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2020年12月21日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂、肌質感を正確に再現する光学シミュレーションシステムを開発

~究極の素肌感を生む次世代ファンデーションの実現へ~

資生堂は、モンテカルロシミュレーション※1を利用して肌の質感を正確に再現する光学シミュレーションシステムを開発することに成功しました。今回、当社がグローバルで蓄積した様々な肌測定データや多種多様な粉末製品の処方を新たに導入し、繰り返し検証することにより、製品開発の初期段階から塗布後の仕上がりを自由自在に画像で再現することが可能となりました。従来のシミュレーションシステムでは、肌の光学特性やファンデーション塗布後の肌の仕上がりを完全に再現することは不可能でしたが、今回開発した新たなシステムにより、これまで以上に正確で多様なお客さまの期待に応える製品の実現に繋げることができます。
本技術は、2021年2月21日に発売する、塗布時の透明感とカバー力を両立しながらも自然なつや感を実現している「マキアージュ ドラマティックパウダリー EX」などの商品設計に活用するとともに、今後当社のメイクアップ製品の開発に幅広く活用していきます。
今後も当社は世界中のお客さまの期待を超える商品をお届けするために、研究開発を推進していきます。
※1 モンテカルロシミュレーション: 複雑な過程を経て生じる現象を、乱数を用いてコンピューターで再現する方法。光学シミュレーションの一つとして活用される。光の皮膚への入射、反射、皮膚内部の拡散などを正確に計算するために用いられる。

【研究の背景】
ファンデーションの開発には「塗布後の質感・凹凸補正」「使用感、化粧持ち」「紫外線・乾燥などを防ぐ機能性」などの様々な要素が求められ、それらを高次元で実現する必要があります。このうち、「塗布後の肌質感」は、肌の見た目に直結する非常に重要な要素です。従来の製品開発においては、ファンデーションの塗布後の肌の質感や色調について、訓練された専門のパネルが目視で観察・評価を行っていましたが、多くの労力や時間が必要であり、より効率的な評価法が求められていました。
今回、当社はグローバルで蓄積された多様なお客さまの肌測定データを活用し、光学シミュレーションの一つとして活用されているモンテカルロシミュレーションに、色むら発生に関する数理モデル※2を応用して組み合わせることにより、これまで以上に正確なシミュレーションシステムの開発を目指しました。
※2 数理モデル: 自然科学分野、ヒトの行動予測などの様々な現象を方程式などの数学的な形で表したもの。現象の特性を深く理解するために広く活用されている。

当社独自の光学パラメーター設定と肌画像の再現

皮膚にファンデーションなどを塗布した状態を正確に再現するためには、皮膚内部の光学パラメーターを適切に設定する必要があります。そこで、当社がこれまでの研究活動でグローバルに蓄積した「肌の色調データ」、「肌内部の光拡散性」、「表面反射の測定結果」、「多種多様な粉末処方」などの光学特性を従来のシミュレーションと整合させるとともに、肌本来が持つ色調の不均一性を制御する技術を融合することにより、肌質感をより正確に再現するシミュレーションシステムを構築しました。新たなシステムを用いて、ソバカス、シミを有する肌を再現した画像を示します(図1)。

図1. 今回開発したシミュレーションシステムを用いて再現した肌画像の例(数理モデルを用いて不均一なソバカスやシミを生じさせた)

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均一な仕上がりを再現するために重要な要素の検討

ファンデーションを肌に塗布した際の仕上がりの均一さについて、シミュレーションにより正確に再現するために様々な条件を繰り返し検証しました。その結果、長波長領域の光(赤色光)を積極的に透過させる粉体を利用して肌内部にも光を拡散しやすくしながら、またファンデーションの隠ぺい力を、高すぎず、シミ・そばかすが目立たないようにすることで、均一な仕上がりを実現できる最適な領域を見いだしました(図2)。

図2. ファンデーションの隠ぺい力が高いほど毛穴が目立ってしまう

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自然なツヤを再現するために重要な要素の検討

次に、ファンデーションの仕上がりにおいて、近年特に求められている「自然なツヤ」を実現するための条件の検証を行いました。さまざまな条件を繰り返し検証した結果、前述の通り均一な仕上がりで毛穴が目立たなくなるような付着条件では、皮丘にファンデーションが比較的薄く付着している状態であることが分かり、そのため薄い状態でも塗布時に配向しやすい最適なサイズ・素材の板状粉末を選択した処方を構築することが重要であることが示されました(図3)。

図3. 皮丘表面に塗布された粉末の配向性と光特性の関係(配向性が高い場合、粉末が皮丘に対して平行に配置され、ツヤが増す)

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研究成果のまとめと今後

今回開発したシミュレーションシステムを活用することで製品の設計段階から様々な仕上がりを瞬時に画像に再現し、処方開発に応用することが可能となりました。特に均一な仕上がりや適度なツヤ感をシミュレーションによって自在に再現できることは、効率的な製品開発に繋がる成果であり、特に当社がこれまでに蓄積した世界中の膨大なお客さまデータを活用することにより、世界中の多様なお客さまの嗜好性に合わせた「塗布後の質感」「ツヤ感」を実現する、幅広い製品の設計が実施できるようになります。
本技術は、2021年2月21日に発売する、塗布時の透明感とカバー力を両立しながらも自然なつや感を実現している「マキアージュ ドラマティックパウダリー EX」などの商品設計に活用するとともに、今後当社のメイクアップ製品の開発に幅広く活用していきます。
今後も当社は世界中のお客さまの期待を超える商品をお届けするために、研究開発を推進していきます。

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。