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2022年06月30日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂 女性研究者サイエンスグラント 第15回受賞者決定

~女性活躍推進企業として、学術領域における女性の研究活動を多様な視点でサポート~

資生堂は、「資生堂 女性研究者サイエンスグラント(※1)」の第15回受賞者10名を選出しました(応募総数117名)。本グラントは、次世代の指導的役割を担う女性研究者を支援することが科学技術の発展につながるという考えのもと、2007年に設立されました。化粧品関連領域にとどまらない幅広い研究分野を募集対象とし、応募には年齢制限がなく、研究を推進する目的であれば女性のライフイベント(出産や育児)のサポートなどに幅広く使用出来ることなどの特長があります。今回の募集では、特に「人々が幸福を実感できるサステナブルな世界の実現を目指した研究活動支援」および「将来指導的立場を目指す女性研究者の育成」を趣旨としています。当社は、女性活躍を積極的に推進する企業として、日本のSTEM(※2)領域におけるジェンダー間の格差が大きいという問題の解決に対して、女性研究者を取り巻く環境に幅広く目を向けながら、受賞者の研究活動の支援とともに、研究リーダーとしてのステップアップを引き続き支援していきます。
※1 グラントとは「研究助成金」の意味。受賞者には各100万円の研究助成金を贈呈します。
※2 Science, Technology, Engineering and Mathematics

資生堂の女性活躍推進

当社は、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、ダイバーシティ&インクルージョンを経営戦略の柱と位置付けています。なかでも社員が 「個」の力を発揮し、イノベーションを生み続ける組織風土づくりの一環として女性活躍を積極的に推進しています。また、日本の社会でもジェンダーギャップ解消への課題認識が高まるなか、当社はそのリーディングカンパニーとして、社内外に向けて女性活躍への取組みに注力しています。
社内では、管理職としてキャリアアップを目指す女性社員のための女性リーダー育成塾や、女性役員と女性社員によるメンタリングプログラムなどの実施、社会に向けては日本企業の役員に占める女性比率の向上を目指す「30% Club Japan」参画や地方自治体との協働による女性活躍支援活動の実施など、様々な取り組みを進めています。また、経済産業省が東京証券取引所と共同で女性活躍推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」に2年連続で、また『日経WOMAN』(日経BP社発行)の「女性が活躍する会社BEST100」の1位に選定されるなど、社外からも当社の女性活躍支援の取り組みが評価されています。

資生堂独自の取り組み:女性研究者サイエンスグラント

ジェンダーギャップが世界で120位(※3)の日本では、STEM領域においてもジェンダー間の格差が大きいことが問題となっています。研究者に占める女性の割合は 17.5%(※4)で、近年緩やかな上昇傾向にあるものの、諸外国と比較していまだ低い水準にとどまっています。一因として、育児、介護等の役割分担意識(※5)が女性に偏っている日本の社会背景が、女性の研究活動に影響している可能性があります。また、周囲に同じ立場の女性研究者やロールモデル(キャリアの目標)となる女性研究者が少なく、様々な情報が得づらい環境にいる女性研究者も少なくないと思われます。このような状況を踏まえ、指導的立場を目指す意欲があり、科学技術発展への貢献が期待できる女性研究者を支援することを目的に、当社は自然科学分野全般の女性研究者を対象として本グラントを設立し、2007 年から活動を継続してきました。助成金は研究費用としてだけではなく、出張時のベビーシッター代や研究アシスタントの雇用費など研究活動のサポート費用として、また学生の学会参加費など指導者としての活動費に使用できることも特長です。これにより、様々なライフイベント時の女性研究者の不安や迷いに対して精神的なサポートにつながっているだけでなく、受賞者同士のSNS運営や、交流会開催による女性研究者同士のネットワーク構築支援に貢献しています。その結果、これまでの本グラント受賞者は、研究内容が高く評価されることにより、多くの方が猿橋賞(※6)や米沢富美子賞(※7)の受賞、教授への昇進をはじめ、それぞれの学術領域においてステップアップを続けています。
※3 ジェンダー・ギャップ指数2021 世界経済フォーラムが2021年3月に発表
※4 総務省 2021年(令和 3 年)科学技術研究調査より
※5 「男性は働くべき、女性は家庭を守るべき」といった、社会的・文化的に男女の役割を分担すること
※6 猿橋賞; 1980年に創立された「女性科学者に明るい未来をの会」によって授与される賞で、自然科学の諸分野で、顕著な研究業績を収めた女性科学者に毎年贈呈される。
※7 米沢富美子記念賞; 「女性科学者に明るい未来をの会」会長として女性科学者の支援に尽力し、女性として初めて日本物理学会長を務めた故米沢富美子氏の業績を称え日本物理学会が2019年に設立した、女性会員の物理学分野における活動を奨励するための賞。

今後の展望

「資生堂 女性研究者サイエンスグラント」は、2007年の設立から第14回まで、延べ139名の研究者の研究支援とキャリア形成に貢献し、今回、資生堂創業150周年の2022年に第15回を迎えました。グラントを設立した当初に比べて日本国内で専門分野をリードする女性研究者の数は少しずつ増えてはいるものの、依然として少ない状況です。さらに近年は研究成果の社会への実装・還元が重視され、研究者には一層幅広い視野を持った多様な活動も求められるようになりました。
このような中で本グラントでは、今後も、研究助成金の支援だけでなく、研究者間や企業、社会とのネットワーク形成等、これからの女性研究者の活躍に有用なコミュニケーションの場を提供できると考えています。当社は女性活躍支援企業として、学術領域における女性研究者が活躍できる社会の実現に向け、多様な視点で引き続き支援を行っていきます。

第15回資生堂 女性研究者サイエンスグラント 授賞式概要

日時:2022年7月14日(木) 16時~17時
会場:資生堂グローバルイノベーションセンター 3F S/PARKホール(神奈川県横浜市西区高島 1-2-11)
開催テーマ: 「女性研究者の活躍が創る未来」
式次第:
・挨拶
 岡部 義昭(株式会社資生堂 常務 チーフテクノロジーオフィサー チーフブランドイノベーションオフィサー)
・記念盾贈呈
・受賞者代表挨拶
・祝辞
近藤 高志(東京大学 先端科学技術センター 教授、副所長)
鈴木 ゆかり(株式会社資生堂 代表取締役 常務 チーフマーケティングオフィサー チーフD&Iオフィサー)
・基調講演
江川 麻里子(資生堂みらい開発研究所 主任研究員)

【受賞者一覧】
助成期間:2022年6 月~2023年5月
氏名(敬称略、五十音順)
所属・職位
研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)

小川 亜希子(おがわ あきこ)
国立大学法人 東北大学 加齢医学研究所 モドミクス医学分野 助教
【RNA医学/眼科学】
RNA修飾代謝による新しいホメオスタシス制御機構の解明(RNAが分解された後に発揮する機能についての研究)

小川 愛実(おがわ あみ)
慶應義塾大学 理工学部 専任講師
【建築工学/住居学】
脳卒中片麻痺患者における上肢リハビリテーション作業空間の評価(身体の不自由な方の手・腕のリハビリ作業空間を評価する)

折原 芳波(おりはら かなみ)
国立大学法人 東京工業大学 生命理工学院 准教授
【免疫学/時間生物学(体内時計)/分子生物学】
皮膚感染防御能を効率的に引き出す方法の探索(約24時間のペースで変動を繰り返す体内システムを利用して、皮膚の持つ感染防御ポテンシャルを引き出すための研究)

簡 梅芳(かん ばいほう)
国立大学法人 東北大学大学院 環境科学研究科 先進社会環境学専攻 助教
【環境微生物学/分子生物工学】
循環型社会の実現に向けた生物学的金属応答機能の活用(金属に応答する生物機能を産業排水からの特定金属回収に応用し、金属資源・水資源の循環に寄与する研究)

クロフツ 尚子(なおこ)
公立大学法人 秋田県立大学 生物資源科学部 特任助教
【農学】
枝作りと枝切りのバランスに着目した難消化性澱粉合成機構の解明(食後血糖値の上昇が緩やかなレジスタントスターチの合成を促進する条件を明らかにする)

小菅 厚子(こすが あつこ)
公立大学法人 大阪公立大学 理学研究科 物理科学専攻 准教授
【物質科学/熱電変換工学】
室温廃熱を回収するための高性能熱電材料の開発(廃熱からエネルギーを産み出し、環境・エネルギー問題に貢献する材料)

常松 友美(つねまつ ともみ)
国立大学法人 東北大学大学院 生命科学研究科 助教
【脳科学/睡眠科学】
睡眠覚醒におけるアストロサイト活動の生理的役割の解明(神経細胞とは異なる脳細胞の一種であるアストロサイトの睡眠覚醒における役割を解明する)

西島 杏実(にしじま あみ)
国立大学法人 東京大学大学院 工学系研究科 応用化学専攻 助教
【錯体化学/高分子化学】
1分子の厚みしかない極薄ポリウレタンシートの開発(原料節約・体感向上を目指し、医療用素材に用いられるポリウレタンを1分子厚みの極薄シート化する)

平井 志伸(ひらい しのぶ)
公益財団法人 東京都医学総合研究所 精神行動医学分野 主任研究員
【神経科学/基礎医学/糖代謝】
生理的・病態状況下における脳内フルクトース代謝機構の解明(脳内のフルクトース動態の全貌を明らかにし、精神神経疾患の治療に役立てる)

山田 茉未子(やまだ まみこ)
慶應義塾大学 医学部 臨床遺伝学センター 助教
【臨床遺伝学】
長鎖型シーケンサー全ゲノム解析の革新:未診断疾患小児の病因解明(診断のつかない子どもの疾患解明にむけた新たなゲノム解析技術の開発)

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。