2017年10月20日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
油分・水分を自在に混ぜる新乳化技術「コアコロナ乳化」を開発
資生堂は、これまでの乳化で一般的に用いられている界面活性剤を使うことなく、さまざまな種類の油と水を自由な配合比率で自在に混ぜることができる全く新しい乳化技術「コアコロナ乳化」を開発しました(図)。両立が困難だった「みずみずしい塗り心地でありながら水に強いサンスクリーン」や「劇的にうるおうのにべたつかない保湿クリーム」 など、画期的な化粧品のレシピを生みだす可能性を持つ新たな乳化技術となります。
なお本技術は、2017年9月7日に神戸で開催された第68回コロイドおよび界面化学討論会、および9月11日に東京で開催された第56回日本油化学会年会にて発表され、杉山研究員が「日本油化学会関東支部 若手研究者奨励賞」を受賞しました。この技術は2018年2月に発売予定のアネッサ製品の一部に応用されます。
開発の背景
化粧水、乳液やクリームをはじめとするすべての化粧品には、肌や毛髪を健やかに保つ機能が求められると同時に、心地よさや塗布のしやすさ、高い品質や安全性も求められます。こうした化粧品開発に「乳化」は欠かすことのできない技術です。油と水のように互いに混ざり合わない2つの液体の一方を粒状の滴とし、他方の液体の中に均一に混ぜ込む技術が「乳化」であり、この乳化状態を作り出すために配合される成分が「乳化剤」です。
主な乳化剤は「界面活性剤」で油と水の両方の性質を持っています。界面活性剤は種類も豊富で、容易に油と水を乳化できるため、化粧品製剤技術においてはきわめて有用な物質です。しかし界面活性剤は高濃度配合時には使用感触を損なったり、油の性質によっては使用する種類を変えねばならないなど、心地よさと機能性をあわせ持つ化粧品開発を進める上では、様々な制約があります。一方その制約を補う乳化剤として「無機微粒子」を用いたピッカリングエマルジョンという乳化法も存在していますが、その乳化には高濃度の微粒子が必要となり、必然的に粉っぽい使用性とならざるを得ないという限界があります。
優れた乳化能をもつポリマー「コアコロナ粒子」の開発
これら界面活性剤や無機微粒子を用いる2つの乳化法の限界を克服する新たな乳化剤として、油になじみやすい骨格(コア)部分と水になじみやすい周辺(コロナ)部分をあわせ持つ「コアコロナ粒子」というポリマー微粒子を設計、開発しました。これは従来の界面活性剤に比べ100倍以上となる直径をもつ粒子状の物質です。コアコロナ粒子は、さまざまな種類の油と水を自由な配合比率で自在に乳化することができ、従来の界面活性剤をはるかに超える高い乳化性能を持っています。
さらに、このコアコロナ粒子はピッカリングエマルジョンで用いる無機微粒子に比べ柔らかい素材でできており、また圧倒的な低濃度で油と水の乳化が可能であるため、べたつきや粉っぽさの少ない、心地よい使用感触を実現することができます。これまでの乳化技術の限界を超えた、応用範囲の広い新たな「コアコロナ乳化」技術は、「みずみずしい塗り心地でありながら水に強いサンスクリーン」や「劇的にうるおうのにべたつかない保湿クリーム」といった画期的な処方設計を可能にします。
※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。