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いい顔に迫る資生堂クロストーク「ONE ON ONE」

女子スキージャンプ 髙梨 沙羅 × 女優 吉岡 里帆

女子スキージャンプ 髙梨 沙羅 × 女優 吉岡 里帆

ホッとした100回目の表彰台

吉岡

2020年3月のW杯で歴代最多の57勝目を挙げられて、100回目の表彰台に立たれたんですよね。おめでとうございます!

髙梨

ありがとうございます(笑)。

吉岡

いかがでしたか、100回目の表彰台に立った時の思いは?

髙梨

100回目に到達するまで、勢いのある時期からするとそうとう時間がかかったんですけど、それでも諦めずに自分と向き合ってきた、そのご褒美だったのかなと思います。

吉岡

15歳でW杯初優勝を飾られた時と感覚に変化がありますか?

髙梨

前は自分自身の楽しさしかなかったと思います。でもその後いろんな経験をして、支えてくださる方々の応援のおかげで今の自分があるので、今は感謝の思いを伝えるために結果を残したいという気持ちと、楽しみながら飛んでいる気持ちと、半々の気持ちかもしれません。どんなに結果を出しても、応援してくださる方々に恩返しできたとは思いませんけど、1つの区切りである100回目の表彰台に到達できたことでホッとしました。

吉岡

これまでの競技生活で本当に楽しかった瞬間、本当に悔しかった瞬間の話をぜひ教えてください。

髙梨

悔しい瞬間は、結果を出せなくても悔しいという気持ちが湧かないような時です。

吉岡

それはアスリートならではのメンタルなんでしょうね。

髙梨

スタート台に立つ時、無心になれる状態まで準備をするのがベストなんですけど、それができないとどんなに悪い順位でも悔しいと感じられなかったりします。準備できなかったことがわかるから、この結果でも当たり前だなと思ってしまって、なんか悔しくないというか。

吉岡

なるほど…。では、反対に楽しかったのはどんな時ですか?

髙梨

14歳の時、初めて大人に交じって飛ぶ大倉山の大会に出て、141メートルというそれまで飛んだことのない距離を飛んだんですね。滑り降りると、観客の方々がすごく盛り上がっていて、これからもこういう場面を見たいなと思えた時がいちばん楽しかったです。

女子スキージャンプ 髙梨沙羅 × 女優 吉岡 里帆

想像力が試される競技

吉岡

ジャンプする瞬間のその気持ちって、私には一生味わえないと思ってるんです。たぶん怖くて飛べないです(笑)。選手のみなさんは気持ちいいって言いますが、どういう感覚なんですか?

髙梨

やっぱり普段味わえないあの浮力感がやめられなくて、ずっと続けているような感じです。風によって端に寄せられたり、飛ばされたりする恐怖心もありますけど、それが楽しいなと思います。

吉岡

ただジャンプするだけではなくて、いろんな計算をしたり、予測を立てたりする必要があるんですよね。髙梨さんはその想像力に長けていると伺ったんですが。

髙梨

ジャンプは用具の進化が著しいスポーツで、毎年何かしら変化があるんですね。それに対応して、どうすれば以前と同じように飛べるのかを考える想像力は、他の競技よりも試される部分なのかもしれません。映像を見ながら考えて、それを体で体現するというか、頭と体をリンクさせないといけないので。

吉岡

そういったアイディアが浮かぶのは、事前に映像を見て研究する時だけでなく、ジャンプ台に立った時も?

髙梨

そうですね。ジャンプ台に立った時や、飛んだ後にリフトまで上がる時、次のジャンプはこうしたらよくなるかもしれないなって。たとえば手の位置とかお尻の高さとか、感覚の話ではあるんですけど、そういったところに目を向けられるようにならないとジャンプを修正していくのは難しいです。

吉岡

微調整の世界ですね。

髙梨

時速90キロくらいの速さでミリ単位の調整をしていかなきゃいけないので、その感覚の鋭さは大事です。

吉岡

加えてアスリートの方は成長するにつれて体格が変わったり、体重が変化したりすることにも向き合っていかないといけないですよね。

髙梨

私の場合、中学生のころがいちばん体にキレがあると言われていたんですけど、大人になるにつれて体が徐々に重くなっていって、そのぶんパワーがついてきたので、その辺をうまく調整しながら普段の陸地でのトレーニングを組み直していきました。

吉岡

今取り組まれてるトレーニング方法って、たとえばどういうものですか?

髙梨

小さいころは体のキレだけで飛んでいたので、今は感覚をより敏感にするために、細いロープの上に乗ってバランスを取ったり、不安定なところでジャンプしたり、そういう足の裏の感覚を研ぎ澄ますトレーニングが多いかもしれないです。

吉岡

そういうトレーニングもされるんですね。全然知らなかったです。

髙梨

スキージャンプはパワー系のトレーニングをやってるように思われがちですけど、止まってる瞬間がない、一連の流れの競技なので、バランスを意識しながら、しなやかに長く力を伝わせていくようなトレーニングをよくしたりします。

吉岡

とても繊細な競技なんですね。

ジャンプをメジャーにしたい

吉岡

オフの話も伺いたいんですが、オフの楽しみは何ですか?

髙梨

私は家にいるのが大好きなんですね。だからベランダで本を読んだりとか、カメラをいじったりとかして、それで1日が終わります(笑)。最近は写真集を見ながら、これはどういう場所で、どういう光の入れ方で撮ってるんだろうって勉強しています。

吉岡

すごい! 本格的ですね。大会期間中もジャンプ台を撮ったりしますか?

髙梨

練習日や自分の試合が終わってから撮ることはあります。写真を撮る時はカメラマンになりきって撮ります。自称カメラマンみたいな。

吉岡

可愛い(笑)。では、選手としては次のステップでどういうところをめざしますか?

髙梨

これまでいろんな経験をさせていただいて、感じてきたことを伝えていきたいと思ってるんですけど、自分がしっかり結果を出してからでないと誰も聞く耳を持たないので、選手としての役目をしっかり果たしてから、伝えたいことを伝えられるようにがんばっていきたいなと思います。

吉岡

いや、結果はもう十分すぎるほど出されてると思いますよ。ジャンプの未来を真剣に考えられているところも素敵だと思うんですが、今後もっとこうしていきたいと思うのはどんなことですか?

髙梨

スキージャンプをメジャーにしていきたいという夢があるので、もっと注目してもらえるように、どうやってアピールしていけばいいかということを常に考えています。ジャンプをはじめた子どもたちにも、今後の材料になるようなアドバイスをしたりして、そこから未来のジャンパーが生まれたらなと思っていて。でもまだ足りない気がするんですね。だからさらに何が必要かを、吉岡さんにお聞きできたら嬉しいです。

吉岡

私はエンターテイメントの世界にいるので、楽しいとか気になるとか、人の心を動かすような活動をしたいと思っていて、そのためにはまず自分自身の心を強く持たなきゃいけないなと思っています。やっぱりエネルギーを届けたいから、エネルギーを吸収する力と放出する力を常に持ち続けないといけないなと。今はそれが私の目標です。答えになってないかもしれないですけど。

髙梨

いえ、すごいヒントをいただきました。人に何かを伝える時、楽しいとかやってみたいとか思ってもらえるように発信していかないと興味を持ってもらえないのかなと、今お話を聞いていて思ったので、これからはもっといろんなことに挑戦してみます。

吉岡

期待しています!

資生堂クロストーク「ONE ON ONE」