2026年07月06日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、張力で包み込み、顔の形状を保つ「リングコラーゲン™」を発見
~皮膚が生み出す力を立体的に再現、「デジタルスキンリアリティ™」を開発~
株式会社資生堂(以下、資生堂)は、国際医療福祉大学 医学部形成外科学 主任教授 松﨑恭一先生と、自治医科大学、生理学研究所との共同研究により、顔の肌には、特徴的なリング状のコラーゲン構造「リングコラーゲン™」が存在し、これが肌に張力を生み出し、たるみの無い顔形状を維持することを発見しました。
この知見を基に資生堂は、皮膚に適度な物理的刺激を加えることが、加齢で構造が乱れたリングコラーゲン™の構造と、たるみの改善に繋がることを明らかにしました。さらに、ローズヒップエキスと「べにばな」由来エキスに、リングコラーゲン™の構造を改善する可能性があることを見出しました。
本研究では、世界に先駆けて皮膚に発生する力を可視化し、さらにそれを立体的に再現した「デジタルスキンリアリティ™」を開発しました。この新技術により、顔の形状を維持する張力の仕組みが明らかになりました。
本研究の一部は、「第32回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)ロンドン大会(2022年9月)」にて発表し、トップ10に入賞。さらに同大会では基調講演も行いました。
図1 リングコラーゲン™が顔の形状を保持する機構 (1. リングには収縮する力が発生し、2. このリング同士が引き合うことで張力が発生、3. 顔を包み込む力が生まれる)
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研究背景
「重力」で皮膚が垂れ下がるたるみは、加齢とともに大きな悩みとなります。これまで資生堂は、たるみ研究のパイオニアとして、たるみの定義や評価法等の研究基盤を確立し、たるんだ皮膚内部を可視化する技術を開発するなど、重力で皮膚がたるむ原因を明らかにしてきました。今回、研究チームは、たるみのより根源的な原因の解明に挑みました。
若齢者の肌は、ピンと張っています。この皮膚を張る力、すなわち「張力」が加齢で失われると、皮膚はゆるみ、重力で垂れ下がることで、たるみに繋がります。つまり、たるみのより根源的な原因は、張力が加齢で失われることにあると考え、研究を進めました。
リングコラーゲン™が肌に張力を生み出す
張力に満ちた若齢者の顔の皮膚は、切り出されると速やかに収縮します(図2)。そこで、実際に切り出された顔の皮膚が収縮する過程を、新たに開発した「デジタルスキンリアリティ™」で解析したところ、皮膚を収縮させる力は、皮膚内部の特定の部位で強く発生することが示されました(図3)。また、この部位にはコラーゲンがリング状に存在していました。さらに、実際の顔の中では、個々のリングが収縮して互いに引き合うことで、皮膚全体に張力が生み出され(図1)、この張力が顔を包み込むことで、顔の形状が維持されることが示されました。
図3 皮膚が収縮する力を生み出すリング状のコラーゲン構造 (左:顔の皮膚が収縮する際に、リング状の強い力が発生する部位が存在〈白丸〉。右:リング状の部位には、コラーゲンが存在〈赤丸〉。)
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加齢によるリングコラーゲン™の構造変化とたるみ
リングコラーゲン™は、うぶ毛や皮脂腺を取り囲むプロテオグリカン(関節にも存在するクッション性の高い物質)の周囲に存在することが確認されました。また、このプロテオグリカンが、加齢に伴い減少することで、リングコラーゲン™の構造が乱れることも確認されました(図4)。さらに、リングコラーゲン™の状態が悪化することで、張力が低下し、たるみに繋がることが示されました。
<物理的な刺激と植物エキスがリングコラーゲン™構造の改善に寄与>
加齢で構造が乱れたリングコラーゲン™を改善するために、培養した皮膚に様々な刺激を加えたところ、皮膚に適度な物理的刺激(全方向へのストレッチ)を加えることで、リングコラーゲン™の内部を満たすプロテオグリカンが増加することが確認されました(図5)。さらに、この刺激が、リングコラーゲン™の構造と、たるみの改善に繋がることが示されました。また、ローズヒップエキスや「べにばな」由来エキスに、プロテオグリカンの遺伝子発現を促進する作用があることを見出しました。
図4 加齢に伴うリングコラーゲン™の変化 (顔の皮膚の水平断面像。若齢者で認められる明確なリングコラーゲン™形状〈赤丸〉が、高齢者の皮膚では確認されなかった。)
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張力の実態を解き明かした新技術「デジタルスキンリアリティ™」
今回、張力の実態を解き明かす鍵となったのが、AIを活用し皮膚に発生する力を可視化した新技術です。皮膚内部に高密度の観察点を設定し、皮膚が収縮する際に、各点がどのように動いたかを追跡することで、発生した力の解析を実現しました。
さらに、裸眼立体視技術※と高速データ処理システムを組み合わせることで、解析結果を立体的に再現し、目の前で動くデジタル皮膚として、空間上で解析することを可能としました(図6)。これにより複雑な皮膚の構造と、そこに発生する力を、直感的な操作で理解できるようになりました。
皮膚の可視化の対象を、目に見えるもの(皮膚の4次元的な動き)から、目に見えないもの(皮膚に発生する力)へ、そして可視化の場をモニター画面上から空間上へと拡張しました。
※裸眼立体視技術とは、専用メガネなどの機器を装着することなく、立体的(3D)に映像を表示する技術。
図6 デジタルスキンリアリティ™ 。変形した皮膚に発生した力の強度を、色で表示。(観察者に見える状態を示したイメージ像)
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※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。