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2020年12月14日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂、世界で初めてマクロファージのバランスが皮膚老化に関与することを発見

~ 慢性炎症が引き起こす“インフラマエイジング”に着目した新時代のエイジングケア ~

資生堂は、皮膚内で生じる慢性炎症が老化を促進する”インフラマエイジング(Inflammaging: 炎症老化)”の発生要因として、2種類のマクロファージ※1(M1/M2)のバランスの崩れが関与していることを世界で初めて確認しました。さらに、皮膚の慢性炎症を終息させ、細胞の若返りを促進するための新たなアプローチとして、インフラマエイジングに着目した全く新しいエイジングケア提案の可能性を見出しました。
今後も研究を進め、インフラマエイジングが関わる様々な肌悩みに対するエイジングケアを生み出すことを目指します。
本研究の成果の一部は「日本研究皮膚科学会 第45回年次学術大会」(2020/12/13)で発表しました。
※1 細菌や老廃物を取り込み処理することを主な機能とする免疫細胞の一種

図1. 本研究の全体像(イメージ)

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インフラマエイジングと2種類のマクロファージ

●インフラマエイジングとは
炎症反応は紫外線や乾燥などの外部刺激に対して生体に備わる必要な防御反応ですが、近年、生体内の炎症反応が完全に収束せず、炎症が慢性化することで生体に様々な悪影響を及ぼすことがわかってきました。この慢性炎症により、老化が促進される現象をインフラマエイジングと呼んでいます。近年、医療分野においてはインフラマエイジングにより生じる疾患の治療法開発が急がれています。インフラマエイジングが生じる原因については、加齢に伴って慢性炎症を収束できなくなくなることが大きな原因である可能性が示唆されていますが、皮膚におけるインフラマエイジングの原因やそのメカニズムについては、完全には分かっていませんでした。
●M1/M2マクロファージのバランス
インフラマエイジングの原因となる炎症の慢性化を改善するためには、「老廃物などの炎症の原因を取り除く」ことや「炎症を止める機能を正常化する」ことが重要であると考えられます。当社ではこれまでに老廃物の排除機能を担うリンパ管の研究についてさまざまな知見を蓄積してきましたが、今回は、「炎症を止める機能の正常化」について、M1マクロファージとM2マクロファージ※2のバランスに着目し、インフラマエイジングのメカニズム解明に向けて研究を実施しました。
※2 M1マクロファージは主に炎症反応を担い、外敵などを排除し、M2マクロファージは抗炎症反応や、炎症により傷ついた組織などの修復促進を促しています。

M1/M2マクロファージのバランスと皮膚老化の関係についての検証

皮膚においては、傷が治る過程でM1マクロファージとM2マクロファージのバランス(M1/M2バランス)が重要であることがよく知られていましたが、これまで老化との関わりについてはほとんどわかっていませんでした。そこで今回M1/M2バランスと露光部における皮膚老化の関係について免疫組織化学染色によりマクロファージを可視化したところ、マチュア層(平均年齢73.5歳)では若年層(平均年齢33.5歳)と比べてM1マクロファージ数が増加し、M2マクロファージ数は減少していることを発見しました(図2)。また、マチュア層のM1/M2バランスは極端にM1マクロファージの割合が高くなっていることがわかりました(図3)。

図2. 若年層とマチュア層のM1/M2マクロファージ数

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図3. 若年層とマチュア層のM1/M2バランスの比較

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M1マクロファージは細胞を老化させる

次に、線維芽細胞を用いた培養実験によりM1およびM2マクロファージの細胞老化に与える影響について評価しました。その結果、M1マクロファージの培養上清を与えた場合に線維芽細胞中の老化細胞(p21陽性細胞)の割合が顕著に増加することを初めて発見しました(図4)。

図4. M1/M2マクロファージが細胞老化に与える影響

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インフラマエイジングに着目した新たなエイジングケア

これまでは紫外線や乾燥などの外部刺激により生じる炎症反応に対して、炎症の強さを抑制する「抗炎症」対策が主流でした。しかしながら、皮膚で生じている老化を促進する慢性炎症(インフラマエイジング)に対しては、炎症の強さを抑制するだけでなく、弱まった炎症を止める「消炎症」対策が必要になります(図5)。
今回の研究では、皮膚内のM1/M2バランスが崩れることにより、慢性炎症を止めることができずにインフラマエイジングを引き起こしていることを世界で初めて突き止めました。この発見から、今後インフラマエイジングに着目した全く新しいエイジングケアに対するアプローチが期待できます。
当社は今後もお客さまの様々な肌悩みに対し、期待を超えたエイジングケアを生み出していきます。

図5 . 「抗炎症」と「消炎症」の違い(イメージ図)

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※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。