感染症、自然災害、地政学リスクなど、世界がさまざまな課題に直面し不安な状況にある中で、私たち資生堂は本業であるビューティービジネスを通じて何ができるのか、常に考えてきました。
一説によると「コスメティクス(化粧品)」の語源はギリシャ語の「コスモス(宇宙)」で、「調和の取れているもの」という意味から派生したといわれています。人類は、太古の時代から顔や頭に装飾を施し、美しくあることに喜びを見出してきました。化粧品は、食品のような必需品ではないものの、人間の根源的欲求に根差したものであり、人生と健康、そして社会生活に影響を与え、「美」のもつ豊かな価値を提供することができます。化粧という行為は、いわば毎日の生活に根付いた「日常」そのものです。例えば災害時においても、人々が美の力を通じた心の豊かさを求め、化粧を通じて日常や穏やかさ、そして活力を取り戻していく光景を、私たちは被災地支援などを通じて何度も目にしてきました。私たちは、美容にはただ外見を美しくするだけではなく、心の豊かさにまで通じると考え、「美」の持つ可能性・永続性を確信しています。
企業使命を実現すべく、資生堂は2030年に向け「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」を目指します。一人ひとりが尊重され、誰もが活躍できる多様性に富んだ社会、美を心から楽しめる豊かな地球環境への貢献に取り組みます。特筆したいのがダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)についてです。美は個人の価値観に立脚し、差別がなく、多様性によってより豊かになり、人々を結び付ける力があります。これは資生堂のコアバリューでもあり、だからこそ資生堂が、自社のみならず、日本社会の多様性実現に向けた変革を先導していくべきだと考えています。2024年1月時点で国内資生堂グループの女性管理職比率は40%を達成しました。2024年4月時点での取締役における女性比率は45%であり、エグゼクティブオフィサー・各地域CEOで構成されるリーダーシップチームにおける外国籍比率は30%を超えています。このようにさまざまなバックグラウンドや多様な個性を持つ人財が集まっていることは、資生堂の大きな強みであり、新たなキャリアを求める有能なグローバル人財を惹きつけることができます。
また、DE&Iを実現することが、企業の業績向上につながる事例を集積・研究し、その結果を対外発信すべく「資生堂DE&Iラボ」の活動をしています。これらの活動を通じて得られた社内における知見を社会にも広く伝えていきながら、私自身も経団連のダイバーシティー推進委員長や「30% Club Japan」会長として、他の企業や日本社会に積極的に働きかけ、日本社会の変革に貢献していきます。
さらに、サステナブルな社会に向け、環境面の取り組みについても、業界をけん引する責務があります。2023年4月には、プラスチック製容器を収集・再生する循環型プロジェクト「BeauRing(ビューリング)」を立ち上げ、(株)ポーラ・オルビスホールディングスとともに、実証試験を開始しました。このように、「美」を通じたサステナビリティ活動をさらに進化させながら、「世界で最も信頼されるビューティーカンパニー」を目指していきます。