2020年04月27日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、真皮の細胞が織りなす『線維芽細胞ネットワーク』を解明
細胞の繋がりは皮膚の若さの鍵
資生堂は、国際医療福祉大学医学部形成外科学 松﨑恭一主任教授と自治医科大学、生理学研究所との共同研究により、真皮の細胞(線維芽細胞)が微細な突起で互いに結合し、ネットワーク構造を形成していることを明らかにしました。また、この『線維芽細胞ネットワーク』が失われることで、細胞の状態が悪化し、皮膚の老化に繋がる可能性を示しました。皮膚の若返りが期待できる本研究成果を、今後の製品開発へ応用していきます。
本研究成果の一部は化粧品技術者の世界大会「国際化粧品技術者会連盟ミュンヘン大会2018)」(IFSCC Congress 2018)※1で口頭発表し、最優秀賞を受賞しました。
※1 IFSCC (The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists): 世界中の化粧品技術者が集い、より高機能で安全な化粧品技術の開発へ向けて取り組む国際機関
皮膚の弾力をコントロールする真皮の線維芽細胞
皮膚の弾力を生み出すのは、皮膚内部の「真皮層」です。真皮にはコラーゲンや弾性線維が豊富に存在し、その弾力で体の形状をしっかりと支え、シワやたるみを防ぎます。この真皮の状態をコントロールするのは、線維芽細胞です。しかし真皮の構造は複雑で、そこに点在する線維芽細胞を観察することは難しく、線維芽細胞の実態や、加齢変化は十分にわかっていませんでした。
線維芽細胞によるネットワーク構造の解明
今回、新たに開発した『デジタル3DスキンTM』※2で顔面の皮膚を解析し、線維芽細胞は互いに結合して、ネットワーク構造を形成していることを明らかにしました(図1)。そこでこの構造を『線維芽細胞ネットワーク』と呼ぶこととしました。これまで線維芽細胞は真皮中で単独で存在するとの考えが一般的でした。しかしこの新技術で、超微細な細胞突起まで立体的に観察することで、線維芽細胞ネットワークを見出すことができました。
■図1 真皮の線維芽細胞ネットワーク
⇒画像はリリースPDFよりご確認ください。
若齢者の真皮の線維芽細胞の観察像(視認性向上のため色分けして表示)。観察には新たに開発したデジタル3DスキンTMを用いた。細胞同士が微細な突起で結合している。
皮膚の若さを制御する線維芽細胞ネットワーク
線維芽細胞ネットワークの機能を明らかにするため、線維芽細胞を培養し、ネットワークを消失させたところ、線維芽細胞のコラーゲン産生能力が低下しました。また皮膚組織の解析からも、加齢に伴いネットワークの減少した皮膚では、真皮のコラーゲンが減少していました(図2)。そのため、線維芽細胞ネットワークは真皮の状態を維持し、皮膚の若さを制御する重要な構造と考えられました。
■図2 加齢に伴う線維芽細胞ネットワークの消失とコラーゲンの減少
⇒画像はリリースPDFよりご確認ください。
若齢者と高齢者の真皮の線維芽細胞ネットワークと、コラーゲンの状態。観察にはデジタル3DスキンTMを用いた(視認性向上のため色分けして表示)。ネットワークの減少した高齢者の真皮で、コラーゲンの減少が認められる。
ネットワークをターゲットとした新たなスキンケアの開発
今回明らかにした線維芽細胞ネットワークは、加齢による皮膚の弾力の低下や、見た目の老化を改善するための重要なターゲットと考えられます。この知見を活用し、新たなスキンケア製品の開発を進めていきます。
<参考>関連する過去の技術リリース
・2018年:第30回 国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)ミュンヘン大会2018で7大会連続「最優秀賞」受賞
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002530
・2018年:資生堂、肌内部で起きる「老化の伝播」を解明
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002569
・2020年:資生堂、AIを活用した皮膚解析の新技術『デジタル3DスキンTM』を開発
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002897
※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。