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オンライン版 統合レポート2023

CEO

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MESSAGE

CEOメッセージ

資生堂は、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
(美の力でよりよい世界を)」のもと、
お客さま一人ひとりに合った高付加価値の商品やサービスの提供を目指し、
社会価値と経済価値の創出に取り組んでいます。
企業価値を成長させるすべての源は、「社員(人財)」という理念のもと
人的資本への投資も加速していきます。

取締役 代表執行役 会長 CEO魚谷 雅彦

CEOのサイン

資生堂は、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、お客さま一人ひとりに合った高付加価値の商品やサービスの提供を目指し、社会価値と経済価値の創出に取り組んでいます。
企業価値を成長させるすべての源は、「社員(人財)」という理念のもと人的資本への投資も加速していきます。

2023年業績を重く受け止め、
ステークホルダーからの信頼回復に努める

資生堂の2023年業績は、急激な外部環境変化の影響を受け、期初計画を大幅に下回る厳しい結果となりました。中でも、下期の福島第一原発の処理水海洋放出に端を発した日本製品の買い控えは当社の業績にも大きな影響をもたらしました。一刻も早く再び成長軌道に乗るように全社をあげて改革に取り組んでおり、早期の業績回復を実現することにより、株主含めすべてのステークホルダーの皆さまからの信頼回復に努めます。

中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」は、環境変化に応じてさらに進化させ、持続的かつ長期的な成長を目指して「ブランド」「イノベーション」「人財」の3つの重点領域への投資をより一層強化していきます。

企業使命「BEAUTY INNOVATIONS
FOR A BETTER WORLD」に
込めた想い

感染症、自然災害、地政学リスクなど、世界がさまざまな課題に直面し不安な状況にある中で、私たち資生堂は本業であるビューティービジネスを通じて何ができるのか、常に考えてきました。

一説によると「コスメティクス(化粧品)」の語源はギリシャ語の「コスモス(宇宙)」で、「調和の取れているもの」という意味から派生したといわれています。人類は、太古の時代から顔や頭に装飾を施し、美しくあることに喜びを見出してきました。化粧品は、食品のような必需品ではないものの、人間の根源的欲求に根差したものであり、人生と健康、そして社会生活に影響を与え、「美」のもつ豊かな価値を提供することができます。化粧という行為は、いわば毎日の生活に根付いた「日常」そのものです。例えば災害時においても、人々が美の力を通じた心の豊かさを求め、化粧を通じて日常や穏やかさ、そして活力を取り戻していく光景を、私たちは被災地支援などを通じて何度も目にしてきました。私たちは、美容にはただ外見を美しくするだけではなく、心の豊かさにまで通じると考え、「美」の持つ可能性・永続性を確信しています。

企業使命を実現すべく、資生堂は2030年に向け「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」を目指します。一人ひとりが尊重され、誰もが活躍できる多様性に富んだ社会、美を心から楽しめる豊かな地球環境への貢献に取り組みます。特筆したいのがダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)についてです。美は個人の価値観に立脚し、差別がなく、多様性によってより豊かになり、人々を結び付ける力があります。これは資生堂のコアバリューでもあり、だからこそ資生堂が、自社のみならず、日本社会の多様性実現に向けた変革を先導していくべきだと考えています。2024年1月時点で国内資生堂グループの女性管理職比率は40%を達成しました。2024年4月時点での取締役における女性比率は45%であり、エグゼクティブオフィサー・各地域CEOで構成されるリーダーシップチームにおける外国籍比率は30%を超えています。このようにさまざまなバックグラウンドや多様な個性を持つ人財が集まっていることは、資生堂の大きな強みであり、新たなキャリアを求める有能なグローバル人財を惹きつけることができます。

また、DE&Iを実現することが、企業の業績向上につながる事例を集積・研究し、その結果を対外発信すべく「資生堂DE&Iラボ」の活動をしています。これらの活動を通じて得られた社内における知見を社会にも広く伝えていきながら、私自身も経団連のダイバーシティー推進委員長や「30% Club Japan」会長として、他の企業や日本社会に積極的に働きかけ、日本社会の変革に貢献していきます。

さらに、サステナブルな社会に向け、環境面の取り組みについても、業界をけん引する責務があります。2023年4月には、プラスチック製容器を収集・再生する循環型プロジェクト「BeauRing(ビューリング)」を立ち上げ、(株)ポーラ・オルビスホールディングスとともに、実証試験を開始しました。このように、「美」を通じたサステナビリティ活動をさらに進化させながら、「世界で最も信頼されるビューティーカンパニー」を目指していきます。

Our mission is BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD

スキンビューティーとウェルネスを融合し、
生涯のパートナーを目指す

人は一人ひとりが違うように、「美」にもさまざまなかたちがあり、さまざまな価値観によって成り立っています。この考えのもと、資生堂は2030年ビジョンとして、スキンビューティーとウェルネスを融合し、生涯を通じて自分らしい健康美を実現する「Personal Beauty Wellness Company」を目指すことを掲げました。

このビジョンの達成に向けて中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」においては、コロナ禍の守りから、新たな成長の攻めをテーマとし、積極的な投資を実行してきました。2023年の市場環境変化を踏まえ目標を再設定しましたが、未来の成長を確実なものにするべく、価値創造のドライバーとなる領域には長期視点で投資を継続していきます。重点的に投資を実行するのは、研究開発、品質保証、デジタルマーケティング、イノベーション、そして、すべての原動力となる「人財」です。2016年、「Think Global, Act Local」の考え方のもと、各地域本社に幅広く責任と権限を委譲する、地域とブランドカテゴリーをかけ合わせたマトリクス型グローバル経営体制を構築・開始し、価値創造の現地化を図りました。日本の美の感性は大切にしつつも、米州は化粧と自己表現とのつながりが強く、欧州は香りと美に密接な関係があるように、地域によって求められる価値や体験は異なります。お客さま一人ひとりの美を追求する上では、世界のそれぞれの地域に根差したイノベーションは不可欠です。その成果として、欧州ではプレステージスキンケアブランド「Ulé」を開発・発売、また、2023年は初めて欧州の研究拠点から化粧品技術を競う世界最大の研究発表会「IFSCC」の受賞者が誕生しました。米州ではM&Aチームが、皮膚科学をベースとしたプレステージスキンケアブランド「Dr. Dennis Gross Skincare」の買収を実現しました。

そして、これらのブランドを強化し、イノベーションの加速を実現するために、人財への投資をさらに強化します。私は「PEOPLE FIRST」という考え方を自身の経営哲学として大切にしており、イノベーションを起こし、企業を成長させる主体であるPEOPLE(社員)がすべての原動力であると考えています。社員がよりよい社会を目指して自らの未来と事業を創出し、お客さまや社会に価値をもたらすことで、結果として企業は収益とキャッシュを生み出します。それを株主に還元することで、価値創造の好循環を生み出します。その実現に向け2023年11月、創業の地である銀座に、資生堂の未来を担うリーダー人財の育成を目指して「Shiseido Future University」をオープンしました。私自身が初代学長を務め、美への感性や心の豊かさ、最先端のグローバルビジネス知見を備えた人財開発を積極的に進めます。

Shiseido Future University

事業基盤を抜本的に見直し、変化に合わせて
大胆な選択と集中が実行できる企業へ

未来の成長を確かなものにするためには、足元の厳しい事業環境に向き合い、抜本的に見直す必要があります。

日本市場の回復の遅れ、中国市場の変化、処理水問題の影響などが当期業績に影響を与えましたが、環境は常に変化しています。グローバルな地政学リスクは注視が必要であり、生成AIなどのデジタルの進化は市場のシナリオを変えます。重要なのは、その変化にあわせて自分たちの事業領域やポートフォリオを大胆に見直し、選択と集中を行うことです。

コロナ禍に実行したグローバルな事業構造改革の完遂に続いて、さらなる構造的な変革が必要となります。そのため、2024年に「グローバルトランスフォーメーションコミッティ」を立ち上げ、私が委員長を務めています。

当委員会は、各地域・領域の責任をこれまで以上に明確化し、確実な実行につなげるため、9つのタスクチームで構成されています。縮小均衡に陥いることのないように、重点領域への投資を継続しながらも、全社的なコスト削減をさらに推し進め、持続的な安定成長を目指します。事業譲渡などを経て収益性が向上した米州・欧州事業は、さらなるブランド力の強化と地域研究拠点の研究開発力向上、M&Aなどを通じ、成長を加速します。

そして、世界で競争するグローバル企業として必要な収益水準である「コア営業利益率15%」を目指して成長と投資サイクルを回していきたいと思います。

持続的な収益性向上と
中長期的な企業価値向上に向けて

こうした取り組みを迅速かつ着実に実行するため、ガバナンス体制を変更し、指名委員会等設置会社に移行しました。資生堂はこれまで経営の監督と執行を分離するガバナンス改革を進め、モニタリングボード型を指向した取締役会運営など、透明性・公正性を確保しながら、戦略策定とその迅速な執行を行うためコーポレートガバナンス進化に向けた取り組みを行ってきました。今回の機関設計の変更はさらなるステージ進化を目的としています。取締役会は長期のビジョン・戦略の決定とそれらの執行の監督に集中し、執行側は大幅な権限委譲のもとスピードと柔軟性を持って意思決定および業務執行を担います。経営環境の不確実性が増す中で、戦略の実効性が高まり、株主・投資家の皆さまにとっても、より透明で分かりやすい経営を行えるものと考えています。

私は10年前、資生堂の社長に就任した際に、2つの重要な経営方針を自らの「覚悟」として掲げました。それは、「日本の宝」ともいわれるこの資生堂という素晴らしい会社を「真のグローバルカンパニー」としてさらに成長・発展させ、世界での存在感を高めること、また、資生堂が「これから100年先にも輝く資生堂」であるべく、長期視点でその基盤を強くすることです。

今年は、CEOとしての任期の最終年度となります。後継者である藤原社長 COOと二人三脚で取り組み、引き続き経営戦略の実現と成長の回復を目指していきます。また、日本国内だけでなく世界中の店頭・営業拠点・研究所・工場・オフィスなどの現場に足を運び、頑張っている多くの社員に直接会い、語りかけ、意見を聴き、鼓舞し、資生堂の未来をつくる人財育成に多くの時間を割いていきたいと考えています。

そして、これらの取り組みを通じ、研究開発の力、ブランドの力、人財の力という資生堂の持つ本来の「底力」を大いに発揮することにより、必ず成長を実現し、株主・投資家の皆さまのご期待に応えていきます。これからの資生堂に、皆さまのご支援をお願いいたします。

2024年4月

2024年2月 米州を訪問
2024年2月 米州を訪問
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