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CFO

財務戦略
CFOメッセージ

2025年は勝負の年です。

「アクションプラン 2025-2026」では実行力を徹底的に追求し、
持続的な成長と企業価値向上を実現するレジリエントな事業体質確立に向け、
財務から資生堂を強くしていきます。

取締役 代表執行役

チーフファイナンシャルオフィサー
(最高財務責任者)

チーフ DE&I オフィサー

廣藤 綾子

廣藤 綾子のサイン

2025年は勝負の年です。

「アクションプラン 2025-2026」では実行力を徹底的に追求し、持続的な成長と企業価値向上を実現するレジリエントな事業体質確立に向け、財務から資生堂を強くしていきます。

取締役/CFO就任にあたって

2024年7月にCFO、2025年3月に取締役に就任した廣藤です。私は、証券会社勤務を経て2005年に資生堂に入社し、経営企画部での仕事を皮切りに、インドネシア現地法人の社長、戦略財務部長、IR部長などを歴任してきました。

今の資生堂は、業績・株価ともに厳しい局面にあります。私のミッションは「財務の力で資生堂を強くすること」です。多様なステークホルダーと対話を重ねながら、経営の変革を推進し、資生堂の未来を創ることに全力を尽くします。

特に、株主・投資家の皆さまとの対話を重視しています。客観的かつ建設的なご意見は、経営の重要な判断材料となり、また時には叱咤激励を受けることで大きな気付きや勇気を得ることもあります。今後も対話を通じた相互理解を深め、中長期的な株主価値向上に取り組んでいきます。

近年の資生堂の業績が示す
本質的な課題

2024年業績は、中国・トラベルリテール・米州事業が苦戦する中、11月に修正したコア営業利益目標は達成しましたが、構造改革費用やセラーノートに対する引当金注釈の買収に伴う支出も重なり、フリーキャッシュフローもマイナスとなりました。加えて、今後の環境を踏まえ、期末の1株当たり配当金を10円(年間配当40円)に減配する決断をしました。

この数年、中期経営戦略目標の未達、収益性・資本効率の低下、株価の低迷が続いています。これを深刻に受け止め、掲げた施策を着実に実行し、業績回復を実績で証明し、資本市場からの信頼を早期に回復することが急務と考えています。

業績低迷の背景を振り返ると、コロナ禍(2020年~)、中国市場の鈍化(2023年~)といった外的要因が引き金となったものの、全社的な高固定費構造、米州・欧州・アジアパシフィック等の低収益な地域事業、中国とトラベルリテール事業への利益依存といった、資生堂の積年の課題が浮き彫りになりました。構造改革は進めていますが、そもそも、好調なときであっても課題を発見し、必要な改革を先手で実行できる経営体制こそが本来あるべき姿です。

今直面している経営環境は、課題の本質に切り込み、資生堂の経営力を再構築する格好の機会です。これまでのような市場成長・売上拡大前提の戦略ではなく、財務ガバナンスの強化を通じて、構造改革を進めます。すなわち、①楽観的な売上成長前提の資産増幅からの脱却、②ブランド・地域最適化の明確化と戦略的投資の集中、③投資・リターンに対する財務規律の徹底、などです。これにより、どんな厳しい経営環境下でも、着実に利益成長を果たせるレジリエントな事業体質へと転換していきます。

また、2024年期末配当の減配は、中長期的な資本効率・株主価値向上を見据えた、財務ガバナンス重視の決断です。今資生堂が最優先で取り組むべきは、収益性改善や戦略的投資のグローバル展開、構造改革の完遂、ブランド価値の強化です。株主還元方針に定めたDOE2.5%以上を目安とした上で、キャッシュフローや財務規律を重視し、資本効率の向上を図ることが、中長期的な株主還元の拡充と、企業価値の最大化につながると判断しています。

これまでの業績推移と「アクションプラン 2025-2026」の経営計画

これまでの業績推移と「アクションプラン 2025-2026」の経営計画
これまでの業績推移と「アクションプラン 2025-2026」の経営計画

配当金の推移

配当金の推移

必達を期する「アクションプラン 2025-2026」の経営目標

「アクションプラン 2025-2026」では、「ブランド力の基盤強化」と「高収益構造の確立」を2本の柱とし、これらを「事業マネジメントの高度化」によって支えていきます。

投資戦略の鍵は、選択と集中の加速にあります。グローバルで強いブランドを育て、事業・収益の柱とすべく、2カ年累積注釈で300億円のマーケティング投資を増加させ、規模と成長性を有する注力ブランド(コア3・ネクスト5)に集中投資します。その一方で、その他のブランドへの投資は縮小し、戦略的なブランドの撤退・縮小も視野に入れて検討を進めています。強靭な組織構造の構築に向け、メリハリのある人財投資を行い、イノベーションも競争力のある領域に集中させます。また、コスト構造改革については、2024~2025年で計画した日本・中国中心の400億円超のコスト削減に加え、2026年にはグローバル全体で固定費削減を強化し、250億円超のコスト削減効果を創出します。2026年に成果を確実に出すため、2025年内に施策を完遂し、スピード感をもって執行していきます。

2026年の収益構造は、2024年比で「原価率」「人件費・経費比率」をそれぞれ2ポイント低減し、継続的な再投資を可能にするコア営業利益率7%を目指します。売上高成長は楽観的な見通しを排除し、年平均3%程度と計画しています。同時に、財務ガバナンスを強化し、財務・資本戦略を変革することで、2026年にROIC5%、ROE7%を目指します。

このROIC目標はまだ加重平均資本コストを下回っており、満足のいく水準ではありませんが、まずはこの目標を通過点とし、次のステップとしてコア営業利益率およびROEともに2桁%の早期達成を目指します。

2026年経営目標

  2024年 2026年
売上成長率注釈 1%
(2023-2024年)
年平均 +3%
(2024-2026年)
コア営業利益率 3.7% 7%
ROIC注釈 0.6% 5%
ROE 1.7% 7%

コスト構造計画
(コア営業利益ベース構成比)

コスト構造計画(コア営業利益ベース構成比)
コスト構造計画(コア営業利益ベース構成比)

財務・資本戦略で掲げる4つのポイント

まずP/L面では、ブランド力強化を中核に「高い収益力と競争力を有する事業の構築」に取り組みます。また、投資ガバナンスの強化を進め、成長領域への積極投資(アクセル)と、適正な投資管理(ブレーキ)のバランスを最適化します。投資プロセスの透明性向上を目的に、投資類型ごとの評価基準を再定義・適用し、案件ごとのリスク・リターン評価を精緻化します。同時に、投資実行後のモニタリングも強化し、資源再配分・撤退の意思決定を機動的に行っていきます。そして、「B/S管理の強化、適切な財務レバレッジ」を推進します。工場・生産体制、不動産・オフィスの再検証などを通じたアセットライト化を進めるとともに、投資資金の低コスト・機動的調達を実現すべくA格付維持を図ります。また、「キャッシュ創出力の持続的な向上・株主価値の最大化」に向け、キャッシュカルチャーの全社への浸透とパフォーマンスマネジメントの刷新に取り組みます。これらの基盤となるのが、生産性・効率性の向上を目的とする「FOCUS注釈」プロジェクトです。2025年下期のグローバル本格稼働を予定し、業務プロセスの改善と一体化しながら推進します。決して容易な取り組みではありませんが、安定稼働が資本効率向上に直結するため、全社をあげて推進します。

「資本コストの低減」については、ボラティリティの低い事業構造への転換を図るとともに、株主・投資家との対話を強化し、情報開示の透明性向上やサステナビリティ経営の高度化なども進めます。例えば、移転価格ポリシーによる内部取引価格の変動で地域業績の経年比較が困難であるとのご指摘を踏まえ、2025年5月の決算開示以降、各地域の収益性をより明確に把握できるよう開示方法を変更します。

これらの取り組みを通じ、財務戦略のKPIとして、キャッシュ創出力(EBITDA・フリーキャッシュフロー)、財務健全性(Net D/EBITDA)、投下資本回転率(在庫回転率・固定資産回転率)を設定し、2026年目標の達成を目指します。

財務戦略基本方針

高い収益力と競争力を
有する事業の構築
  • 集中的な投資でコア領域の成長を強力にバックアップ
  • 成長戦略に基づくリターン重視のメリハリのある投資
B/S管理の強化、
適切な財務レバレッジ
  • アセットライト(保有資産の適切な見直し)の推進
  • 機動的な資金調達を可能とするA格付の維持
キャッシュ創出力の
持続的な向上・
株主価値の最大化
  • ROICツリーを意識したパフォーマンスマネジメント強化
  • 財務ガバナンスの強化
  • キャッシュカルチャーの浸透
資本コストの低減
  • 情報開示の強化、透明性・予測可能性の向上
  • ESG経営の高度化

財務戦略KPI

    2024 2026
キャッシュ創出力の向上 EBITDA注釈 896億円 1,300億円
フリーキャッシュフロー 353億円 500億円
健全な財務体質 Net D/EBITDA 1.3× 1.3×以下
投下資本回転率
の向上
在庫回転率注釈 6.4 7
固定資産回転率 1.8 2

「実行力」にこだわる

資生堂の時価総額や業績は大変深刻な状況にあります。しかし、私は当社の底力を信じています。2024年7月にCFOに着任し、さまざまな方と対話を重ねる中で、150年以上続いてきた資生堂という会社を、社会に価値を届け続ける、美しくしなやかで、そして強い会社として再び輝かせたいとの想いをより一層強くしています。

日本事業の急回復と、それを支える文化・マインドセットの変革を間近で見るにつけ、「資生堂は必ずこの危機を乗り越え、さらに強くなれる」と確信しています。資生堂が成長企業として再生するために、この2年は「実行力」を徹底的に追求します。改革を進めるのは「人」です。そのために、ROICマネジメントを全社に根付かせることが最優先課題と考えています。経営陣と社員一人ひとりをつなぎ、パフォーマンスカルチャーを浸透させるツールとなるべきものです。ROICをツリー分解し、各部署のKPIと紐づけ、継続的に進捗評価・改善を図る仕組みを構築していきます。そのために、2025年には、社員の理解促進と検証を実施し、2026年には全社導入をしていく計画です。社員の理解・納得がなければ、この仕組みは機能しません。だからこそ、対話を重ねながら確実に浸透させていきます。

また、「アクションプラン 2025-2026」の実行を促進するのは、やはり対話だと考えています。各ブランドホルダー、各地域CEO・CFOとの実践的な議論を重ね、健全な危機感とビジョンを共有しながら、この2年を駆け抜けます。

そして、この変化も社内にとどめるのではなく、株主・投資家の皆さまにも透明性の高い情報共有を行い、進捗を丁寧にお伝えしていきたいと思います。引き続き、率直な議論を重ねていければと存じます。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

ROICマネジメント

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