2017年09月19日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
異常な毛細血管ネットワークがシミ形成に関与することを発見
― シミへの新しいアプローチが可能に ―
資生堂では長年にわたり、シミ部位に特異的に起こっている肌エラーに着目した皮膚解析を行い、シミ形成のさまざまな原因解明に取り組んできました。この度、新たにシミと血管の関係に着目し、「シミの奥に異常な毛細血管ネットワークが存在すること(別プレスリリース参照)」を、さらに韓国Ajou(アジュ)大学皮膚科Kang(カン)教授との共同研究により「血管内皮細胞の作用がシミ・色ムラなどの原因のひとつであること」を、明らかにしました(図1)。さらに、「トルメンチラエキス」、「イチヤクソウエキス」にシミ形成に関連する異常な血管の作用を抑える効果があることを見出しました。
開発の背景:シミの奥に潜む血管の発見と血管からのメラニン生成促進作用の解明
資生堂ではこれまで、シミ部位の皮膚では、種々の特異的なエラー※1が生じていることを明らかにし、それぞれに対応する技術・成分を開発してきましたが、今まで着目してこなかった肌深部にまだ明らかになっていない原因が潜んでいるのではないかと考え、シミ研究の権威である韓国Ajou大学皮膚科Kang教授との共同研究で徹底的に解析した結果、
● シミ部位(日光性色素斑)の色素沈着部位では、血管内皮増殖因子(VEGF-A)が多く(図2)、毛細血管の数や面積が増加している。また、シミ部位と一致する部位で血流が増加している(図3)※2
● 刺激を受けた血管(血管内皮細胞)からはメラニン生成を促進する因子が放出されるため、メラノサイトにおけるメラニン生成量が増大する※3
ことを明らかにしました。
※1 慢性的に微弱な炎症が生じていること、角化が正常に行われていないこと、基底膜の成分異常によってシミの増殖防御機能が低下していることなど、異常な現象が生じていること
※2 Increased blood flow and vasculature in solar lentigo, Journal of Dermatology 2016; 43: 1209–1213
※3 日本研究皮膚科学会総会(2016年12月)発表
対応技術① 血管内皮増殖因子(VEGF-A)量の抑制
シミ部位では血管内皮増殖因子(VEGF-A)が多く産生されていることに着目して、表皮角化細胞が生成する血管内皮増殖因子(VEGF-A)量を減らす効果を指標として探索し、バラ科の多年草トルメンチラの根から抽出した「トルメンチラエキス」を見出しました(図4)。
対応技術② 異常血管によるメラニン生成促進の抑制
紫外線の刺激を受けた血管内皮細胞がメラノサイトのメラニン生成を増加させることに着目し、その抑制効果を指標として探索した結果、「イチヤクソウエキス」を見出しました(図5)。
今回の新知見はシミ発生の原因解明に新しい視点を提供するものです。シミに悩むお客さまへの画期的なシミ改善技術の提供につながるよう、さらに進化した美白スキンケア化粧品の開発を進めていきます。
本研究成果の一部は、2017年7月に大阪で開催された日本美容皮膚科学会、および2017年8月に米国コロラドで開催された国際色素細胞学会にて発表しました。
(参考)
※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。