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CEO

CEOメッセージ

「アクションプラン 2025-2026」では
レジリエントな事業構造の確立に向け、構造改革を完遂します。

そして、自分たちの信じる価値を世に問い続けながら、持続的成長を遂げる体制へと進化します。

資生堂は、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
(美の力でよりよい世界を)」のもと、
事業を通じて「美」の力で人々の心と社会を豊かにすべく、挑戦を続けます。

取締役 代表執行役 社長 CEO

藤原 憲太郎

藤原 憲太郎のサイン

「アクションプラン 2025-2026」ではレジリエントな事業構造の確立に向け、構造改革を完遂します。

そして、自分たちの信じる価値を世に問い続けながら、持続的成長を遂げる体制へと進化します。

資生堂は、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、事業を通じて「美」の力で人々の心と社会を豊かにすべく、挑戦を続けます。

今だからこそ価値を見つめ直す

「美とは何か?」「あなたにとっての資生堂とは?」

2025年1月にCEOに就任し、私は全社員にこう問いかけました。

2023年1月に社長 COOに就任して以来、この2年間さまざまな市場環境変化に直面してきましたが、それ以上に、会社内部に、変化に対応しきれないという本質的課題があったと認識しています。しかし資生堂は150年以上の歴史のなかで、幾度となく外部環境変化を乗り越えてきました。厳しい状況の今だからこそ、改めて企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、私たちの本業であるビューティービジネスを通じて、社会にどう貢献できるのかという点に立ち返り、価値創造の在り方を追求し、社員と共有したいと考えました。

私が大切にしたい資生堂の提供価値は、人々の心を動かし、人生を豊かにすることです。美しいものに触れたとき、人は心がうるおい、他者や自然環境などにも優しくなれます。そして、化粧の「美」は日常に根差しており、毎日の生活を前向きにする力を持っています。私たちは、心の豊かさにまで通じる「美」の可能性を信じ、高付加価値の商品やサービスの提供を通じて、社会価値・経済価値の創出に取り組んでまいります。AIの進展などにより、模倣も容易になる中で、高い付加価値を生むためには、自分たちのコアバリューを磨き抜いた資生堂ならではの価値創造の確立が必要です。

肌、身体、心のつながりまでを含めた資生堂独自の知見・技術と、これまでに培ってきた感性や文化を融合しながら、唯一無二の価値を創出し、人の人生、そして社会に大きな価値を届けていきます。

事業を通じた社会価値の創出に向けて

資生堂は2030年に向け、こうした価値提供を通じ、「美の力を通じて人々が幸福を実感できるサステナブルな社会の実現」を目指すと標榜しています。一人ひとりが尊重され、誰もが活躍できる多様性に富んだ社会、美を心から楽しめる豊かな地球環境への貢献に取り組みます。

資生堂は「PEOPLE FIRST」という考えのもと、企業価値を成長させるすべての源である社員(人財)の育成や、多様な人財が活躍できる環境づくりに注力してきました。人の可能性を解放し、変革を成し遂げるための鍵となるのがダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)です。不透明な経営環境において価値を生み出し続けるには、あらゆる多様性を理解し、異なる価値観やアイデアを尊重し合いながら多様な人が活躍することが重要です。同時に、DE&Iを強みとする資生堂は、自社のみならず、日本社会の多様性実現をリードする責務があると捉えており、DE&Iと企業価値の関係を研究する「資生堂DE&Iラボ」の活動をはじめ、社内における知見を社会にも広く伝えていきながら、日本社会の変革を先導していきます。

さらに、サステナブルな社会の実現においても業界をけん引していく所存です。資生堂の文化や技術を活かすことで、消費者の行動変化のきっかけを生みたいと考えています。例えば、サンケアにおけるサンデュアルケア技術は、紫外線をカットするだけでなく、太陽の光を美容効果のある光に変換する画期的な技術であり、環境共生の考え方を広げていきます。また、JFA注釈とパートナーシップを結び、アジアの子どもたち向けのサンケア教育を行っています。子どもの心身の成長にとって、日光を浴びることの意義を理解してもらうことも、間接的に資生堂が貢献できることだと考えています。

持続的な成長に向けて、
本質的な課題に目を向ける

ありたい社会の実現に向け、持続的な成長を確かなものとするためには、足元の厳しい事業環境を直視し、本質的な課題に対処する必要があります。不安定な市場環境下で構造改革を続けておりますが、2024年のコア営業利益は2期連続の減益となり、当期利益は赤字。フリーキャッシュフローもマイナスとなり、減配という判断をせざるを得ませんでした。コロナ禍以降の環境変化が業績悪化の直接的な要因ですが、環境変化に対応できない事業・組織であったことが本質的な課題です。

事業構造の面では、売上・利益ともにバランスの取れた地域構成の構築が重要です。2023年からの2年は中国とトラベルリテール事業の苦戦が全社業績の悪化を招いていますが、これは、成長性・収益性ともに、中国人需要を軸としたこの2事業の割合が大きいポートフォリオとなっていたこと、また、それ以外の地域における稼ぐ力の低さがその要因です。

収益構造の面では、固定費の大きさが問題です。売上が低下すると利益を圧迫するコスト構造は、今後も変化し続ける環境下において、喫緊に解決すべき事項です。

今後の計画立案においては、市場成長・売上拡大前提の戦略ではなく、市場や販売状況に応じて、迅速に活動計画を見直し、常に利益が確保できる体制に移行してまいります。

2024年は改革の成果が顕在化

一方で、こうした本質的課題に取り組んだ日本事業の構造改革はしっかりと成果を上げています。2024年からは、私も日本地域のCEOとしてより現場に入り込み、経営改革プラン「ミライシフトNIPPON 2025」を進めてきました。2024年は選択と集中により、注力ブランド・ヒーロー商品が力強く成長、全体をけん引し約10%の成長を実現しました。また、ミックス改善による粗利改善も実現したほか、拠点等の最適化や間接費の削減、約1,500人の早期退職支援プランといった、構造改革アクションを確実に実行した結果、前年比で250億円超の大幅増益を果たし、コア営業利益率が約10%まで回復しました。

成功要因は「経営資源の集中」です。これは、やめることの決定と同義です。プロセスも組織もシンプルになり、現場の活動の優先順位が明快化し、各社員のアクションが効果的・効率的に利益の拡大へと直結する事業となりました。また、コミュニケーションにおいては、社員と健全な危機感を共有することを大切にしました。社員たち自身が、現状の仕組みや体制を変革することに勇気を持てたので、改革のエネルギーが生まれたのだと思います。

また、中国事業についても、不採算店舗の閉鎖や人財配置の適正化など、事業体制の再構築を続けてきており、2024年は厳しい環境による減収の中でも増益するなど、外的要因に左右されない収益基盤へと移行しつつあります。

「アクションプラン 2025-2026」
をやり遂げる

こうした現状認識のもと、構造改革を完遂する「アクションプラン 2025-2026」を策定しました。変化の激しい市場でも安定的な利益拡大を実現するレジリエントな事業構造を、何としてもこの2年間で確立します。ブランドと収益構造における以下の2つを戦略の柱とし、その推進に向けて財務やオペレーション面などの事業マネジメントの高度化を推進します。

「アクションプラン 2025-2026」の狙い

「アクションプラン 2025-2026」の狙い
  • ブランド力の基盤強化:

    生活者と資生堂の接点であるブランドへの強い支持こそ、強靭な事業基盤の鍵です。資生堂の独自性や研究開発力の価値を最大化させられるコア3、ネクスト5として定めた注力ブランドに、あらゆる知見・技術・アイデアを集中的に落とし込んでいきます。資生堂は、IFSCC注釈での最多受賞歴などが示すように、世界に誇る研究知見や高い研究技術力を有しています。2021年から着手したブランドイノベーション改革では、骨太領域への選択と集中を進め、研究成果を機動的にブランド・商品に導入できる構造へと進化しており、これが最近のヒーロー商品創出に直結しています。2025年も先進技術を搭載した新商品の発売を予定しており、今後も骨太領域への資源投下を推し進めます。

    また、ブランドの育成では、研究開発はもとより、ブランドの背景にある文化を重視します。デジタル社会ではブランドの理解よりも商品の話題性が先行するケースが増えていますが、インパクトを与える強い商品を生むだけでなく、研究・技術の価値をブランドの哲学やストーリーにつなげることで、ブランド価値や愛用者基盤を拡大していきます。

    例えば、2024年に大ヒットした「ファンデ美容液」。使用効果と「彩る美容液」というコンセプトに共感いただき、愛用者になっていただく方が増え、新市場の創造に成功しました。

    マーケティング投資については、2024年のベースから2025~2026年累積注釈で300億円の追加投資を行います。その実行に際しては、地域ごとのボトムアップアプローチが強かったこれまでの在り方から、トップダウンによるグローバルでのブランド戦略最適化のためのイニシアチブを強化し、経営資源の集中を大胆に実践します。また、ブランドが生活者に近づき、多様化に対応するため、他地域に先駆けて中国事業にてブランドサテライトオフィスを設置しました。今後は、グローバル共通の強化ラインと、現地ニーズにあわせた商品の優先順位を機動的に設定し、多層化したマーケティングを進めていきます。

    ブランドマネジメントの仕組みについても進化を図ります。注力ブランドトップで構成されるコミッティを立ち上げ、より全社視点でブランドポートフォリオの最適化を図るとともに、ブランド共通指標によるモニタリング、リスクと機会の迅速な精査、機動的な投資配分を行う仕組みを構築し、ブランド横断での戦略最適化・投資対効果の最大化を推進しています。

    2025年発売予定の最先端研究成果・技術を搭載した新商品の事例
    2025年発売予定の最先端研究成果・技術を搭載した新商品の事例 2025年発売予定の最先端研究成果・技術を搭載した新商品の事例
    2025年発売予定の最先端研究成果・技術を搭載した新商品の事例 2025年発売予定の最先端研究成果・技術を搭載した新商品の事例 2025年発売予定の最先端研究成果・技術を搭載した新商品の事例
  • 高収益構造の確立:

    無駄のない強靭なP/L構造をつくり上げ、ブランドの成長が利益に直結する仕組みを確立します。そのためには、全地域の収益性改善が不可欠であり、日本・中国を主とした2024~2025年のコスト削減計画(400億円超)をグローバルに広げ、2026年には米州やグローバル本社を中心に250億円超のコスト削減効果実現を図ります。日本・中国で得たコスト削減の知見と成果は、他の地域でも大いに活用できます。抜本的な構造改革を、従来のプロセス、仕組みを見直す良い機会と捉え、コスト構造改革の完遂がアクションプラン成功の必須条件との考えのもと、全社でスピードをあげて実行していきます。

  • 経営計画:

    以上の取り組みを通じ、2026年はコア営業利益率7%を目指します。この2年で、コロナ禍以降最高水準の収益率まで引き上げ、ブランドに再投資可能な収益構造としていきます。売上高については、2年間の年平均成長率3%を見込みます。また、B/Sの観点からもアセットライト化を推進し、資本効率の改善を図ります。2026年目標はROIC5%、ROE7%と改善の途上となりますが、確実に超えるべきマイルストーンと位置付けています。

    このアクションプランの実行にあたっては、迅速な行動力が重要になります。キーワードは「ACT and DELIVER」です。そして、2027年からは大きく成長に舵を切り、より力強い成長の実現を目指します。収益性目標についても、できるだけ早期にコア営業利益率2桁を達成し、グローバルの競合と戦える水準に引き上げていきたいと考えています。

    「アクションプラン 2025-2026」の目標、経営計画
    「アクションプラン 2025-2026」の目標、経営計画
    「アクションプラン 2025-2026」の目標、経営計画

面白いと思ったことを世に問う

私が資生堂に入社した当時の職場は非常に自由で、先輩たちが「もっとこうしたらお客さまが喜ぶのでは?」「こんなことしたら面白いのでは?」と、前向きな会話が飛び交い、斬新な施策を仕掛け続けていました。

私は、資生堂が持っている、「自分たちが面白いと思うことを世に問うてみたい」という意志を大事にしたいと思います。

美しく感じるものを素直に美しいと言い、面白いと思ったことを世に問い続けることで、社会を豊かにしていきたいと考えています。

私自身がCEOとしてしっかりとリーダーシップを発揮しながら、2025~2026年の2カ年で集中的な改革を行い、急ピッチで成長を可能とする基盤を確立しながら、資生堂は、もっと伸びやかに、しなやかに、確たる意志をもって挑戦を続け、美の力で人々の心と社会を豊かにしてまいります。