2021年11月30日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、肌由来オキシトシンが表皮再生を促進することを発見
~肌が喜ぶ“やさしいタッチ”で内側から健やかな肌へアプローチ~
資生堂は、マサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(CBRC)※1との共同研究により、肌に軽い刺激を与えることで、肌内部のオキシトシン分泌が増加することを発見しました。また、肌由来オキシトシンが、表皮の再生を促す作用をもつことを見出しました。従来、脳下垂体だけではなく、肌からもオキシトシンが放出されることは確認されていましたが、肌由来オキシトシンの詳細な役割は解明されていませんでした。本研究は、本研究の成果の一部は「米国レーザー医学外科学会(ASLMS)」(2019/3/27-3/31)、「欧州研究皮膚科学会議(ESDR)」(2021/9/22-9/25)にて発表しています。
本研究は、資生堂独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』の Inside/Outsideというアプローチで進めています。肌の外からの“タッチ”による肌内部での変化を明らかにし、その変化を増幅するソリューションを開発することで、肌の内外から美しさを引き出す製品やサービスの提供を目指し、研究を進めていきます。
※1 CBRC(Cutaneous Biology Research Center):1989 年に資生堂のサポートにより、ハーバード医科大学とマサチューセッツ総合病院が設立した皮膚科学領域の先進的な研究開発をする総合研究所。資生堂からも研究員を派遣し、世界的な研究者とともに共同研究を行っています。
軽い刺激による肌由来オキシトシン分泌増加
オキシトシンは、9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンです。ヒトの精神的な安定や絆、母性愛にも関与することが知られており、『幸せホルモン』や『愛情ホルモン』などの名称で呼ばれることもあります。一般的には、脳内の神経分泌細胞で合成され、脳下垂体から血中に放出されることが知られていますが、当社の過去の研究において、オキシトシンが表皮でも合成されることを発見し、肌由来オキシトシンの存在を明らかにしています。しかし、肌由来オキシトシンの役割は十分に解明されていませんでした。そこで、まずは肌由来オキシトシンの産生条件について研究を進めました。
オキシトシンは非常に分解が早いため、正確に検出・測定するためには高い技術が必要です。今回、CBRCとの共同研究により、肌に軽い刺激を与えることで肌由来のオキシトシンの分泌量が増加することを明らかにしました
肌由来オキシトシンによる表皮再生促進
次に、肌由来オキシトシンが肌に及ぼす作用について調べました。軽い刺激を与えた肌を観察すると、表皮再生の指標となるKi67が増加していることがわかりました(図1)。また、この作用が本当に肌由来オキシトシンによるものかを確認するため、オキシトシンの作用を阻害する薬剤を用いて検討を行ったところ、軽い刺激とともにオキシトシン阻害剤を与えた肌では、軽い刺激のみを与えた肌と比較してKi67が減少することを確認しました(図3)。これにより、肌由来オキシトシンが表皮の再生を促すことを明らかにしました。
オキシトシンによる作用を増強する薬剤の探索
CBRCとの共同研究で見出した肌由来オキシトシンによる効果を更に高めるため、資生堂独自で有用な薬剤の探索を行いました。その結果、ゲットウの葉から抽出した成分に、表皮細胞においてオキシトシンへの応答を増強させる効果があることや、表皮の細胞増殖を高める効果があることを見出しました。
今後の展望
今回、一般的に知られている脳由来ではなく、肌由来オキシトシンが肌に与える影響について初めて明らかにすることができました。当社はこれまでにも、刺激を伝える役割をもつ「神経」と「肌」は密接な関係があることを見出しており、本研究は肌に触れることにより健やかな肌へ導く新しいアプローチに繋がると考えています。今後も、当社の企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」の実現に向けて、当社の強みである皮膚科学研究をさらに深めていきます。
※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。