ目、7つ目の「DYNAMIC HARMONY」を生み出し、未来に紡ぐべく切磋琢磨しています。「DYNAMIC HARMONY」に終わりはありません。

体制面では、研究開発機能全体の整理・統合を進めるとともに、研究開発とブランドとの一気通貫体制を構築してきました。また、研究開発の優位性を名実ともに確立していくためには、社外との対話・共創が不可欠との考えから、基礎研究成果・知見の可視化、研究開発成果の積極的な対外発信などにも取り組んできました。

そして2022年には、ブランドイノベーション改革を加速するべく「2030 R&D VISION」を掲げました。私たちは常に生活者の変化や社会の潮流を捉え、生活者の期待を上回る高付加価値を提供していくことが必要であり、研究開発はそのエンジンとなっていきます。

2030 R&D VISION

  1. 生活者の期待を上回り、競合優位性の高いイノベーションを継続して生み出すR&Dに生まれ変わる
  2. 循環型の価値づくりでサステナブルな社会の実現に向け業界をリード
  3. 化粧品に次ぐ新領域・新カテゴリーに挑戦し、新たなビジネスを創出
  4. グローバルで優秀な人財が集まる研究開発体制を創る(脱単一カルチャー)

We are the engine of BEAUTY INNOVATIONS.

研究開発戦略の概要と進捗

「2030 R&D VISION」のもと、戦略構造としては、以下3つのイノベーションの柱と「脱単一カルチャー」というアプローチを策定しています。現在、これまでの改革を背景に続々と成果が生まれ、商品開発にもつながり、生活者に価値提供できるようになってきています。

  • Skin Beauty INNOVATION

    資生堂の強みと市場規模を踏まえ、スキンケア、サンケア、ベースメイクなどの領域に注力し、経営基盤の盤石化を図ります。2023年は、これまで蓄積してきたテクノロジーを次々と市場にアウトプットし、各商品が種々のコスメ大賞を受賞するなど、生活者や市場から高い評価を得ています。具体的には、たるみやしわに関するテクノロジーを導入した「エリクシール」のクリームがそれぞれシェアNo.1注釈を盤石化する大ヒットとなりました。また、「SHISEIDO」は、睡眠に着目したホリスティック研究から、肌免疫を切り口として進化した美容液アルティミューンを発売し、大幅な売上成長を実現したほか、6カ月という短期開発の好事例ともなりました。

  • Sustainability INNOVATION

    循環型の価値づくりで、環境・社会課題の解決を行うことを目的に、原材料・処方・容器包装を一層サステナブルなものにしていきます。2023年から実証実験を開始している、ケミカルリサイクリングを特長としたプラスチック製容器の収集・再生プロジェクト「BeauRing」も着実に進展しています。また、2022年に発表した「LiquiForm注釈技術を世界で初めて化粧品に採用した「SHISEIDO」新生オイデルミンは、2023年3月の発売以降好調に推移したことに加え、多くのビューティーアワードを受賞しました。

  • Future Beauty INNOVATION

    「Personal Beauty Wellness Company」の実現に向け、中長期的な成長のために、データサイエンスと測定による新たなスキンビューティー体験や、化粧品にとどまらないインナービューティーなどの新領域・新カテゴリーの創出を目指しています。IFSCC注釈で発表した「肌・身体・心の関係性に基づいた資生堂独自の美のアルゴリズム」の知見を応用・実装し、2024年2月にインナービューティーの新ブランド「SHISEIDO BEAUTY WELLNESS」を発売しました。第1弾として、コラーゲンサイクルに着目しリニューアルした「ザ・コラーゲン」を含む3商品ブランドで計14製品を開発しています。中でもカゴメ(株)と共同開発した「ROOTINA」、(株)ツムラとの共同開発による「TUNE BEAUTE」は、他社協働の取り組みの成果となった商品です。

  • 脱単一カルチャー

    日本のグローバルイノベーションセンター(GIC)での基礎研究から開発研究へと積み上げる研究だけでなく、多様なイノベーションを創出する研究開発体制をつくり上げていきます。グローバル体制面では、GICとリージョンイノベーションセンター(RIC)の連携強化として、世界5カ所のRICの役割明確化、権限移譲を進めています。2023年にはIFSCCにおいて資生堂初となる3つの賞注釈を受賞しましたが、うち1つの最優秀賞は欧州のRICからの研究発表でした。これは香りを介した感情のコミュニケーションに関する研究内容であり、香り領域を強みとする欧州のRICだからこその成果です。また、外部連携(オープンイノベーション)として、チャレンジ領域での投資を強化しました。先述した、カゴメ(株)や(株)ツムラとの共同開発のほか、藻類から化粧品原料や容器を作り、循環型のモノづくりを実現するために、バイオベンチャーであるちとせグループへの投資と協業も進めています。多様なイノベーション創出に向けた人財開発にも注力しており、専門職制度の強化などの社内施策の拡充に加え、30年超の連携を続けているマサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(CBRC)注釈への研究員派遣の継続強化、さらには未来型イノベーションをリードする次世代の人財育成のために冨田イノベーターファーム注釈などへの研究者派遣も行っており、国内外の研修制度の整備を進めています。

今後の注力事項

2024年以降は、特に「実行」にこだわります。研究領域・技術面では、引き続き戦略的に重要と位置づける骨太なサイエンス/テクノロジーの創出に力を注ぐとともに、地域およびブランド横断での技術活用を進めることで、資生堂の競争力を高めます。テクノロジー創出のロードマップは精緻に設計済みで、今後はこの計画を着実に遂行していきます。また、脱単一カルチャーの加速として、中国に続き米国のRIC機能の強化を図るとともに、地域の特性を活かした基礎・応用研究の比率を高めていく計画です。加えて、「多様な知と人の融合」の実現を目指し、都市型オープンラボとして2019年に設立したGICの拠点「S/PARK」は、設立5年目を迎える2024年を飛躍の年と位置づけます。生活者との共創、トライアルを含めた総合的なビューティーウェルネス体験の発信地となるべく、コンテンツを刷新していきます。

KPIと進捗管理

こうした戦略を進める上で、各進捗を可視化するため、体系的なKPIを整備しました。ここでは、開示可能なKPIとしてアウトプット側の指標を紹介します。これらは、意図したアウトプットが生み出せているかをモニタリングするもので、投資対効果を測定する上での重要指標となっています。

CM&IOの責任として、研究だけではなく市場インパクトまで評価可能なKPIを設定する必要があると考え、テクノロジーと市場シェアの両面を設計しました。例えば、研究としては優れているものの、ビジネスインパクトが出ていなければ、技術の価値化が不十分であることが分かります。加えて、環境・社会課題への対応、さらには将来のイノベーションの種として、プレ財務指標ともいわれる知的財産のKPIを採用し、サステナビリティと研究開発、ビジネスでの成功を生み出していきます。

2024年4月

アウトプット指標と位置づけ

  • 骨太なサイエンス/テクノロジー注釈
    毎年複数件を継続的に創出

    最重要戦略として定義したサイエンス/テクノロジーの創出状況を測定

  • 重点カテゴリーにおけるブランドと連携した新製品シェアの目標達成

    創出した研究成果がビジネスとしてインパクトをもたらしたかどうかを測る指標。カテゴリーは各年で設定

  • サステナビリティ関連の全社目標達成

    サステナビリティ
    (戦略アクションと中期目標)
  • 戦略領域の特許出願比率:
    50%以上

    戦略領域にフォーカスしながら、イノベーションの多様性も維持する指標

  • 海外特許出願比率:
    70%以上

    高い海外売上を支えるための特許指標

主な研究開発事例

  • 資生堂独自の美のアルゴリズム開発

    当社が100年以上蓄積してきた研究知見と、理化学研究所などとの共同研究成果を融合し、複数の肌状態と体内指標をつなげ、肌を改善・予測・予防に導く独自の美のアルゴリズム群を開発しました。また、これらアルゴリズムをもとにした技術として、顔画像から将来の肌悩みを予測できるツールを開発し、2024年からインナービューティー事業に実装しています。

    資生堂独自の美のアルゴリズム開発
  • 免疫による老化予防の研究

    資生堂の30年以上におよぶ肌免疫研究から、免疫細胞が老化細胞を選択的に除去することで「肌の老化を予防」していることを発見し、研究成果が著名な学術誌に掲載されました。新たなソリューション開発につなげます。

    Hasegawa T et all., Cell 2023
    Hasegawa T et all., Cell 2023
  • 循環型化粧品原料の開発・活用と価値化

    「BeauRing」や「LiquiForm」に加え、琉球大学との共同研究や(株)イノカとの連携協定を通じた環境への影響評価を行うほか、ちとせグループが率いる、藻類基点のサステナブルな新産業を構築するプロジェクト「MATSURI」へ参画し、新規循環型原料の開発に取り組んでいます。

    原料開発に取り組むブランド価値開発研究所 小口希と伊東祐仁
    原料開発に取り組む
    ブランド価値開発研究所
    小口希と伊東祐仁
  • Shiseido Innovation Conference 2023 - Beauty for the Future - 開催レポート別タブでリンクを開くアイコン
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