2018年11月21日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、肌内部で起きる「老化の伝播」を解明
-老化の伝播をとめる幹細胞が、皮脂腺周囲に豊富に存在することを発見-
資生堂は国際医療福祉大学医学部形成外科学 松﨑恭一主任教授と生理学研究所との共同研究により、加齢に伴い肌内部に形成される老化した細胞が、周囲の細胞の機能を低下させ、肌の加齢変化を引き起こすことを解明しました。またこの“老化の伝播”を真皮の幹細胞が抑制すること、加齢で著しく減少するこの幹細胞が、高齢者の肌でも皮脂腺周囲に豊富に存在することを発見しました。さらにアイリス抽出液が、幹細胞を誘引することを見出しました。幹細胞を活用することで、肌の若返りが期待できる本研究成果を、今後の製品開発へ応用していきます。
本研究成果の一部は化粧品技術者の世界大会(IFSCC ミュンヘン大会2018) ※1 で口頭発表し、最優秀賞を受賞しました。
※1 IFSCC (The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists): 世界中の化粧品技術者が集い、より高機能で安全な化粧品技術の開発へ向けて取り組む国際機関。詳細については参考資料に記載あり。
肌内部で老化が伝播することを解明
加齢により発生するシワやたるみは、多くの女性の悩みです。こうした顔の形状の変化は、肌の真皮層※2の状態が加齢で悪化することが大きな要因ですが、その詳細なメカニズムは十分にわかっていませんでした。
今回の共同研究で電子顕微鏡解析技術を新たに開発し、細胞の微細な形状までも観察することに成功しました。この技術で真皮を解析したところ、若齢者の真皮の細胞は多数の突起を伸ばしているのに対し、高齢者の真皮中には、突起を失い、形状の変化した細胞(以下、老化細胞)が観察されました(図1)。細胞を用いた実験の結果、老化細胞は因子を分泌することで(以下、老化因子)、周囲の細胞に悪影響を及ぼすことが確認されました。こうした “老化の伝播”により、真皮の加齢変化が起きることが明らかになりました(図2)。
※2 真皮層: 皮膚は外側から、表皮層、真皮層、皮下脂肪層で構成される。真皮層は、コラーゲンやヒアルロン酸などを豊富に含み、皮膚にハリや弾力を与え、顔の形状の維持に機能する。
老化の伝播をとめる幹細胞の“リザーバー”の発見
老化の伝播をとめる方法を探索したところ、真皮の幹細胞が、老化細胞の老化因子の産生を抑制することを見出しました。真皮の幹細胞は、加齢に伴い著しく減少しますが、高齢者の真皮でも皮脂腺※3の周囲には、真皮の幹細胞(幹細胞マーカー陽性の細胞)が豊富に存在しました(図3)。このように皮脂腺は、その周囲に幹細胞を蓄える”リザーバー”として機能することが明らかになりました。
※3 皮脂腺: 皮脂を分泌する器官。真皮層に存在する。顔面の真皮では皮脂腺が豊富に存在する。
アイリス抽出液の幹細胞への働き
この一連の発見から、老化の進んだ真皮中に、リザーバーから幹細胞を誘引することで、老化の伝播をとめ、真皮を良好な状態にすることが可能と考えられます(図4)。さらに幹細胞を用いた研究を進め、アイリス(図5)の抽出液に幹細胞を誘引する働きを見出しました。
【参考資料】化粧品技術者の世界大会(IFSCC)で最優秀賞を受賞
今回の研究成果の一部は、第30回IFSCCミュンヘン大会で口頭発表し、基礎部門で最優秀賞を受賞しました(図6)。IFSCCは世界最大の化粧品技術者会で、74の国・地域が加盟し、16,000名を超える技術者で構成されています。このIFSCCが2年に一度開催するIFSCC本大会で与えられる賞が、化粧品業界で最も権威のある賞と言われています。このように世界の化粧品業界で高い評価を受けた本研究成果を、製品開発へ応用していきます。
<関連リリースURL>
https://www.shiseidogroup.jp/news/detail.html?n=00000000002530
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