2022年07月19日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、機能性とデザイン性を高次元で両立したスパチュラ自立格納容器の開発に成功
資生堂は、化粧品ならではのデザイン性を確保しながら、持ちやすさや蓋の開けやすさなど、容器としての機能性を高い次元で両立できる、新たな機構を備えたスパチュラ自立格納容器を開発しました。
一般的に、化粧品容器の設計では、お客さまの求めるブランドの世界観や高級感、心理的な満足感などにつながるデザイン性が重要視される一方、容器として中味を安定に保存する基本的な性能に加え、使用時の持ちやすさ、蓋の開けやすさなどの機能性を両立することが求められます。スパチュラによって製品に高級感や清潔感を付与することができますが、使用後に格納する場所がないことも多く、またスパチュラを自立させて清潔に格納できる容器形態は、容器サイズや蓋の形状などの制約が多いことから、デザイン性と機能性を両立する自立格納容器の設計を実現するには技術的に高いハードルがありました(図1 左・右)。今回、新開発の「自動回転制御メカニズム」を既存の蓋の内部に搭載することで、格納したスパチュラの先端が蓋の内部と接触することなく、通常の容器と同様に中味を密閉・保管できる、デザイン性と機能性を両立するスパチュラ自立格納容器が実現しました(図1 中)。今回開発したスパチュラ自立格納容器は、9月21日発売予定の「ベネフィーク リュクス リブルームナイトクリーム」に活用していきます。
本研究は、資生堂独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』のFunctionality/Japan Qualityというアプローチで進められ、機能性とお客さまの情緒価値を満足するデザイン性を高次元で両立することを目指して開発に取り組みました。当社は今後も様々な視点から、お客さまに最高の化粧体験を提供し続けます。
図1. デザイン性と機能性を両立した新機構(左;新機構搭載前の試作品、 中;今回の開発容器、 右;既存のスパチュラつき製品)
Download Small Image[42.1KB] Download Large Image[188KB]自動回転制御メカニズムを搭載したスパチュラ自立格納容器|資生堂
自動回転制御メカニズムの開発
これまで、容器サイズや蓋の形状の制約などの問題から、デザイン性と機能性を両立できるスパチュラ自立格納容器を実現するためには、技術的に高いハードルがありました。その一番の要因は、スパチュラとともに内側に取り付ける中味容器の位置が制約されることでした。理想的には、中味容器の中心を外側の容器の中心からずらして、中味容器の側面にスパチュラを自立させて配置すれば、容器内部の空間を効率よく配置することができ、持ちやすさや蓋の締めやすさなどの機能性を両立することができます(図2)。しかし、既存の機構では、蓋を閉める際に蓋の内部とスパチュラが接触してしまい、また中味容器の中心が外側の蓋の中心とずれているため、そのままでは中味容器を密閉できませんでした。
今回新開発した「自動回転制御メカニズム」を蓋の内部のパーツに搭載することで、蓋を閉める水平方向の回転動作に合わせて内部のパーツも同時に水平方向に回転した後、所定の位置(スパチュラと蓋の内部が接触しない位置、かつ中味容器を密閉できる位置)になると自動的にパーツの回転が止まり、そのまま降下します(図3)。外側の蓋はそのまま回転を続けることにより、通常の容器同様、最終的に中味を密閉できます。これにより、スパチュラを清潔に格納することはもちろん、スパチュラの先端を取り出しやすい高さに突出・自立させるとともに、デザイン性も両立する容器が実現しました。
なお、スパチュラを格納する空間は、中味などによる汚れを拭き取りやすい構造とし、レフィル容器などを展開するサステナブルな商品設計においても、その機能性とデザイン性を両立することを可能にしています。
ユニバーサルに活用可能な新機構
今回開発した自動回転制御メカニズムを搭載した蓋内部のパーツは、スパチュラを格納するための容器だけでなく、他の様々な美容用具を容器内部に格納するために応用が可能です。さらに、デザインの自由度も高く、幅広いブランドや商品に今後展開可能です。それに加え、レフィルにも対応できる中味容器の設計が可能であり、容積率(※1)を最小限に抑えた中味容器設計を可能とする技術であることから、サステナビリティに配慮した商品設計にも対応が可能です。
資生堂は引き続き、人にも地球にも優しく美しい化粧品容器の開発を行い、様々な価値をお客さまに提供し続けます。
※1 中味容積に対する、容器体積の割合。一般的に、容器設計において中味容量に対する容積率が少ないほど、製品中味が容器を占有する空間をより効率的に使用していることを示す。そのため、容積率が低いと製品1個あたりの輸送時の環境負荷にも貢献できる。
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