2018年10月25日
発行元:(株)資生堂
文化・スポーツ
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平成を彩ったビューティートレンド変遷
~トレンド変化の加速と多様化の時代へ~
平成にかわる新元号を定める改元が2019年に行われます。資生堂は平成という時代を長年のトレンド研究の成果を活かして美容の視点で切り取り、30年間を彩った女性のビューティートレンドの変遷を1名のモデルで再現しました。
資生堂は、ヘアメイクのトレンドを調査・分析・予測する「ビューティートレンド研究」を1987年から行っています。その一環として、東京・上海・ソウル・ニューヨーク・パリの5都市でメイクアップとヘアスタイルに関する街頭調査を年に2回(春夏季、秋冬季)実施しています。今回は、当研究チームのリーダーである、資生堂トップヘアメイクアップアーティスト 鈴木節子が、長年の街頭調査から得た知見をもとに平成の時代背景や女性意識とともにビューティートレンドについて解説します。
【1分でわかる】平成ビューティートレンド七変化
はじめに
バブル景気に沸き、女性らしさをアピールするファッション・ヘアメイクが全盛だった頃に、平成は始まります。男女雇用機会均等法(1985年)施行後の世代として、美容、ファッション、フィットネス、資格取得など自分磨きといった自己投資に、お金と時間を費やす女性たちが増加。流行の中心は女子大生、女子高生へ次第にシフトし、いわゆる「ギャル文化」の台頭など若年層が流行を牽引するようになります。この「ギャル文化」や、後にブームとなる「KAWAII文化」は世界からも注目され、まさに平成はジャパンカルチャーの時代とも言えます。
ビューティートレンドに関しても日本独自の文化や美容意識が次々と生まれ、それまで流行は10年単位で変化していましたが、平成に入ってからは4、5年単位で移り変わるようになりました。また平成生まれの世代が、自分たちが生まれた頃に流行した過去の文化を、アップデートしながら柔軟に取り入れて楽しむ傾向があります。つまり、彼女ら独自の価値観・要素を加えながら新たな潮流を作り出しつつも、トレンドが一巡していることがわかります。
平成元年~5年/平成6~10年/平成11~15年
■平成元年~5年(1989~1993年)<昭和名残のバブルゴージャス>
80年代初頭からのキャリア志向の末に、バブルの絶頂期を迎えた平成元年。この頃日本の女性たちは、強さと女らしさをうまく使い分けるようになります。海外旅行などの贅沢を謳歌し、本物志向・高級志向が高まり「お嬢様ブーム」となりました。
「ボディコン(ボディコンシャス)」で女性らしさをアピールするファッションが大人気となり、一方で「渋カジ」と呼ばれた「紺ブレ(金ボタン付きの紺色ブレザー)」にジーンズなどトラッドで上品なカジュアルスタイルや、コンサバティブなファッションも流行しました。
この頃のメイクの特徴は、真っ赤や青味のローズピンクなど、はっきりとしたビビットな色味の口紅です。口もと以外は全体にナチュラルで、目もともほんのりとしたローズやパープル系など、非常に女性らしいメイクです。
ヘアは、「ワンレン(ワンレングス)」のロングが主流で、毛先のみにパーマをかけたソバージュや、ストレートロングが流行りました。また、前髪を立たせた「とさかヘア」や、薄くおろした「すだれ前髪」も、この時代を象徴するスタイルと言えます。
■平成6~10年(1994~1998年)<茶髪・細眉・小顔とギャル文化>
バブル崩壊後長く続く平成不況に突入し、多方面で安価な商品が人気となります。また消費において団塊ジュニアの存在感が増しました。この頃パソコンや携帯電話が一般に広く普及し始め、得られる情報量が格段に増加しました。
ルーズソックスのブームなどをきっかけに女子高生に注目が集まり、厚底ブーツやミニスカートなど、いわゆる「ギャル文化」が台頭。彼女たちが社会に与える影響も大きくなっていきました。
スーパーモデルブームなどと相まって、茶髪、細眉、小顔メイクが大流行。髪色に合わせた眉のブリーチや、下地などで光るツヤ肌を演出するなど、細部へのこだわりも見られ美容への関心が高まりました。またファッションでの光沢素材の流行と連動し、輝きのあるパールアイシャドウ、色を抑えたベージュ、ブラウン系のリップなどが主流になるなど、クールで近未来的なメイクが流行りました。
この時期メディアなどで「カリスマ美容師」が人気となり、毛先に段差をつけるレイヤーカットや、毛先をすくシャギーカットが提案されました。また若い女性のヘアカラー率が9割を超えました。
■平成11~15年(1999~2003年) <ブロンズ・囲み目・ギャルファッション>
ミレニアムのこの時期、ストリートファッションは盛り上がりをみせ、ギャル系、エレガント系、裏原(裏原宿)系など流行のピラミッドはいくつも枝分かれし、カテゴライズ化されました。
この頃に印象的なのが、90年代に現れた「ギャル文化」が、渋谷を中心としたエリアで独自に進化したスタイルです。原色の服、花の髪飾り、個性的な化粧など奇抜なストリートスタイルで、メディアにも多く取り上げられ、海外からも注目が集まりました。
この層のメイクの最大の特長は、日焼け肌の演出です。実際に日焼けをする人もいれば、濃い色味のファンデーションやフェイスパウダーでメイクする人も多くみられました。目の際を囲んだアイラインと、薄い色の眉で、目をより強調した仕上がりでした。
ヘアは、明るいハイトーンのイエロー、アッシュ、ハイブリーチなどバリエーションが増え、ヘアカラー人口はさらに増加し一般化しました。
平成16~20年/平成21~25年/平成26~現在
■平成16~20年(2004~2008年)<女子力高めの盛りメイク>
不況や格差が深刻化したこの時期、不安感からか、安定志向や結婚願望の高まりが見られました。婚活ブームが起こり、同時に女性たちの「モテ意識」が強くなりました。
フリルやレース使いのロマンティックファッションや、手軽にトレンドを楽しめるファストファッションの流行が拡大しました。またインターネットの普及も急速に進み、トレンド情報をいち早く発信するブロガーが注目されました。
メイクは肌になじむナチュラルな色使いが人気で アイシャドウはブラウン、リップはピンクベージュ一辺倒でした。色はナチュラルながらより女性らしさを強調し演出する「盛りメイク」が流行。囲み目アイライン、マスカラ重ね付け、つけまつ毛などで目を大きく見せ、口もとはグロスルージュや、リップにグロスを重ねてツヤを与えるなど、さりげなく「盛って」いました。さらに黒目強調コンタクトやまつ毛エクステなど、化粧品以外の手段も駆使するなど美容熱の高まりがみられた時期です。
ほどよい重さのあるセミロングやロングヘアが人気となり、ヘアカラーはやや暗めブラウンにシフトしています。ヘアにも「盛り」傾向は見られ、エクステやヘアアイロンで巻き髪を作り、トップやサイドにボリュームを持たせたシルエットが人気でした。
■平成21~25年(2009~2013年)<ゆるふわ癒し系大人カワイイ女子>
2011年の東日本大震災を挟んだこの時期、不況の深刻化と同時に様々な角度から「勝ち組・負け組」といった格差意識が社会に蔓延し始めていましたが、震災を機に、世の中全体の価値観や、消費マインドが変化します。情報の精査のためや、「絆」意識の高まりで、SNSが急速に拡大しました。
女性たちも本当に必要なものは何かを自問自答し、自身を見つめなおして身の丈に合った消費傾向が強まります。ファッションも肩の力が抜けた「脱力系ゆるふわ」の自然体へと移行し、癒しブームが到来。この頃、若年層から派生したカワイイ文化・ファッションは、海外からも注目され、「KAWAII」が世界共通語にもなりました。国内ではそのカワイイ価値観は、大人世代にも影響を与えて、「大人カワイイ」といった表現も使われるようになりました。
メイクもファッション同様に力の抜けたナチュラルな傾向となります。下まぶたにパールハイライトをきかせた「涙袋メイク」や、頬の高い位置に頬紅をきかせた「湯上りチーク」などが現れました。
ヘアはパーマやヘアアイロンで柔らかくふんわりした巻き髪や、毛先を内巻きにして、エアリーな空気感を感じるナチュラルスタイルが主流でした。
■平成26~現在(2014~2018年)<抜け感バブルリバイバル>
景気の緩やかな回復や、訪日観光客の増加など、好景気への期待が高まった平成末期。ミレニアル世代の存在感が増し、カテゴリーに縛られない新しい価値観を楽しむ人が増えました。
ハイウエストやプロデューサー巻き、スニーカーブームなど、80・90年代ファッションのリバイバルが登場。動画投稿サイトや画像共有SNSなどの普及により自撮り写真を個人発信する傾向が顕著になり、多くのインフルエンサーが登場しました。
メイクはやや大人っぽい「レディ」「モード」がキーワードに。バブル期を想起させる「ナチュ太眉」といった、色が明るく短めの太い眉が特徴です。口もとも、しばらく見られなかった赤リップをはじめとする鮮やかなローズ、ビビッドなピンクなど、ブライトな口紅がバブル期以来の流行となりました。
ヘアはボブスタイルが人気となり、「かきあげ前髪」や、バブル期には「すだれ前髪」と呼ばれ人気だった薄くおろした前髪が「シースルーバング」として再び人気となりました。
平成から新元号へ 今後のヘアメイクのトレンドは…
■平成から新元号へ…<一周まわってフューチャリスティック>
これまでの「○○系」といったカテゴリーにとらわれない多様な価値観を楽しむ傾向が広がりをみせています。時代を代表するトレンドは、従来のような単一に絞れず、多々ある情報の中から、個々人が新しさを取捨選択していく時代となるでしょう。
ヘアメイクの世界でも個性を際立てる「パーソナライズ化」は加速していきそうです。1つのトレンドにとらわれず1人が気分やシーンによって様々なパターンを楽しむ「多様性」の傾向にあり、表現の幅や選択肢が広がるでしょう。
「多様性」の一例として、90年代後半の近未来的なファッション・メイクのトレンド「フューチャリスティック」が新たな解釈でリバイバルされることがあげられます。形や色よりも質感を重視。肌は薄く素肌っぽいツヤ感のある仕上がりで、目もと、口もとは光沢感や輝きのあるパールなど、すっきりとクールでイノセントな印象が新鮮です。まつ毛にワンポイントのカラーをアクセントにするなどプレイフルな表現も考えられます。
■ビューティートレンド研究 リーダー
資生堂トップヘアメイクアップアーティスト 鈴木節子(すずき せつこ)
30年間のトレンドをみると「平成の時代」が変化の周期が非常に早かった事がわかります。同時にヘアメイクは世相を反映することも再認識します。過去にファッションでは十人一色といった様相の大流行が生じました。80年代以降、十人十色といった多様化が広がります。進行し続ける「多様化」の意味合いは近年大きく変わってきています。今日では一人十色ともそれ以上ともいえる多彩な表現が可能となり、日によって場面に応じて様々なイメージを楽しむことができます。
今回、平成元年生まれの方にモデルをお願いし、各時期を表現しました。ヘアメイクが変わることで彼女自身の佇まいや仕草も含め、まるでその時期を謳歌したかのような表情に変化し、スタッフ一同を驚かせました。年齢や性格まで変えて見せる、その「化粧の力」を改めて実感しました。ヘアメイクで確かに気分は変わります。おそらく今後もトレンドの多様化、変化のペースは益々加速します。いつの時代も化粧が人の気持ちに寄り添い、後押しするものであることに変わりはないでしょう。
ビューティートレンド研究 リーダー 資生堂トップヘアメイクアップアーティスト 鈴木節子
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