MESSAGE

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資生堂 ライフクオリティ― メイクアップ(社会活動)の70周年に際し、
美容ジャーナリストの齋藤 薫さんに特別寄稿していただきました。

美容ジャーナリストの齋藤 薫(さいとう・かおる)さん

それは今こそ、
全ての人が生きる糧として知っておくべき
"命のカバー力"!

なぜ70年も前に、これほど先進的なカバー力が実現したのか?

終戦から80年がたち、2025年は特に広島や長崎の被災の記憶を絶やしてはいけないと訴える声が大きかった。ノーベル平和賞の影響もあったのだろうか。未だに被害に苦しむ人がいる重い現実は受け止めがたいが、一方で戦争を知らないのにそれを誠実に伝えようとする人たちがいることに、日本人の強さと優しさ、真摯な精神を改めて感じたりした。じつはそこで思い出されたのが、資生堂のライフクオリティー メイクアップの存在だったのである。

誕生は70年前、戦争の爪痕がまだ残る中、"修復できない戦禍の傷跡"ともいうべきケロイドやあざ、傷、濃いシミといった目に見える皮ふダメージをメイクアップでカバーできないか?と立ち上がる。当時としては未曾有の挑戦だったはず。なにしろベースメイクの仕組みすらまだ確立していなかった時代に、あざを隠す高度な技術が要求されたのだから。しかも資生堂はそれが「外見だけでなく心まで傷ついた人たちの苦しみを解消する、極めて重要な手段」となることを誰よりもよく知っていたはずだ。

かくして生まれた最初の製品がスポッツカバー全6色。驚くべきはその使用法で、まず自分のあざやシミに近い色で"患部"を隠し、上から肌により近い肌の色を重ね塗る……正直こうした重ね塗りは、今の時代にまさにコンシーラーの裏技として使われているテクニック。70年も前に、ただ分厚い膜で覆い隠すのではなく、色のメカニズムを踏まえ、この時代なりに薄い膜で自然にカバーしようとした配慮には度肝を抜かれる。そこに化粧品会社として最善を尽くそうという気概と、悩める人への思いやりが見えてくるのだ。
 その後、研究と技術の進歩から、パーフェクトカバーというファンデーションを開発。補色の関係にある光を混ぜることで、より自然にあざをカバーすることに成功しているが、まさに時代をリードするような技術革新も「何としても消さなければ」という強い使命感がもたらしたものなのだろう。やがて白斑を目立たなくするメラニン色調のカバー力までを生むことになり、さらに多くの悩める人を救えたのは、資生堂ならばこそ、という気もする。
 資生堂の研究力技術力は、言うまでもなく世界のトップにある。そして人々が求めているものを、一瞬も立ち止まることなく貪欲に進化させていく強い使命感を持っている。何より資生堂には、利他の心がある。人を美しさで幸せにしようという熱烈な思いがある。もしも資生堂がなかったら、そもそも私たち日本人はここまで多様な美しさへの希望を持てなかったはずだし、見た目の皮ふのダメージに悩む人たちをこんなふうに救えていなかったかもしれない。そう思うと、資生堂の信条にまず敬意を払いたくなる。

写真左:資生堂の企業文化誌「花椿」1957年2月号への資生堂スポッツカバー掲載記事。写真右:1958年版の販売読本に掲載された資生堂スポッツカバーの色合わせの参考例

左:「花椿」1957年2月号、右:「販売読本」1958年版より

このままでは生きていけないと思う人を支えてきた命のカバー力

そういう意味で、ライフクオリティー メイクアップは資生堂の一つの象徴でもあるのだろう。先進的なカバー力は、一人一人の人生に、もっと言えば人の命に直接関わってきた。隠せて良かったという話ではない。隠せなければ、顔を上げて生きられない、人と会えない、出かけられない、そんな切迫した思いが掛かっている。ましてや、必死で隠していることが分かってしまうのは恥ずかしい、複雑な悩みを宿したあざを隠す責任感までが、そこに託されるのだ。まさにそれは全身全霊のカバー力!
 メイクアップには当然のこととして、人に勇気や幸福感を与える力があるけれど、そういう能力をも超え、生きていく気力さえない人に一体どれだけの力を与えたてきたことだろう。このままでは生きていけないとさえ思う人をどれだけ支えてきたことだろう。だからこそ、命のカバー力と言っていいと思うのだ。
 でも同時に、あざや白斑も一つの個性だからと、何も隠さずに生きていきたい人がいることをも、とても大切に考える。つまりこのカバー力の存在が、逆の考え方があることも浮き彫りにし、それがまた新たな希望を生んだのだ。美しさは一つでないこと、たくさんの選択肢があることを教えてくれたのだから。

日本における対象者*、太田母斑:約25万人、茶あざ:約1,238万人 白斑:約38万人、そして、がん外見ケアを必要とする人:約2,580万人……かくも多くの人が改善の難しい外見の悩みと戦っていることも、私はこのカバーに教えられた。実はそこに、メイクアップの本分があることも。毎日当たり前に続けてきた行為に、ここまで人の人生を変える意味が潜んでいたのを知り、化粧というものの尊さにも改めて気づかされたのだ。
 そして70年間もの間、それこそ光が当たることもない中で黙々と、ひたむきに、しかも献身的に、外見ケアに取り組んできたライフクオリティー メイクアップには、心の底から感謝したくなる。ルッキズムなど関係ない、ただ無心に人を美しくすることの本当の価値を示してくれるから。人間の寿命が100年以上に伸びるのであればなおさら、誰だって将来同じ悩みを持つ可能性を孕んでいる。だから、自分たちの人生にもこのライフクオリティー メイクアップがあるのだと知ることが、予期せぬ希望につながっていくはず。死ぬまで生き生きと若々しく生きられるのだという。
 つまり対象者のみならず全ての人が、この外見ケアの目覚ましい進化を知っておくべきなのだ。一般コスメとは違う次元で、欠点をカバーする、それがこの先を生きていく上での不安を消し去り、未来を与えてくれることを。こんな力強さと優しさ持った化粧品が、この世にあるだろうか。今こそもっと光を当てるべきなのだ。尊敬をこめて。

*2025年現在の日本国内での推定人数(資生堂調べ)

2025年に発売された現在のパーフェクトカバー

現在のパーフェクトカバー(2025年発売)

美容ジャーナリスト

齋藤 薫

女性誌編集者を経て独立。多数のメディアで連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュースエキスパート』でコラムを執筆中。『大人の女よ!清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)、『年齢革命 閉経からが人生だ!』(文藝春秋)など著書多数。