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2024年01月31日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂、肌内部へ浸透した有用成分の分布を 細胞レベルの解像度で可視化し、機能性や安全性の加速へ

~化粧品・医薬部外品成分の浸透経路や標的細胞への送達状態などの情報を取得し、処方設計へ応用~

資生堂は、肌内部へ浸透した化粧品・医薬部外品成分の分布を細胞レベルの解像度で観測できる画期的な分析技術を、株式会社東レリサーチセンターとの共同研究により開発しました。株式会社東レリサーチセンターが保有する超高解像度元素イメージング技術(NanoSIMS)と当社が強みを持つヒト皮ふ観察技術を組み合わせることで、肌内部に浸透した成分の鮮明な可視化が可能になりました。本技術により、化粧品・医薬部外品成分の角層における浸透経路や標的細胞への送達状態など、これまで得られなかった貴重な情報の取得が可能になり、より高い機能性・安全性をもつ製品の開発が加速されます。
本研究成果の一部を「第33回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)※1バルセロナ大会(2023/9/4-7)」で発表しました。(図1)。
※1: IFSCC: The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists

図1 本分析技術による観測例: 有用成分が角層・細胞膜・細胞核に浸透している様子

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肌内部への化粧品・医薬部外品成分の浸透度評価の重要性とその評価方法

化粧品や医薬部外品に用いられる有用成分の肌への浸透度を評価することは、機能性と安全性を両立した製品開発の加速に大きく寄与します。化粧品・医薬部外品成分の浸透度の評価は、肌への塗布後に直接肌から成分を抽出しその量をLC/MS※2で測る方法と、肌組織内の成分分布を可視化する質量分析イメージング技術を併用して行ってきました。しかし従来の質量分析イメージング技術は、細胞レベルの極めて小さな空間の成分分布を可視化できる解像度がなく、最も知りたい角層における浸透経路や標的細胞への成分送達を詳細に把握することは技術的に困難でした。今回、化粧品・医薬部外品成分の浸透経路や標的細胞への送達状態などの詳細な情報を取得し、機能性や安全性を考慮した処方設計へ応用することを視野に、より高い解像度をもつイメージング技術の開発を目指しました。
※2 高速液体クロマトグラフィー(LC)と質量分析(MS)を連結して行う分析技術

細胞レベルの解像度で有用成分の浸透・分布の様子を可視化する技術

本研究では、主に半導体等の工業材料において、微量な不純物分析などに用いられている、超高解像度元素イメージング技術(NanoSIMS)(図2)に着目しました。資生堂は、株式会社東レリサーチセンターとの3年に及ぶ共同研究により、NanoSIMSでヒトの皮ふを精細に観察する分析技術※3を確立し、有用成分の肌内部への浸透の様子を、核などの細胞小器官が観測できるナノメートル※4オーダーの解像度で可視化することに成功しました(図1)。
※3 考案した分析技術は、一部特許出願済み:特許出願番号2023‐142220
※4 10-9m

図2 本分析技術に用いるNanoSIMS装置 (NanoSIMS 50L、Cameca社製、フランス) (東京大学 マテリアル先端リサーチインフラ の共用設備を利用)

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今後の展望

美容医療の普及などに伴い、生活者が化粧品や医薬部外品に求める機能性や安全性のレベルは、日々高まっています。当社は今回開発した分析技術を活用することで、生活者の期待を超える、より高い機能性・安全性を持った製品開発を進めていきます。




R&D戦略について:
R&D 戦略 3 本柱の 1 つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、シミ・くすみ、シワ、たるみ、毛穴など、長年に渡りお客さまが悩む「不変の肌悩み」の原因解明・ソリューション開発や、血管やリンパ管、免疫、神経など、皮ふ内部の状態と肌との関連を明らかにする「皮ふ基盤」領域の研究を加速すべく、皮ふの計測・評価法や皮ふ表面・内部における有用成分の分析技術を進化させています。
・2022年統合レポート(ビューティーイノベーション)
https://corp.shiseido.com/report/jp/2022/value_creation/innovation/
・キーワード
Skin Beauty INNOVATION、分析技術、浸透

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。