2022年07月13日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、黒ショウガエキスが腸管バリア機能を強化する作用を発見
~体内への異物侵入抑制に着目し、インナービューティーケアに応用~
資生堂は、広島大学大学院 統合生命科学研究科 鈴木卓弥教授との共同研究により、黒ショウガエキスの摂取により、ヒトの腸管バリア機能が強化されることを明らかにしました。黒ショウガエキスは、腸の細胞同士の隙間を閉じて異物の侵入を防ぐ「タイトジャンクション」の働きを強化し、炎症でダメージを受けた腸のケアを実現すると考えられます。また、関与成分やその作用メカニズムについても明らかにしました。本研究成果の一部は、日本農芸化学会2022年度大会(2022/3/15-18)および日本栄養・食糧学会大会(2022/6/10-12)にて発表しました。
本研究は、資生堂独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』の研究アプローチの1つである、肌の内外から健やかな美しさを引き出す「Inside/Outside」の観点で進めました。腸をケアすることで、身体の外側から届く不要なものや有害なものが腸を通して身体の内側に入るのを防ぎ、健やかな身体と肌の実現を目指します。今後、研究成果を食品などのインナービューティーケアに応用していきます。
身体や肌の不調を引き起こす腸のダメージに着目
腸管バリア機能は、細菌などの付着を防ぐ粘液「ムチン」、細菌を攻撃する「抗菌ペプチド」や「IgA(免疫グロブリンA)」、ファスナーのように腸細胞同士の隙間を閉じて異物の侵入を防ぐ「タイトジャンクション」で構成されています。腸管バリア機能を高め、健やかな腸を維持するには、タイトジャンクションの働きが特に重要です。ストレスや加齢、肥満などさまざまな原因によりタイトジャンクションが壊れると、腸はダメージを受けて、異物の体内への侵入を防ぎきれず、身体や肌の不調を引き起こすことが報告されています。そこで今回、タイトジャンクションに注目し、その働きを強化するための研究を進めました。
黒ショウガエキスによる腸管バリア機能強化効果
今回、広島大学大学院 統合生命科学研究科 鈴木卓弥教授と共同で、ヒト腸管細胞を用いて腸管バリア機能強化の効果を調べました。食経験が豊富で安全性が高い約50の候補成分の中から、腸のタイトジャンクションに作用することが確認された15成分を抽出しました。そして、ポリフェノールの一種でポリメトキシフラボノイドに分類される「ジメトキシフラボン」と「ペンタメトキシフラボン」を含む黒ショウガエキスが、特に優れた作用を示すことを見出しました。腸管細胞を用いた実験では、黒ショウガエキスの添加により、バリア機能が強化される様子が確認されました(図1)。さらに、黒ショウガエキスを摂取したヒトの群とプラセボを摂取したヒトの群の腸管バリア機能を比較し、黒ショウガエキス摂取によりヒトの腸管バリア機能が改善されることを見出しました(図3)。
また、黒ショウガエキスに含まれる成分の作用についても研究を実施しました。「ジメトキシフラボン」と「ペンタメトキシフラボン」の2種類が、それぞれ複数のタイトジャンクション構成タンパク質を制御し、タイトジャンクションの強化および腸管バリア機能を増強することを明らかにしました。これにより、健康・美容増進効果が期待できると考えられます。
今後の展望
資生堂は2030年に向けたビジョンとして「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」を掲げ、生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美を実現する企業となることを目指しています。このビジョンの実現に向け、本研究をインナービューティーケアへ応用し、身体の内側からも美と健康にアプローチしていきます。
※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。