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2022年11月08日

発行元:(株)資生堂

研究・生産

資生堂、唇の角層成分を包括的に解析し、新たなリップケアアプローチを開発

~ヒアルロン酸が唇角層のバリア機能を高める~

資生堂は、口唇(以下、唇)の角層タンパク質と菌叢(※1)を網羅的に解析し、唇の性質を詳細に明らかにしました。これまでは、唇の表面形状や断面の構造観察などの組織学的な側面から唇の情報は知られていましたが、今回、唇の角層タンパク質の構成成分や比率、および角層の菌叢などを網羅的に解析することによって、唇のケアには皮膚科学やスキンケアの視点に加えて、唇から連続して存在する粘膜の視点からもケアするアプローチが重要であると考えられました(図1)。さらに、唇の粘膜を健常に維持・改善するために、唇のバリア機能を高める成分としてヒアルロン酸を見出しました。一般的な皮膚の性質に加えて粘膜の性質も併せ持つ唇に対して、本成分を与えることで、唇のバリア機能を高め、荒れにくく、潤った唇を維持できることが期待されます。本研究の成果の一部は日本分析化学会(2022/9/14-16)で発表しました。
本研究は、資生堂独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』のInside/Outsideというアプローチで研究を進めています。今後も唇の性質を詳細に解明する研究を進め、唇を健やかな美しさへ導く革新的な価値を創出していきます。
※1 菌叢(きんそう): 細菌以外も含めて、ある一定の環境に存在する微生物群。マイクロバイオームとも呼ばれる。

図1. 今回開発した新たなリップケアアプローチ(イメージ)

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研究の背景

唇は一般的な皮膚とは異なり、角層がより薄く、皮脂膜を形成しにくいなどの特徴を持っているため、バリア機能が非常に弱く、「乾きやすい」、「荒れやすい」といった、お客さまの悩みが多い部位です。そのようなお客さまの悩みを解決するためには、唇研究に基づいた正しいリップケアを開発することが重要となります。一方で、化粧品領域における唇の研究は皮膚研究に比較して進んでおらず、特に唇の角層タンパク質や菌叢の詳細情報はこれまで明らかになっていませんでした。そこで当社は、従来の免疫組織染色法(※2)だけでなく、網羅的な分析手法であるプロテオーム解析(※3)およびマイクロバイオーム解析(※4)を実施し、唇の性質をさらに詳細に解明する研究に着手することにしました。
※2 抗体を用いて、組織中の特定のタンパク質を検出する方法。
※3 サンプル中に存在するタンパク質の種類と構成比を網羅的に解析する手法。
※4 サンプル中に存在する菌叢中の微生物の種類と構成比を網羅的に解析する手法。

唇の角層タンパク質と菌叢を網羅的に解析

頬・下唇の角層をそれぞれ採取し、プロテオーム解析によって角層中のタンパク質を網羅的に分析したところ、合わせて約500種類ものタンパク質を検出しました。これらのタンパク質について、主成分分析(※5)による解析から、頬と下唇の角層のタンパク質の組成や存在量が大きく異なっていることを明らかにしました(図2)。その中でも、口腔内の粘膜に多く含まれるたんぱく質(粘膜型ケラチン)は、頬の角層よりも唇の角層に多く存在していました(図3)。
次に、頬・下唇・口腔粘膜のそれぞれから菌叢試料を採取し、マイクロバイオーム解析によって各部位に存在する細菌を網羅的に分析しました。その結果、合わせて4000種類以上の細菌由来DNAを検出しました。この結果を菌叢間の類似性に基づく主座標分析(※6)によって解析した結果、下唇の細菌叢は、頬よりも粘膜に類似しているという結果が得られました(図4)。
以上、プロテオーム解析とマイクロバイオーム解析の結果から、下唇のタンパク質および菌叢、双方の観点から唇の近傍に存在する粘膜の性質を持つことが明らかとなりました。このことから、健やかな唇を保つためには唇の粘膜を健康に維持する視点が重要であることが示されました。
※5 複数存在する分析対象の指標を要約し、容易に可視化できるようにする分析手法の一つ。
※6 複数存在する分析対象の指標を要約し、二次元プロットなどで容易に可視化できるようにする分析手法。

図2. 唇と頬に存在する角層タンパク質の性質の違い(各サンプルのプロットが近いほど類似性が高い)

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図3. 唇角層は頬角層よりも粘膜型ケラチンが多く存在

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図4. 唇の菌叢は、頬よりも口腔の菌叢に類似(各サンプルのプロットが近いほど類似性が高い)

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唇粘膜のバリア機能を高める成分の探索

粘膜の性質を持つ唇をケアすることが可能な原料を探索しました。その結果、肌の潤い保持効果の高い成分として知られているヒアルロン酸に、粘膜のバリア機能を高める効果があることを新たに見出しました(図5)。粘膜の性質も併せ持つ下唇に本成分を与えることで、唇のバリア機能をさらに高め、荒れにくい潤った唇を維持できることが期待されます。

図5. ヒアルロン酸の口内細胞のバリア機能を高める効果

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今後の展望

今回、唇の角層タンパク質と菌叢の観点から、皮膚とは異なる口唇の「粘膜」性質を新たに実証しました。当社のミッションである「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現を目指して身体の各部位に適切なソリューションを提供するための研究を進め、最先端の研究知見をもとに革新的な価値をさらに生み出していきます。

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。