2020年10月09日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、化粧膜の物性が肌の柔軟感に影響することを発見
~心と肌に響く化粧の研究~
資生堂は名古屋大学との共同研究により、心理物理学的手法※1を用いて、肌表面の摩擦や弾性が、柔らかさやハリ感などの柔軟感に大きく関係していることを新たに見出しました。従来、肌の大部分を占める真皮のコラーゲンやエラスチン、皮下組織などの物性が肌の柔軟感に関わることは知られていましたが、肌表面の物性と柔軟感の関係はあまり着目されていませんでした。今回は当社の強みである感性・心理研究とマテリアルサイエンス研究を融合させて、肌表面の物性と柔軟感の関係を発見しました。この発見は、お客さまに毎日化粧品を心地よく使っていただき、心健やかに過ごしていただくための重要な知見です。
資生堂は今後も感性・心理研究を深めることで、製品の効果・効能の追究に加え、お客さまの心と肌に響いて満足いただける新たな価値の開発を行っていきます。
本研究の成果の一部は、「The IEEE World Haptics Conference2019」(2019/7/9-12)、 「第15回日本感性工学会春季大会」(2020/3/5-6)で発表しました。
※1 心理物理学的手法;刺激の物理的な大きさに対して、ひとが感じた・感じないといった知覚や意識の特性を数量的に調べる手法
研究の背景
化粧は日常のささやかな行動ですが、肌だけではなく、心までも豊かに健やかにする力を持っています。毎日のスキンケアで自分の肌に触れて安心する、メイクアップした顔を見て気持ちが明るくなる、良い香りを嗅いで心地よくなるなど、私たちは化粧による五感の体験を通して元気になります。
当社は長年にわたり、世界中の多様なお客さまの満足を目指し、製品の効果・効能だけでなく心地よさや美しさを実感いただくことを大切にしています。そこで、お客さまの感性や心理を客観的に評価できる技術を独自に開発し、深く研究してきました。
今回は、塗布した化粧品による肌表面の摩擦や弾性の小さな変化をお客さまは知覚し、柔らかさやハリ感の判断を行っていることを初めて科学的に実証しました。
肌表面の摩擦が柔軟感に影響する(柔らかさの知覚に関する研究)
20歳代から60歳代の日本人女性39名に対し、物性として同じ柔らかさを持つ肌モデルの表面の摩擦のみを段階的に変化させた5種類の触感サンプルを用い、指で滑らせたときの柔らかさの印象を答える心理物理実験(順位法)を行いました(図2)。その結果、人は表面の摩擦が小さいほど柔らかさを感じることが分かりました(図3)。
肌表面のわずか50μmの薄膜の弾性が柔軟感に影響する(ハリ感の知覚に関する研究)
次に、30歳代から40歳代の日本人女性25名に対し、2層構造の肌モデルの表層薄膜(シリコーン薄膜)の弾性のみを変化させた5種類の触感サンプルを用いて、指で押したときのハリ感の印象を答える心理物理実験(順位法)を行いました(図4)。その結果、人は表層の薄膜の弾性が大きいほどハリ感を感じることが分かりました(図5)
研究・成果のまとめ
今回の研究では、資生堂独自の触覚研究により、塗布した化粧品による肌表面の摩擦や弾性の小さな変化をお客さまが知覚し、柔らかさやハリ感の判断を行っていることを初めて科学的に実証しました。
今後も、感性・心理研究を深めることで、製品の効果・効能の追究に加え、お客さまの心と肌に響いて満足いただける新たな価値の開発を行っていきます。
※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。