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2020年11月25日

発行元:(株)資生堂

技術・研究開発

資生堂、加齢で増える炎症性因子が表皮幹細胞にダメージを与えることを発見

~皮膚のリンパ管機能に着目した新たなスキンケアアプローチへ~

資生堂は、加齢によって増える炎症性因子(IL-8)が表皮幹細胞にダメージをもたらし、細胞の老化を促進することを発見しました。炎症性因子(IL-8)は、皮膚のリンパ管が回収する老廃物の一種です。
これまで、加齢に伴うリンパ管の減少によって皮膚内の老廃物を回収する機能が低下し、炎症性因子が皮膚に蓄積することは知られていましたが、蓄積した炎症性因子が表皮幹細胞に与える影響は明らかではありませんでした。今回、皮膚の老廃物の一種である炎症性因子(IL-8)が、表皮幹細胞にダメージをもたらし、さらに皮膚のバリア機能にまで影響を与えることを発見しました。
今回の発見は、皮膚の若返りに重要な役割を持つ表皮幹細胞を、リンパ管の機能に着目してケアするという新たなスキンケアアプローチに繋がる研究成果です。
なお、本研究の成果の一部は第45回日本研究皮膚科学会(2020/12/11-12/13)で発表予定です。

【研究の背景】
皮膚のリンパ管は、皮膚の老廃物を回収するという特徴があり、リンパの流れの開始点として表皮の直下に多数存在することがこれまでの当社の研究で分かっています。また、加齢でリンパ管の密度が減少することにより、皮膚に老廃物が蓄積することが様々な研究から分かっていました。
一方で、加齢に伴い、健やかな表皮細胞の源である表皮幹細胞の数も減少することは分かっていましたが、その原因は解明されておらず、皮膚内の老廃物の蓄積が表皮幹細胞にダメージを与えているのかについて、実証されていませんでした(図2)。
そこで、当社は加齢によって表皮幹細胞が減少する原因を解明し、リンパ管が回収する老廃物の一つである炎症性因子が表皮幹細胞へどのような悪影響を与えるのかを検証することで、新たなスキンケアアプローチにつなげることを目的としました。

図1. 本研究の全体像(イメージ)

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図2. 加齢による表皮幹細胞とリンパ管の変化

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炎症性因子により、表皮幹細胞の若返り能力が抑制される

まず、表皮幹細胞の自己複製能の指標となる、コロニー形成能(細胞の若返り能力)を検証しました。培地にIL-8を培養し、形成されたコロニーの数を比較しました。その結果、対称と比較して、IL-8を添加した群において顕著にコロニー形成能が低下していることが分かりました(図3)。
次に、表皮幹細胞のマーカーとなるLrig1遺伝子の発現量を調べたところ、IL-8を加えた場合には遺伝子発現量は顕著に減少しており、表皮幹細胞の幹細胞性が失われていることが示唆されました(図4)。

図3. 炎症性因子IL-8による細胞の若返り能力の抑制

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図4. 表皮幹細胞のLrig1遺伝子発現量

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炎症性因子により、表皮細胞の老化は促進する

IL-8の細胞老化への影響を確認する目的で老化細胞を特異的に染色する実験(βガラクトシダーゼ染色)を実施しました(図5)。この結果、表皮細胞に炎症性因子を添加すると老化細胞※が増加することが分かりました(図6)。
※ 老化細胞; βガラクトシダーゼ染色の陽性細胞。

図5. 炎症性因子による老化細胞(緑)の増加

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図6. 炎症性因子による老化細胞数の増加

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炎症性因子により、皮膚バリア機能は低下する

皮膚モデルに炎症性因子(IL-8)を添加し、5日間培養すると皮膚バリア機能を維持するためのブレオマイシン水解酵素(NMF産生酵素)の発現量が減少することが確認されました。この結果、IL-8により、肌のバリア機能が低下することが示唆されました(図7)。

図7. 炎症性因子IL-8による皮膚バリア機能への影響(IL-8の添加によりブレオマイシン水解酵素(緑色)が減少している)

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まとめと今後

今回の研究から、皮膚の老廃物の一つである炎症性因子が皮膚内に蓄積することによって、表皮細胞は老化し、また表皮のバリア機能も低下することが明らかになりました。
このことから、皮膚内に蓄積する老廃物の回収機能を高めるケアを行うことで、老廃物の蓄積を防ぎ、表皮幹細胞や表皮細胞の機能を正常に保つことができる可能性が示唆されました。
今回の研究成果を元に、皮膚細胞の若返りに重要な役割を持つ表皮幹細胞の機能を正常に保つことで皮膚老化の改善に繋がる新たなアプローチによるスキンケア技術の開発に繋げていきます。

【関連する主なニュースリリース】
・資生堂、世界初・リンパ管の機能低下と「たるみ」の関係を解明(2015年)
https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/archive/00000000001834/1834_a4z87_jp.pdf
・資生堂、リンパ管を立体的に捉える可視化技術を確立(2020年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002997
・資生堂、世界で初めて皮膚のリンパ管の老化メカニズムを解明(2020年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002998

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。