スケートボード選手 四十住さくら × 女優 吉岡 里帆
とにかく楽しむこと
小学6年生でスケートボードをはじめて、たった5年で世界選手権を制覇されてるんですよね。才能が開花するまでの時間が短くてびっくりします。はじめた時から、自分に向いてるなという実感はありましたか?
最初はただ楽しくて、夢中になってどんどんやってたら、できることが増えていった感じです。それでもっとやりたいなと思うようになって。
本当にピュアな気持ちだったんですね。
だから練習していても、あっという間に時間が経ちます。今までずっとそうです。
スケートボードのどういうところが魅力ですか?
大技ができても、また新しい技が次々に出てくるところです。自分で考えたり作ったりもするから、技には本当に終わりがなくて。
さくらさんの得意な技は何ですか?
バックサイドノーズブラント180アウトです。
どんな技ですか、それは?
右利きのスタンスで入って、180度回転した後、アール(コースの湾曲した部分)の縁のところにボードの先だけ引っかけて、そこから後ろ向きになって降りる技です。
すごすぎて、聞いただけだと、そんな動きが本当に可能のかなって思っちゃいますね。
入る時は右利きの技なんですけど、最後は左利きの技になって後ろ向きで降りるから、そこで頭や背中から転ぶ人も多いです。ほとんど誰もやらない技だと思います。
危険な技なんですね。スケートボードはオリジナリティーが重視される競技だと思いますが、さくらさんのオリジナリティーはどこにあると思いますか?
私は高いジャンプよりも、アールの縁のパイプのところにボードを掛ける、テクニカルなトリックが得意です。ほかの選手はジャンプが得意で、テクニカルな部分が苦手な人が多いので、私はそこを見せていきたいです。
逆にそこがさくらさんの強みになってるということですね。大会でいい成績を残すために大事なポイントはどんなところですか?
毎日、時間の無駄なく練習をすることと、とにかく楽しむこと。あと、あまり結果を気にしないこと。
それ、すごく大事なことなんでしょうね。結果に一喜一憂しないって。
結果を気にしちゃうと緊張するし、自分のパフォーマンスができないから、結果はあまり気にしないです。
さくらさんは本番に強いという記事を読みましたが、秘訣はそういったところにあるのかもしれませんね。
はい、結果を気にせず、練習したものを出し切ることだけを考えてます。練習ではうまくても、本番で緊張して失敗する人が多いから。
さくらさんからすると「何でだろう?」みたいな感じですか?
自分が好きでやってるスポーツなのに、何でそんなに緊張するんだろうって(笑)。
もう天才が言うセリフ(笑)!
好きになって、乗り続ける
スケートボードをはじめてから、これまでで一番楽しかった瞬間と、一番悔しかった瞬間を教えてください。
一番楽しかった瞬間は、初めて世界一になった時かなあ。その大会はブラジルで開催されたんですけど、「お金がかかるからこれが最後だよ」って親に言われていた大会なんです。でもそこで優勝できて、賞金ももらえたから、次の大会にも出ることができて。それがあって今があるから、その大会が一番だと思います。悔しかったことはあまり……あまりというか、ないですね(笑)。
本当に「楽しい」の一色なんですね。じゃあうまく行かなくても、悔しいっていう感じではなくて、もっと滑りたいみたいな。
そうですね。悔しいと思ったことは全然ないし、自分が好きでやってるから、イヤになることもないです。
素晴らしい! こんなに明確に好きなものがあるって、とても幸せなことですよね。もしスケートボードに出会ってなかったら、やってみたかったスポーツはありますか?
いえ、特に。スポーツはあまり好きじゃなかったので。
え! そうなんですか?
運動神経も全然よくなかったです。
意外です。だって運動神経は絶対にいいはずですよね。
本当に悪いです。体が柔らかいわけでもないし、走るのもあまり好きじゃないし(笑)。
えー! それを聞くと余計に不思議なんですけど、スケートボードをうまく滑るための条件って何なんでしょうね。楽しむ以外のことで。
条件? 条件はずっと乗ることかなあ。
競技そのものを心から好きになって、どっぷりそれに浸かるっていうことですね。
好きになって、楽しんで、乗り続ける。とりあえず普通に乗れるようになることが大事だと思います。私もまずは板の真ん中に乗れるようにがんばりました。あとは転び方をマスターしてからやったほうがいいと思います。
変な転び方をすると怪我にもつながりますし、滑るのが怖くなりますもんね。でもスポーツがあまり好きじゃないっていうのは意外です。それを聞いて、私にもできるかもと思う人が増えるかもしれません。
本当に誰でもできると思います。
いやいや、そんなことはないでしょうけど(笑)。
ここまで好きになれるかどうかはわからないですけどね(笑)。やっぱり技ができないとイヤだし、怖さもあるから。それをがんばって乗り越えて、成果が出たうれしさを味わったら、もうやめられないです。
同じ夢を持つ子も応援したい
海外の大会に行って、いろいろな選手と出会うなかで、海外と日本の違いをどんなところに感じますか?
海外の選手は身近な場所にパークがあるから、すごくいい環境だなと思います。日本はまだパークが少ないし、海外と違ってパーク代がかかるから、環境はあまりよくないと思うけど、そのぶん練習熱心で真面目です。
日本人は何においてもそう言われますよね。
でも選手もパークもまだまだ少ないから、もっと増やして、みんなで盛り上げられたらいいなって思います。
今後こういう滑りを見せていきたいというビジョンはありますか?
今まで通り自分のスタイルに、みんながやってるようなトリックを少し加えて、ノーミスで滑れたらいいなと思います。これまでずっとノーミスで来ているので、みんなにいい演技を見てもらいたいです。
競技を続けていって、最終的にめざしたいのはどんな目標ですか?
今も練習場に行くと、ちっちゃい子が寄ってきて「教えて!」って言ってくれるんですけど、そうやって自分と同じように夢を持つ子を応援していきたいなって思います。
教えるのが上手そうですよね、さくらさん。
スケートボードをやる前は、保育園の先生になりたいと思っていたくらい子どもが好きなんです(笑)。今もめっちゃちっちゃい子ばかり、いつも周りにいて。小学生の子たちとか。
じゃあぴったり! さくらさんが教えてくれたら、怖がらずに滑れそうです。
やっぱり怖い時は泣いちゃうので、「そんな時こそ楽しんで!」ってアドバイスするんですけど、ちっちゃい子はどうしてもわからなくて。
本当にしっかりしてる! 周りの小さい子たちからは何て呼ばれてますか?
さくらちゃんです。「さくらちゃん、あの技見せて!」とか言われて(笑)。そういえば最近、教えてる子が日本のキッズの大会で優勝したんですよ。
教える才能まで開花して、先生の素質もありますね。
もう、自分のことよりうれしかったです(笑)。
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