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オンライン版 統合レポート2023

社外取締役

指名委員会 委員

報酬委員会 委員

大石 佳能子

畑中 好彦

社外取締役

指名委員会 委員

報酬委員会 委員長

構造改革と今後の成長の方向性や取締役会の役割について
社外取締役の2名が語りました。

2023年の総括

2023年は、コロナ禍の収束から成長フェーズに移行する「SHIFT 2025 and Beyond」の初年度でした。事業変革と成長ドライバーへの積極投資を進め、米州・欧州・アジアパシフィック事業が伸長するなど着実に成果をあげました。しかし、中国経済の変化と処理水問題の影響により、中国事業は想定以上の打撃を受け、厳しい業績となりました。ただし、これは一過性の問題ではなく、長年課題視してきた収益構造やポートフォリオの問題が、環境変化によって明確に浮き彫りとなったのだと捉えています。

私は、当社社外取締役の1年目であり、これまでの変革の推移を理解しながら経営にあたってきましたが、まさに中長期での成長に向けた構造改革を進めていた中で、中国市場の変化が与えた経営へのインパクトは多大でした。

一方、大石さんがおっしゃるように、改革が結果として現れてきている点は評価しています。例をあげると、中国への依存度を下げるための米州・欧州事業の着実な成長、日本事業の構造改革アクションの開始、データ主導でのマーケティングを実践するためのDXの取り組みなどです。

取締役会でも、短期的な業績回復の議題とともに、根本的なブランド力の強化や、日本・中国事業のビジネスモデル転換などの議論を尽くしましたね。中国事業の位置づけや成長戦略については、特に深度のある意見交換がなされたのではないでしょうか。

懸案事項は総じて対処してきましたが、今、あえて結果論として申し上げると、リスクとして認識していた日本市場の回復の遅れや中国市場の変化などに対し、2023年以前にもっとスピード感を持って改革すべきだったという反省もあります。経営環境は一夜にして変わります。何があっても耐えられる筋肉質な収益構造、機動的に意思決定できる瞬発力が不可欠です。

スピード感に関連していえば、グローバルで競争していくためには、これまで以上に実行速度や柔軟性を高めていく必要があります。過去、中国市場やインバウンドの拡大を取り込んで成長してきたことは大きな成果でしたが、中国市場は成熟化し、洗練されてきています。多様化する市場に対する事業変革はもちろん、私たち一人ひとりも、消費者ニーズの変化への感度をあげるべきだと考えています。加えて私は、構造改革の先の成長が重要との考えのもと、2023年の取締役会では、グローバルブランドの価値向上、新市場の開拓、研究開発の知見を駆使したブランドイノベーションなどを、特に注視してきました。「Dr. Dennis Gross Skincare」の買収なども結実しましたが、今後はさらに果敢に攻めるべきだと思います。

社外取締役対談

2030年に向けて

当社は、2030年ビジョンとして「Personal Beauty Wellness Company」を掲げています。この実現に向けては、収益構造改革、ブランド・商品の大胆な選択と集中と地域ポートフォリオの見直しを進めていくことが必須です。換言すれば、資生堂はビジネスモデルの転換に取り組んでいるのです。

根幹は、お客さまの期待に応える価値提供です。そこでは強みである研究開発力を発揮し、イノベーションを活かしていくわけですが、技術起点や提供者側の論理に陥る危険性もあります。私たちは、生活者を真に理解しなければなりません。化粧品などの商品を通じた直接の接点だけに留まらず、生活者の行動、価値観、人生にスコープを広げることが重要で、そこに対応できる企業に変革していく必要があります。

今一度、提供価値を心して見直す必要がありますね。資生堂のブランドは強固に確立された重要な資産ですが、依存しすぎることなく進化を続けることが事業構造の変革につながります。当社の持つ研究開発力による技術革新、深い生活者理解に基づく市場創造・イノベーションにより、独自の高付加価値を持ったブランドを構築することで、資生堂ならではの価値創造を実現できるのではないでしょうか。メンズやインナービューティーなど多様化する分野への展開も進めていきますが、既存の構造から脱却し、提供価値を基軸にした取り組みの加速を支援していきたいと思います。

組織風土の面でも、既存の枠組みから変革していきたいですね。魚谷さんもかなりメスを入れ、私が社外取締役に就任した8年前と比較すると大分改善してきましたが、困難な状況に直面すると、部門間でのサイロ(分断)や率直な意見への躊躇などが垣間見えることがあります。時間を要する課題ではありますが、変革のスピードや実効力にかかわる問題でもあり、改善に力を注いでいきたいと思います。

そうですね。社内の風土としては、もっと前向きな機運をつくらないといけないとも思います。世界にビューティーイノベーションを起こそうという、ユニークで夢のある取り組みを進めているわけですから、もっと社員が明るく前向きであってしかるべきだと思います。短期的には厳しい業績とタフな構造改革に関心が向くのは仕方ない一面もありますが、社員一人ひとりが企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」を再度確認し、その先の明るい未来を信じていくことが必要です。

社外取締役対談

ガバナンス体制

これまでの対談の中でも何度か話題にあがった「スピード感」を高めるため、今般、ガバナンス体制を指名委員会等設置会社に移行することとしました。経営の監督と執行の役割を一層明確にすることで、執行側はスピードを持って戦略執行と変化対応に集中し、取締役会は中長期の課題抽出や経営戦略策定に注力することを狙いとしています。

当社は高度なガバナンス体系を構築していると認識していますが、この体制変更により、執行の柔軟かつ健全なリスクテイクと、取締役会の監督機能強化を進めていきます。執行側は、権限委譲が進むことで説明責任、実行責任、結果責任が大きくなります。取締役会では、各種経営指標のモニタリングとともに、レジリエントな経営体質に進化しているかどうかを測ることで、リスク許容度をあげていく考えです。

ガバナンス面では、サクセッションも重要な論点です。経営体制の移行は、ビジネスモデルと企業文化の変革と並行するものであり、その担い手となる執行側や人的資本の充実とセットで議論を進めています。

サステナビリティについても取締役会で重要視していますね。当社は、ESGにかかわる戦略や各種KPIの策定・見直しを議論し、役員報酬の指標にESG項目を組み込んでいますが、これらは企業価値とESGの結び付きを説明する取り組みとしても重要です。非常に難易度の高いテーマですが、ステークホルダーへの説明に向けて、取締役会でも議論を重ねています。

私たち社外取締役としても、株主・投資家の皆さまとの直接対話を重視したいと思います。特に有意義なのは、資本市場の求めるものを深く知り、経営に取り入れることです。これまでも魚谷さん、藤原さんやIR部門から、投資家面談内容を逐次共有してもらっていますが、今後は多様な形式・場で資本市場との直接の意見交換を実施していきたいと思います。

その意味では、この「社外取締役対談」も非常に重要ですね。私たちの意志や取り組みをご紹介することで、株主・投資家の方々との建設的な議論につなげていければと思います。端的に言えば、取締役会では、新たな成長に向けた経営資源の投下先について、多面的に議論しています。この議論の内容・プロセスなどを執行側と共有し、社内外ともコミュニケーションをとっていきたいと思います。

おっしゃる通りですね。私も、畑中さんが何度かお話しされているように、前向きに明るく変革を進める会社になっていきたいと思いますので、そのためにも経営と執行の強い信頼関係のもと、ともに企業文化・仕組みを構築したいですね。畑中さん、本日はありがとうございました。

はい、未来に向けて大胆な変革を遂げていきましょう。こちらこそありがとうございました。

2024年4月

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