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社外取締役対談

社外取締役2名による対談テーマは、
機関設計の変更、経営上の課題、
「アクションプラン 2025-2026」と
今後の成長です。

社外取締役

取締役会議長

指名委員会 委員

監査委員会 委員長

畑中 好彦

社外取締役

監査委員会 委員長

後藤 靖子

社外取締役2名による対談テーマは、機関設計の変更、経営上の課題、「アクションプラン 2025-2026」と今後の成長です。

2024年の総括、
機関設計変更による変化

2024年は厳しい業績となり、株価も低迷しています。ステークホルダーの期待と実態とのギャップが顕在化した状態として、重く受け止めています。取締役、執行メンバーともにステークホルダーの意見に耳を傾け、経営の高度化につなげるべきだと、改めて深く心に銘じているところです。

2024年に指名委員会等設置会社に移行し、取締役会の審議事項は経営の方向性に大きな影響を与える重要事項に集中し、効果的な議論ができるようになったと感じています。足元の業績が低調な中、業績改善のための短期的な課題解決は重要ですが、執行側には、そこだけに囚われすぎず、中長期で本質的に目指す未来の姿を描き、経営執行のスピードと柔軟性を意識することを促しています。

おっしゃる通り、2024年からは取締役会での戦略議論が活発化し、執行メンバーとは取締役会以外でも対話する機会が増えましたが、業績が厳しい中、足元の進捗に時間を割くことになりました。短期業績の確保は非常に重要です。一方、それだけでは未来はありません。外部環境変化が大きい中でどう生き残り成長していくかということについて苦しみながら議論してきました。今後も継続して長期的な視点での議論をより集中して行う必要があると思います。

市場の状況や社会情勢が変化する中で、「アクションプラン 2025-2026」についても、現行の中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」との整理や最終形の合意に時間を要してしまいました。また、短期的集中アクションに加えて当社の価値を活かした進化・発展への道筋を明示すべきだと考えており、2025年中に開示する予定です。

監査の面で、機関設計変更によって変わったことはありますか。

従来、監査役も経営の一端を担っていると考え、経営のために必要だと思うことは発言し行動してきましたので、その意味では大きくは変わらないと捉えています。一方、機関設計変更を機に、より企業価値向上に資するように、監査委員会の重点テーマを精査し、行動し、執行側へ発信するとともに、現場との対話をより一層重視しています。

後藤 靖子

具体的な課題と「アクションプラン 2025-2026」

まずは中国とトラベルリテール事業について、コロナ禍以降の経済状況に伴う需要変動や処理水放出後の日本製品買い控えの影響といった外部環境変化に気を取られ、本質的に重要な消費者の購買行動の変化に対しての打ち手が遅れたことを反省しなければなりません。現在、中長期的に中国は重要市場であるとの認識のもと、消費者動向を迅速に把握すべく、組織構造とリソース配分の見直しを行っています。

中国事業については、ブランドエクイティが落ちているのではないかという感度が、外部環境に影響され鈍くなった面があったと考えます。将来展望を楽観視することなく、中国の現地・現場の声に敏感になり、市場を把握することが重要です。トラベルリテール事業については、コロナ禍においては一種のいびつさを伴った成長があったという認識に立ち、旅行者中心の事業として早期に安定化を図るべきです。

「FOCUS注釈」については、課題を解決しながら順次導入を進めていますが、スケジュールに遅延が生じています。単なるシステム改修ではなく事業モデル改革という目的のため、従来のオペレーションを捨て去るくらいの意識の転換が必要です。グローバルオペレーションの高度化だけでなく、事業改革・事業価値創造に資するプロジェクトとして早期にグローバル展開をして価値最大化を達成すべく、最優先課題として扱うことを求めています。

「FOCUS」については、プロジェクトオーナーの権限・責任をより明確にする必要があったと感じます。従来の監査役会でもモニタリングをしてきましたが、会社全体としてより早期に検証を行う必要があったと考えており、今後も監査委員会での重要な課題として確認していきます。

一方、積年の課題であった日本事業の再生は、構造改革の成果が現れています。この成功の要因は、やはり社員との目標の共有と丁寧な対話だったと考えています。

日本事業では、統一した方針のもと断固たる選択と集中を進めました。何よりも、藤原さんをはじめ関わる社員全員が、覚悟を決めたことが素晴らしい成果を生み出した主因であると思います。取締役会でも、強みを伸ばすことと、市場変化に対応できない仕組みは大胆に捨て去ることを要請し、それらの実行を支持してきました。特に有効だったのは、そのスピード感です。構造改革は、長引くと社員・組織が疲弊してしまうため、短期間に集中して実行することが重要です。この成果は、「アクションプラン 2025-2026」にも必ず活きてくると思います。

監査委員会でも、日本事業の改革の現場を注視していました。約1,500人の早期退職支援プランの実施においても、退職する方の次の人生にも心を注ぎ、残る社員の不安に対しても一つひとつ真摯に向き合っていました。皆が前向きに進める改革だったと思います。

「アクションプラン 2025-2026」については、経営陣とともに、不退転の決意で進めます。この構造改革の成否と、ブランド・商品のお客さまからの評価、すなわち成長軌道への回帰は、ステークホルダーからの最大の期待と捉えています。

当社が目指す「Personal Beauty Wellness Company」として、美の力を通じて価値を提供することは不変であり、「アクションプラン 2025-2026」はそれを達成するための基盤再整備です。今がその転換点として資本市場から認められるよう努めてまいります。そのため、今般、ROICをはじめ経営の透明性と巧みさを示すKPIを設定したことは有用でしたし、当社の企業価値向上へのコミットメントともなりました。取締役会では、このKPIをブレイクダウンした各部門・個人の目標設定とその実行力を的確にモニタリングしていきます。

畑中 好彦

今後の取締役会運営の抱負

構造改革の進捗に加え、どのようにして成長を遂げるのかを中心に議論していく必要があります。そのためには強いブランドとは何なのかを追求し続けなければいけません。そのための仕組みや体制、人材の獲得・育成の在り方を検証していきます。マネジメント体制で言えば、地域・ブランドの関係とオペレーションの見直しも検討すべきでしょう。全社最適の視点で、そして企業価値向上に資するマネジメント構造を検証していきたいと思います。

取締役会の役割は、社員、お客さま、取引先、株主、社会・地球といった、当社が向き合うステークホルダーのそれぞれの期待を十分に理解し、経営に活かしていくことで当社の企業価値を向上させていくことに他なりません。そして、その期待とは、未来にわたって世界に必要とされる企業であり続けること、すなわち資生堂の感性が世界の美の創造、豊かな社会へ貢献し続けることだと考えています。

そうですね。資生堂は時代を切り開き挑戦的な価値創出を続けてきた会社なのだと思います。社員全体がこのような意識を持ち続け、これからも時代をリードすると、社員が胸を張って言える前向きな組織にしていけるよう取締役会としても支援していきます。

2025年からは社外取締役である畑中さんが取締役会議長を務めています。畑中さんのお考えは大変クリアで、議論のポイントも明確になっていますので執行側との連携にも力を入れ、企業価値向上に取り組んでまいります。

私は、経営において執行のスピードが鍵だという信念があります。資生堂の未来への想いを共有しながら、柔軟かつ機動的な執行を支援するとともに、取締役会でも変化に対応し得る迅速な運営を心がけます。ぜひとも、今後の資生堂にご期待いただければと存じます。

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