資生堂の化粧療法ハカセのブログ
作業療法で化粧療法
先月、都内にある2つの大学の「作業療法学科」の学生さんたちに化粧療法の講義をしてきました。
作業療法士というリハビリ職の国家資格をご存じでしょうか?リハビリテーション領域には、3大専門職といわれる理学療法士(約19万人)、作業療法士(約9万人)、言語聴覚士(約3.6万人)があります。
その中で作業療法士は、「食事をする」「料理をする」「入浴する」「仕事をする」「余暇を楽しむ」といった日々の生活に必要な応用的動作・社会適応能力の回復を目指したリハビリで、患者がその人らしい生活を送ることをサポートします。社会復帰を目指して精神面のケアまで行うことがあるのが特徴です。
ちなみに、理学療法士は、「立つ」「座る」「起き上がる」「歩く」「寝返りをうつ」といった基本的な動作の維持・回復を目指したリハビリで、患者が自立した日常生活を送ることをサポートします。
詳細は、日本作業療法士協会のウェブサイトをご覧ください。
https://www.jaot.or.jp/ot_job/ (外部サイトへのリンク)
「化粧をする」は、生活に必要な応用的動作であり、社会参加のために必要な行為でもありますので、化粧療法と相性のよい職種です。もし、何らかの障がいで化粧ができなくなったときに、どうしたら化粧ができるのかを一緒に考えくれる頼もしい存在です。
これまでもいろんな医療機関で化粧療法を実施してきました。リハビリに関する化粧療法効果の事例を2つ紹介したいと思います。
<リハビリを嫌がるA子さんの事例>
ある長期療養型病院で化粧療法を実施していたら、スタッフさんが、「リハビリを嫌がっていた参加者のA子さんが、最近、積極的にリハビリ室に行き、リハビリに取り組むようになった」と教えてくれました。
その理由を聞くと、化粧療法できれいになった自分をリハビリ担当の男性に見てもらいたいという気持ちが芽生えて、行動が変わったとのことでした。心が変われば行動も変わる、化粧のちからです。
<リハビリテーション専門病院での事例>
化粧療法を3か月間(毎日のスキンケア実施と月2回の美容教室参加)実施しました。計6回開催の美容教室に5回以上参加した患者さんたちは、機能回復効率(一定期間における回復の速さ)が高まり、認知機能に関する評価項目の向上が認められました(2015年日本老年医学会発表)。化粧をすると前向きな気持ちになり、行動が積極的になると言われていますが、リハビリへの取り組み意欲にも影響を及ぼすことが示唆されました。
また、この病院のリハスタッフさんが、化粧療法に参加している患者さんの笑顔をみて、院内で初めてみたと驚いていました。リハビリ中はどうしても、「がんばりましょう」という声掛けになって双方が辛い気持ちになってしまっていましたが、院内でも「楽しむ」「笑顔になる」ことがあってもよいと気づき、リハビリの取り組み方をかえました、とのコメントをいただきました。
化粧療法は、手指を動かすというリハビリにもなり、またご本人のリハビリ意欲向上やリハスタッフさんの取り組み方へも効果を発揮します。
リハビリの現場で化粧療法が、もっと広まるように、情報発信をしていきます。