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2022年04月18日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂、美容による日々の行動意識への影響を測定できる尺度を開発

~心と肌に響く化粧の研究~

資生堂は、美容行為やその結果が、日々の行動意識(※1)にどのような影響を及ぼすかを定量的に測定できる、行動意識尺度を新たに開発しました。これまでお客さまの言葉でしか理解できなかった、行動意識の変化を数値化して捉えることができるようになり、お客さまの肌の状態だけではなく、日常生活における感情や行動にも着目することで、お客さまが「なりたい自分」により近づけるような商品やサービスの開発の可能性が高まりました。また、今回開発した尺度を用いて、「シミがない肌」がお客さまにもたらす感情や行動意識の変化を検証したところ、ポジティブな感情が全体的に高まり、「自分から誘って、友達や誰かと会う」といった「他者と積極的に交流する」ことを示す外向的な行動意識などが高まることがわかりました。
資生堂では独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』の Science/Creativityというアプローチのもと、美容行為がもたらす気持ちや行動の変化など、これまで定量化が難しかった現象について、科学的に探究を行う挑戦を続けています。本研究の成果の一部は、「第17回日本感性工学会春季大会」(2022/3/25-3/26)にて発表しました。
※1 自らの行動に影響をあたえうる、自身の意識のこと。

図1. 評価に用いた処理画像例 左:素肌状態 右:画像処理でシミを消した状態

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研究の背景

自分らしい健康美の実現においては、肌などで起こる変化だけではなく、そこからもたらされる気持ちや行動の変化も踏まえることが重要です。しかしこれまで行動意識を定量的に捉える尺度がなかったことから、美容に伴う行動変容を科学的に考察・検討することが容易ではありませんでした。そこで美容による行動意識の変化を定量的に評価可能な尺度と、その尺度を構成する質問項目の開発を目指しました。

美容による行動意識尺度開発のステップ

今回の尺度は幅広い年代の方への調査結果を元に2つのステップで開発しました(表1)。ステップ1として、スキンケアによってどのような行動変容項目が期待できるかを探索するために、WEB調査(対象者:日本人女性、20-69 歳、5152 名)を実施し、行動変容につながる42項目を選定しました。ステップ2として、WEB調査(対象者:日本人女性、25-74 歳、2816 名)を再び実施し、選定した42項目に対し、どの程度「始めたい」「挑戦したい」「(すでに行っていて)さらに取り組みたい」と思うかについて回答いただきました。探索的因子分析(※2)という手法を用いて解析し、行動変容の意識は4つの尺度で構成されること、またそれら尺度は16の質問項目によるアンケートで測定できることを見出しました(表2)。4つの尺度は誰のための行動であるか(利他的または利己的)と、行動の種類(外見・外面的または内面・内省的)の2側面があると考えられました。
得られた各尺度における年代別の得点傾向を確認したところ、「思いやりある他者交流」は年代が高いほど意識が高い傾向が見られ、人生経験を積むことで思いやりをもって他者と接するようになることが推測されます。また、「自己の外見意識」は年代が低いほど意識は高い傾向が見られ、若い年代ほど自身の外見を意識することがわかりました。なお、他の2つの尺度に年代の差による傾向は見られませんでした(図2)。
※2 尺度開発などに一般的に用いられる分析手法で、質問紙など数多くの項目で測定したデータを共通する概念に要約するのに適している。

表1. 行動意識尺度開発のステップ

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表2. 美容による行動変容を評価するための行動意識尺度と質問項目例

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図2. 行動意識尺度の年代別傾向(日本人女性25-74歳1,000名)

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肌悩みの解消が、ポジティブな感情や行動につながる可能性を確認

お客さまの肌悩みが解消すると行動意識がどのように変化するか、その検証を行うために、シミを一例として実験を行いました。35-59歳の日本人女性のうち、シミを気にする方でファンデーションでも隠し切れないシミのある方32名を対象に、素肌の顔画像と、素肌からシミを消す画像処理を施した顔画像(図1)を見ていただき、すでに開発済の化粧の感情意識尺度(※3)及び今回開発した4つの行動意識尺度の質問紙に回答いただきました。その結果、シミのない画像を見ることで快活高揚等のポジティブな感情が有意に高まり、肯定・外向などの意識が有意に向上することを確認しました(図3)。さらに行動意識は4つの尺度全てが有意に向上することが確認できました(図4)。シミがないことにより「自己の外見意識」が向上するだけではなく、その他の「自己の内面意識」や「積極的な他者交流」も向上するなど、さまざまな行動意識を高めることが確認できました。今回の結果から、肌悩みの解消によりポジティブな感情や行動につながる可能性が考えられました。
※3 佐藤智穂(2020)化粧品使用時の感情と意識の変化. 日本化粧品技術者会誌、54(4)、351-357. を一部改変

図3. 画像処理前後の顔を見た時の感情・意識の変化

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図4. 画像処理前後の顔を見た時の行動意識の変化

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今後の展望

資生堂は、2030年に「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」として、生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美を実現する企業となることを目指しています。高齢化社会や、ストレス社会、さらにはコロナ禍によってお客さまの意識や行動に大きな影響を与えている現代社会において、心身共に健やかで美しい状態を維持することの重要性はますます増しています。今回開発した行動意識尺度を用いることによって、商品の色や香り、感触などの特長や、商品の継続使用による効果、関連のサービスなどが、お客さまの感情や行動に与える影響をより詳細に、定量的に捉えることが可能になりました。将来的には、肌だけではなく、感情や行動にまでよい変化をもたらすことができる、個々人に合わせたビューティーソリューションの開発や提供を目指し、研究に取り組んでいきます。

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。