2021年01月29日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、シワの根源は肌内部の弾性バランスにあることを発見
最先端技術、肌内外3D弾性イメージング技術の開発
資生堂は最先端の3D弾性イメージング技術を独自に開発し、外見にシワが現れる前からその根源を観察することに成功しました(※1)。さらに、本技術を用いて若年層からマチュア層まで幅広いお客さまの肌弾性率を解析したところ、加齢にともなって「角層と真皮層の間で生じる弾性バランス」の崩れが生じており、この現象がシワの本質であることを発見しました。これまでのシワに対するアプローチは、抗シワ薬剤配合クリームの使用など、肌の表面に刻まれたシワをターゲットに行ってきましたが、角層と真皮層、両方のケアによって弾性のアンバランスを解消することで、刻まれたシワだけでなく、外見に現れる前のシワの根源まで改善ができることを見出しました。今回の研究成果は、まだ見えない未来のシワから、深く刻まれたシワまで、予防・改善できる画期的なスキンケアに繋がる重要な知見です。今後、資生堂のスキンケアの新たなアプローチとして、さまざまな商品の設計に活用していきます。
なお、本研究成果の一部は「第31回国際化粧品技術者会連盟横浜大会2020」(The 31th IFSCC Congress 2020 Yokohama 2020/10/21-30)で発表しました。
※1 資生堂と本多電子(株)、豊橋技術科学大学、豊田工業大学との共同研究
肌内外3D弾性イメージング技術
皮膚の力学物性はこれまで、皮膚を押す力に対し、どのように跳ね返るかなど、皮膚を「1つの物体」として測定するのが一般的でした。しかしながら、皮膚は性状の異なる複数の層から形成されているため、その物性を正確に理解するためには、層ごとの特性を評価する技術が必要とされていました。そこで当社は、超音波技術を活用することで、従来法では不可能であった皮膚の中の微小領域ごとの弾性(押した際の反発力)を解析する技術開発に成功しました(※2)。この最先端の超高解像度の超音波技術を用いることで、マイクロメートルオーダー(1ミリの1000分の1レベル)の領域の測定が可能になり、角層のような数十マイクロメートルしかない薄い層においても正確に層ごとの特性を解析することが可能になりました(図2)。
※2 特許第6361001号取得
シワは角層と真皮層弾性率のかい離によって生じる
上記の測定技術を用いて20代から60代の日本人女性130名の肌について、層ごとの弾性率の解析を行いました。その結果、加齢に伴って角層がかたくなる一方、真皮層はやわらかくなり、角層と真皮層の弾性率がかい離するほど、シワが深くなることを発見しました。さらに、外見にシワが現れていない若年世代においては、角層と真皮層の弾性率がかい離している人ほど、表情を作った時など皮膚が変形した際に、シワになりやすい状態にあることを見出しました(図3)。この結果は、角層と真皮層の間の弾性率のバランスが全てのグレードのシワの状態と密接な関わりがあることを表しています。
シワは角層と真皮層の弾性率のかい離を解消すると根本的に改善できる
40代女性の被験者にレチノールおよび保湿剤・柔軟化剤を配合したクリーム製剤を4週間連用してもらい、連用前後の肌弾性率を今回開発した手法により解析しました。その結果、外見のシワの有無に関わらず、弾性率のかい離が解消していく様子が捉えられました。この時、外見で顕著なシワが改善しただけではなく、シワが顕在化する前の肌においても、動き(表情)で発生するシワが有意に軽減することが見いだされました(図4)。この結果から、角層の柔軟化と真皮層強化の両面のケアを組み合わせたアプローチにより、シワが外見に現れる前から、肌内部で生じる「シワのなりやすさ」が改善できることが分かりました。
図4.すべてのステージにおいてシワが改善(シワが顕在化する前の肌においても弾性率のかい離は減少する)
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当社は安全性と効果を高次元で両立した薬剤の開発により、シワ改善の有効成分「レチノール」を開発し、市場での好評を博すなど、常にお客さまのニーズに応えてきました。今回の研究結果は、シワの根源に迫る重要な発見です。今後、これまでの、皮膚に深く刻まれたシワだけでなく、通常外見からは知りえなかった未来のシワもモニタリングすることで、新たなスキンケアへのアプローチに繋がることが期待されます。
当社は今後も最先端の研究知見をもとに、世界中のお客さまの肌悩みを解決するべく、革新的な研究を進めていきます。
【関連のニュースリリース】
・資生堂、肌内部のハリ強度可視化に成功(2018)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002422
※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。