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2021年07月29日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂、高精度な触感評価を可能とする2種類のデバイスを独自に開発

~心と肌に響く化粧の研究~

資生堂は、東京都立大学との共同研究により、2種類の触感評価デバイス「振動摩擦センサー」、「接触力センサー(※1)」を開発しました。従来はお客さま自身が体験する触り心地を第三者が理解することは難しいとされていましたが、今回のセンサーはお客さまが肌状態を確認する手の動作に着目し、さらに高精度に触感を数値化できるため、お客さまが手で感じている触感を客観的に数値で把握できます。「振動摩擦センサー」は、接触子(※2)が肌の上で滑って振動と摩擦を測定し、「しっとり感」や「なめらかさ」などの評価が可能で、「接触力センサー」は接触子で肌を押して接触力を測定し、「柔らかさ」や「弾力感」などの評価が可能です。また、この2種類のセンサーの測定値は専門評価者の感覚評価スコアと相関が認められることも確認できました。今後、世界のお客さまの文化や習慣の違いによる感性の特性を明らかにし、当社に蓄積された世界のお客さまの触動作知見に基づいて2種類の触感センサーを最適に使い分けて商品開発やサービスに活かすことで、世界中のお客さまにより満足し、心地よく使っていただく化粧品をお届けすることが可能となります。当社は今後も感性・心理研究を深め、製品の効果・効能の追究だけでなく、お客さまの心と肌に響いて満足いただける新たな価値の開発を行っていきます。
※1 接触力: 物体と物体が接触することで生じる力。
※2 接触子: センサーにおいて測定対象と接触・挿入する部品。ブローブと呼ばれることもある。

研究の背景

お客さまは化粧品を使う際に、素肌の状態や化粧塗布後の肌状態を、見て触れて感じています。特にお客さま自身が手で触れて感じた肌の触感に対して第三者がその触感を正確に理解することは非常に難しく、世界中のお客さまに真に満足いただく商品を開発するための課題でもあると捉えています。そこで、当社はお客さま自身が感じている触感を高精度に知るための技術開発を行っています。今回、日本人と米国人が肌の触感を確認する動作について検証した結果、人は肌の触感の種類ごとに手を肌の上で滑らせたり、押したりするなど、動作を変えて確認していること、また日本人と米国人との触感確認動作には違いが認められることが分かりました(※3)。 そこで、それぞれの動作で手が感じている物性を高精度で測定できる肌の触感評価専用の2種類のセンサーを開発することとしました。
※3 Naomi Arakawa, et al., International Journal of Cosmetic Science, 2021; 43, 78-87, 慶應義塾大学との共同研究成果

図1. 肌の触感を確認している様子

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「振動摩擦センサー」の開発

お客さまが手で肌を滑らせて感じている「しっとり感」や「なめらかさ」を高精度に把握し、数値化を可能とする「振動摩擦センサー」を独自開発しました。従来の触感センサーでは測定者自身が接触子を肌の上を滑らせて測定する必要があり、測定動作のばらつきによって安定な評価を行うことが困難でした。今回開発したセンサーは、モーターの回転を利用して肌の上を滑ることができ、頬などの狭い領域でも安定して測定可能です(図2)。指紋を参考にした表面形状を接触子に付与することで、手を肌に滑らせた時に感じる振動と摩擦を同時に計測することが可能です。また、今回使用感の異なる化粧水を肌に塗布し、それぞれ専門評価者の感覚評価スコアと振動摩擦センサーの測定値の比較を行ったところ、「しっとり感」の感覚評価スコアが振動の値と高い相関があることがわかりました(図3)。なお、本研究の成果の一部は「第31回国際化粧品技術者会連盟横浜大会2020」(The 31th IFSCC Congress 2020 Yokohama 2020/10/21-30)で発表しました。

図2. 独自開発した振動摩擦センサー

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図3. 「しっとり感」の感覚評価スコアは振動の値に高い相関がある

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「接触力センサー」の開発

お客さまが手で肌を押すことで感じる「柔らかさ」や「弾力感」を高精度に把握し、数値化を可能とする「接触力センサー」を独自開発しました。従来の計測技術では、一人一人異なる肌の柔らかさの違いを高精度に測り分けることが難しく、肌を押した時の触感に相関する特徴量(※4)に関する知見が不足していました。今回開発した接触力センサーは、接触子が手のように肌を押し込んだ時の接触力を、搭載された高精度な力センサーにより測定します(図4)。また、押し込んでいる間の測定波形を分析することで、肌の個人差を示す特徴量の算出が可能となりました。その特徴量を解析したところ、接触子が肌を押した後の戻り率(圧縮回復性)が弾力感と相関することが分かりました。圧縮回復性は、年齢との相関も確認されており、年齢による肌柔軟感の変化も推定できることがわかりました(図5)。なお、本研究の成果の一部は、「第15回日本感性工学会春季大会」(2020/3/5-6)で発表し、優秀発表賞を受賞するとともに、「第86回SCCJ研究討論会」(2021/7/15)で発表しました。
※4 分析すべきデータや対象物の特徴・特性を、定量的に表した数値

図4. 接触力センサー(左)と測定風景(右)

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図5. 圧縮回復性と「弾力感」および「年齢」との関係

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今後について

今回は、お客さまが感じている肌の触感を第三者が高精度に把握できる2種類の触感センサーを開発しました。これらのセンサーを活用することにより、今後はお客さまが感じている肌の触感の違いをより高精度に評価することができます。また、世界のお客さまの化粧行動調査の範囲を拡大することによって、より多くの国や地域のお客さまに、真に満足していただける商品を届けることが可能となります。今回の触感センサーを当社のさまざまな商品の開発や評価、サービスに活用するとともに、感性・心理研究をさらに深めることで、製品の効果・効能の追究だけでなく、お客さまの心と肌に響いて満足いただける新たな価値の開発を行っていきます。

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。