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2022年05月31日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂、乾燥環境に対する肌本来の適応メカニズムを解明

~環境と共生し、その恵みから美を生みだす技術第二弾~

資生堂は、乾燥環境において、肌内部で天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor; NMF)を生み出す酵素(Peptidyl Arginine Deiminase 1; PAD1)の産生が促進されることを発見しました。これは、肌に「環境と共生する保湿力」が備わっていることを示しています。また、PAD1の産生を高め、肌本来の保湿力をサポートする成分を新たに見出しました。今後、乾燥環境への適応力・抵抗力を高め、健やかで美しい肌を維持する化粧品の開発を目指します。本研究成果の一部は「第46回 日本研究皮膚科学会」(2021/12/3-5)にて発表しました。
資生堂は、独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』のPremium/Sustainabilityというアプローチのもと、環境とのポジティブな共生から美を実現することを目指しています。肌が環境変化に応答するメカニズムに着目し、昨年11月に発表した紫外線変換技術※に引き続き、湿度や温度といった自然が生み出す環境要素を美の力に変える技術の開発に取り組みます。
※ 紫外線を肌に良い作用をもたらす光へと変換する革新技術を開発(2021) https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003256

図1:低湿/低温環境下における肌の適応性保湿メカニズム(イメージ図)

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研究背景

高温時の発汗作用や、紫外線暴露時のメラニン産生など、私たちの肌は外的環境に対する適応力を進化と共に獲得してきました。しかしながら、これまで低湿度、低温度がもたらす乾燥環境下における肌の適応力については十分に明らかになっていませんでした。そこで当社は、40年以上にもわたる、肌の天然保湿因子NMF産生経路に関する研究知見を活かし、肌本来の乾燥環境に対する適応メカニズムを明らかにするべく、研究に取り組みました。

乾燥した外部環境に適応して“うるおい” を生む肌の力の発見

肌のうるおいを維持するために必要不可欠なNMFは、肌を構成するタンパク質「フィラグリン」や「汗」といった経路から主に供給されています。今回、夏と冬における同一人のNMF存在量を比較した結果、フィラグリン由来NMFは夏よりも冬に多く存在していることがわかり(図2左)、汗量の減る冬に不足しがちなNMFがフィラグリン由来で補われていることが示唆されました。さらに、フィラグリン由来NMFの季節変動メカニズムを探るために、夏と冬における同一人のNMF産生酵素を解析したところ、NMF産生を促進するPAD1活性も同様に冬に高まることを発見しました。実際に、細胞を用いた実験では、PAD1の発現が、低湿および低温度環境において上昇することを確認しています。以上より、肌は低湿/低温度がもたらす乾燥環境に適応するため、NMF産生酵素PAD1の産生を促進することで、肌本来の保湿力を高めていることが明らかになりました。

図2:冬はフィラグリン由来NMF量とNMF産生酵素PAD1活性が高まる

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図3:低湿・低温環境ではPAD1の発現が高まる

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PAD1発現促進成分の発見

環境適応性保湿力の鍵となるPAD1の発現を促進する成分を探索した結果、独自開発成分であるアクアインプールにPAD1産生促進効果があることを見出しました。また、同様の効果をもつ植物エキスも複数見出しています。これらの成分により、乾燥環境に対する肌本来の適応力がさらに高まることが期待されます。

図4:アクアインプールによりPAD1の発現が高まる

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今後の展望

自然環境の変化が顕著な現代社会において、当社は「環境を受け入れて調和し美を実現する」という新発想の技術をさらに進化させていきます。第一弾の紫外線との共生技術、今回の低湿、低温といった環境要素に続き、今後もお客さまを取り巻く様々な環境を味方にする技術の開発に挑戦し、当社の企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に向け、世界中のお客さまへ美のイノベーションを届けます。

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。