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いい顔に迫る資生堂クロストーク「ONE ON ONE」

柔道選手 阿部 詩 × 女優 吉岡 里帆

柔道選手 阿部 詩 × 女優 吉岡 里帆

【吉岡里帆さん×アスリートのシリーズ対談】
吉岡里帆さんが若きアスリートの「いい顔」に迫る連載企画。今号は、柔道の阿部詩選手。王者の風格漂う凛とした表情は必見です!

兄がいるから強くなれる

吉岡

初めて国際大会で優勝されたのは2017年のグランプリ・デュッセルドルフですよね。史上最年少の16歳225日で優勝を飾った時はどんなお気持ちでしたか?

阿部

その大会は出場できたことが不思議だったくらいで、1回勝てば十分だなと思って臨んでいたんです。でもその場に立つと、これは勝てるんじゃないかという自信が湧いてきて、もともと何のプレッシャーもない立場だったので、挑戦者の気持ちだけで挑みました。

吉岡

それ以来、国際大会で次々に優勝されてきましたけど、まだ弱冠19歳なんですよね? 19歳で世界と戦う強さを持つ感覚って、どんな感じなんだろうなって。なかなか想像できない境地だと思うので。

阿部

私にもそんなにわからないんですけど、昔から年上の選手と練習するのが楽しくて、高校の先生にも「年齢は関係ない」と言われていたので、年上の方でもあまり怖くなく戦えます。強い選手に勝つのもすごく楽しくて、負けず嫌いでもありますし、自分より上の選手に勝つことに充実感を感じます。そういうところに今の強さがあるのかなと。

吉岡

なるほど、頼もしいです! 自分が挑戦者だった時と、こうやって挑戦を受ける側になってきた今と、感覚はやっぱり違いますか?

阿部

全然違います。前は負けて失うものが自分になかったので、成績を残してきた方に勝つのがすごく楽しかったんですけど、私は今追われる立場なので、試合に対する楽しさというのはまったくなくて、恐怖心だったり、不安だったりが大きくなってきたかなとは思います。

吉岡

5歳の時に柔道をはじめられて、それからずっとすぐそばでお兄さんの阿部一二三選手の姿も見てこられたわけですよね。

阿部

本当にすごいなって。たくさん練習をして、トレーニングもしているので、ずっと尊敬してきましたし、今も尊敬しています。

吉岡

そうやって尊敬できて強い人がお兄さんだったということは、詩さんご自身の強さにもつながっていると思いますか?

阿部

はい、比べられてイヤだった時もあるんですけど、本当に強いお兄ちゃんがいるから、私も強くなることができた。常に引っ張ってくれる存在だったので、お兄ちゃんが強くてよかったなと思います。

吉岡

78キロ超級の曽根輝選手は同い年の親友なんですよね。気の置けない友人が同じ競技にいるというのは、競技人生においてどういう意味があるのでしょう?

阿部

自分にとって、ひとりしかいない存在だと思います。中学生のころから合宿や試合の時にはいっしょで、お互いに励まし合ったり、どっちかが負けたら少し気遣ったりしてきて、そういう存在がいて今の自分があるような気がします。どこかライバル視するところもあるんですけど、お互いに刺激し合って、高め合えているので。

吉岡

すごく素敵な関係ですね!

柔道選手 阿部 詩 × 女優 吉岡 里帆

父の声援が試合のスイッチ

吉岡

大学に進学して、兵庫から東京へ出て来られたんですよね。どうですか、東京での生活は。

阿部

兵庫にいた時は早く東京に出て練習をしたいと思っていたんです。でも最初は本当に慣れなくて、環境の変化がこれほどストレスになるんだなって。生まれてからずっと兵庫だったので、初めて環境の変化を体験しました。

吉岡

自立して、ひとりで戦っていく時期なのかもしれませんね。これまでサポートしてきてくれたご家族のみなさんと離れてみて、あらためて思うことはありますか?

阿部

ずっと当たり前だったことが当たり前ではなくなった時のしんどさを実感したので、すごく感謝の気持ちが芽生えてきました。こうやって大人になっていくのかなと(笑)。

吉岡

そうですよね(笑)。ご家族のみなさんは試合を毎回観に来られるんですか?

阿部

はい、そうです。

吉岡

どんな声援なんですか、ご家族の声援は。

阿部

お父さんの声がすごくデカいので、近くでお父さんの声を聞きながら試合をしているような感覚です。私にとって、試合のスイッチが入るのはいつもお父さんの声なんですね。どんなに周りがうるさくても、お父さんの声だけは聞こえてくるので、そうすると試合に集中できます。その瞬間に何かが燃えるというか。

吉岡

お父さまの存在が大きいんですね。昔からそうでしたか?

阿部

お父さんは練習中でも何か叫ぶので、昔は本当にイヤでした(笑)。でも今は、それもまあよかったかなと。

吉岡

あはは。学業との両立は大変だと思いますけど、普段はどれくらい練習されるんですか?

阿部

朝と夕方、合わせて3時間半くらいです。

吉岡

全体の練習が終わった後も、ひとりで残って練習をされてるという話をうかがいました。気になるところはやっぱり最後まで確認したい派なんですね。

阿部

そうですね、それをやらずに練習を終わらせてしまうと、次の練習までずっとムズムズしているので。

吉岡

そういった丁寧さというか、細かさも強さの秘訣なのかもしれませんね。

阿部

まだまだなんですけど、最後に競った時の力の差はそういう丁寧なところ、細かく積み上げた部分に出てくると思うので、そこはしっかりやるようにしています。

一本勝ちを追求していく

吉岡

試合では常に一本を取りに行く戦い方が印象的ですけど、一本を取って勝つのはポリシーでもありますか?

阿部

柔道を知らない人が観ても、柔道って素晴らしいと思ってもらえる戦い方をめざしているので、もちろん勝ちにこだわる試合もあるんですけど、豪快に投げることにはこだわっています。

吉岡

やっぱりそうだったんですね。試合を観ていると、詩さんは本当に強い選手だなと感じます。反対に自分の弱さはどういうところだと思いますか?

阿部

たくさんあるんですけど、我慢強さが必要かなと今は思います。強くなるにつれて、マークされたり、自分の思うように行かないことが多くなってきたりしているので、そこでの我慢強さを今から身につけていかないとなって。

吉岡

詩さんが柔道は楽しいなと思う瞬間ってどんな時ですか?

阿部

今は試合で勝った時くらいしか、楽しいなと思うことはなくなってきたなと思います。まだ弱かった時はめざすべき選手がたくさんいて、練習でも、あ、こんなことができるようになったなとか、楽しいと思う瞬間がいっぱいあったんですけど、今はたくさんの選手に追われているというか。投げられたら、「投げたぞ!」みたいな相手の選手の気迫を感じるので、楽しいと思うのは試合に勝った時だけです。

吉岡

19歳にして早くも王者の孤独のようなものを感じているんですね。でも追われる辛さを知っているがゆえに、強くなれるんだと思います。心に残る試合をしたいとおっしゃっている記事を読みましたが、それはどんな試合だと思いますか?

阿部

投げて、一本で勝つ試合が自分らしい、心に残る試合かなと思っているので、それは自分が引退する時までしっかり追求していきたいです。

吉岡

詩さんから見て、カッコいい選手とはどんな選手なのか聞いてみたいです。

阿部

自分を貫いている選手は本当に尊敬します。すごくカッコいいなって。私は人の意見に振り回されてしまうこともあるので。

吉岡

本当ですか? 意外ですね。

阿部

柔道の面ではあまりないですけど、「これ美味しいよ」って言われると、それをすぐ買ってしまうタイプなので。

吉岡

めちゃめちゃ可愛いです!(笑)

阿部

だから自分を貫ける選手になりたいです。

吉岡

もう十分に自分を持っていて、カッコいいと思いますよ!

資生堂クロストーク「ONE ON ONE」