2023年07月13日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、「純粋レチノール」が角層を柔軟化し、 皮ふ表面から奥へのシワ進行を抑制する新機能を発見
~シワの根本原因「2層の肌ギャップ」を進行させる角層硬化へ対応~
資生堂は、独自開発した「肌内外3D弾性イメージング技術※1」を活用し、角層が硬化すると、表情などで皮ふが動く際に真皮に加わるメカニカルストレス※2が増大し、シワの根本原因「2層(角層と真皮)の肌ギャップ」※3を進行させることを確認しました。また、シワを改善する効能効果が認められている有効成分「純粋レチノール」※4に角層柔軟化作用があることを見出し、皮ふ表面から奥へのシワの進行を防ぐ新たな機能があることを明らかにしました(図1)。純粋レチノールは、高い肌改善効果を有する一方で、酸素・熱・光などで容易に分解されるため、効果を十分に発揮させるためには、安定に保ち、肌に確実に届ける工夫が必要です。当社は30年以上にわたるレチノール研究の中で、製品中に純粋レチノールを安定的に配合できる独自技術「Shiseido Retinol TripleLock Technology(資生堂 レチノール トリプルロック テクノロジー)」を開発し、「純粋レチノール」の効果を肌へ確実に届けることを実現しています。
本研究の成果の一部は、「第31回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)※5横浜大会(2020/10/21-30)」で発表しました。また、第48回日本香粧品学会香粧品学会(2023/6/23)にて発表しました。
※1資生堂、本多電子(株)、豊橋技術科学大学で共同開発した特許取得技術。皮ふ内からの超音波反射信号を弾性率に変換する技術を世界に先駆けて開発した。
資生堂、肌内部のハリ強度可視化に成功 (2018年) https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002422
※2 機械的にかかる力のこと。角層のかたさが皮ふ内部に及ぼす力を、多層構造の圧縮シミュレーションから算出。豊田工業大学との共同研究。
※3 資生堂、シワの根源は肌内部の弾性バランスにあることを発見 (2021年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003074&rt_pr=trh91
※4レチノール類の中でも、誘導体ではなく、純粋なビタミンAのことを指す。ビタミンAの化学構造を修飾したレチノール誘導体に比べ、効果は高いが分解しやすい。純粋なレチノール(ビタミンA)を、医薬部外品・有効成分として配合することは、国内では資生堂が唯一認められている。
有効成分純粋レチノールによるしわを改善する効能効果の承認を日本で初めて取得 (2017年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002135
※5 IFSCC:The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists
研究の背景
当社は、30年以上にわたるレチノール※6の研究成果を基盤に、日本で初めて、有効成分「純粋レチノール」によるシワ改善効果の訴求を厚生労働省から承認されました。その効果は確実なもので、皮ふの浅い層である表皮から深い層の真皮まで、それぞれの層においてシワ改善につながる機能を明らかにしており、首のシワなどに対する効果も確認してきました※6。確実な改善効果の一方で、肌の生理的変化には数週間を要することから、さらに効率の良いシワ改善を求めて、シワの根本に迫る、皮ふの力学構造の研究も行ってきました。従来の力学測定では不可能とされてきた、皮ふの微小領域ごとの弾性(圧縮した際の反発力)を三次元で計測できる「肌内外3D弾性イメージング技術」を世界に先駆けて開発したことがきっかけとなり、角層は加齢に伴って硬くなる一方で真皮層は柔らかくなり、この硬さのギャップによってシワが形成されるという、「シワの根本原因」を発見しています。
本研究では、より早く、確実にシワを予防・改善する方法を開発することを目指し、「シワの根本原因」に関わる角層の硬化に着目した研究を進めました。
※6資生堂、首のしわの改善効果を新発見、8週間で実現~レチノールの新効果 真皮に届きコラーゲン・ヒアルロン酸など産生促進~ (2018年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002518
角層硬化による真皮への影響
角層が硬くなることでシワにどのような影響が及ぼされるか検証を行うため、コンピューター上で実際の皮ふ構造を反映したモデルを構築し、角層が柔らかいときと硬いときの圧縮による変形のシミュレーションを行いました。その結果、角層が硬いモデルにおいては、真皮の変形は大きくなり、真皮に加わるメカニカルストレスが増加することが明らかになりました(図2)。過去の研究により、真皮に加わるメカニカルストレスは、コラーゲン分解酵素の産生を促進させるという知見が見出されています※7。そのため、角層が硬い場合、表情などで皮ふが動く際のメカニカルストレスは増大して、真皮の軟化が誘引され、シワの根本原因である「2層(角層と真皮)の肌ギャップ」の進行につながると考えられます。つまり、角層の硬化が皮ふ表面から奥へのシワ進行につながることが示唆されており、角層を柔らかく保つとことが、シワ改善にとって重要なケアであることが明らかになりました。
※7 Skin Research and Technology 2014;20: 399–408
純粋レチノールによる角層の柔軟効果
日本香粧品学会が策定した「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」※8 にしたがい、目尻に浅いシワからやや深いシワが認められる健常な日本人女性35名を対象に、純粋レチノールを配合したクリームの半顔連用試験を12週間実施して、角層の硬さの変化を評価しました。その結果、純粋レチノールを配合したクリームを4週間連用すると、使用前と比較して角層は有意に柔らかくなり(図3)、また、連用することで、角層のやわらかさは保たれ、シワ面積の減少につながることが示されました(図4)。
※8 日本香粧品学会誌 Vol. 30, No. 4, pp. 316-332 (2006) (jcss.jp)
図3 肌内外3D弾性イメージング技術による測定:純粋レチノール配合クリームを4週間連用すると、角層が柔らかくなる
Download Small Image[47.2KB] Download Large Image[283KB]複合油分を配合した成分による速やかな角層柔軟化効果の実現
純粋レチノールには、角層を生理的・根本的に柔らかくする効果があることを示しましたが、生理的な変化を引き起こすためには数週間の期間が必要となることから、短時間で角層を柔軟化しシワ予防につながる成分についても検証を行いました。その結果、角層シートに、ヒマシ油およびビスジグリセリルポリアシルアジペート-2などを含む複合油分を配合した成分を塗布した直後の角層の弾性率を確認した結果、それら成分の塗布によって短時間で角層を柔らかくできることが示されました(図5)。また、実際の肌にそれら成分を塗布して10分後、皮ふ表面にある角層の硬さを測定したところ、やわらかく変化しました(図6)。油分は肌から洗い流されると効果は消失しますが、純粋レチノールと併用することで、根本的な肌の柔軟化効果をサポートしつつ瞬時に肌を柔らかくほぐすことが期待され、純粋レチノールの角層柔軟化効果を最大限に引き出すことができると考えられます。
当社は安全性と機能性を高次元で両立する形で、シワ改善の有効成分「純粋レチノール」を開発し、市場での好評をいただくなど、常にお客さまのニーズに寄り添い応え続けてきました。これまで、純粋レチノールの表皮や真皮への効果を明らかにしてきましたが、それだけでなく、今回は、皮ふ表面にある角層への柔軟化効果があることを明示し、資生堂が「シワの根本原因」であると考える皮ふ表面と内部の硬さのギャップのコントロールと、コラーゲン分解を引き起こす真皮へのメカニカルストレスを防ぐことで、シワを改善していくことを示しました。
今後も、シワを改善できる有効成分として認められた純粋レチノールを配合した製品(医薬部外品)を製造販売できる日本唯一のメーカーとして、お客さまに前向きな気持ちでいきいきと豊かな表情で生活いただくための研究を進めていきます。
<関連情報> “Shiseido Retinol TripleLock Technology”- 純粋レチノールの分解を防ぐ資生堂の独自技術
レチノールとは一般的にビタミンAのことで、身体の成長や視力の維持、また皮ふや粘膜などを正常に保つ上で、必須の脂溶性ビタミンです。塗布することによって、高い肌改善効果を発揮することが認められていますが、酸素・熱・光などによって容易に分解されてしまう、取り扱いが難しい成分でもあります。
資生堂では長年の研究で培った処方技術を応用し、また、独自の製造方法を用いて、純粋レチノールを分解させることなく安定的に配合することに成功しました。更に純粋レチノール製剤のために特別に開発した、酸素と光を通さない独自の容器を採用しています。このような処方技術、製造技術、容器技術の “Shiseido Retinol TripleLock Technology”により、純粋レチノールを守り抜き、その効果を肌に確実に届けることを実現しています。
R&D戦略について:
本研究は、R&D戦略3本柱の1つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、シミ・くすみ、シワ、たるみ、毛穴など、長年に渡りお客さまが悩む「不変の肌悩み」の原因を解明しソリューションを開発することを目的として進めました。
・2022年統合レポート(ビューティーイノベーション)
https://corp.shiseido.com/report/jp/2022/value_creation/innovation/
・キーワード
Skin Beauty INNOVATION、不変の肌悩み、シワ
※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。