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アクティブビューティーを実現する食事とは

国内外のレースに出場している資生堂ランニングクラブ。所属アスリートたちの日々のパフォーマンス維持・向上を意識しながら食生活を支えている管理栄養士が、アスリート栄養管理の現場をヒントに、スポーツシーンだけでなく子育てや仕事などの日頃の生活シーンにおいてもパフォーマンスを発揮できるようにするためのヒントを語ります。

川野 恵美 プロフィール

株式会社資生堂
人事部ランニングクラブ
管理栄養士

自身も高校卒業までは陸上競技に専念し、都道府県対抗女子駅伝のランナーとしてレースに参加するなどの経験をもとに、アスリートファーストの観点から栄養管理のプロとしてチームを支える。

本質は、偏りのない「栄養バランス」

現代女性の食に対する意識や食生活実態などに目を向けると、特に20代女性ですが「やせ願望」が多い傾向にあり、エネルギー不足による無月経、貧血なども多い状況です。最近では30代以降の「やせ」も増加しています。女性アスリートの健康問題でもよくあげられている「運動性無月経」、「骨粗鬆症」も、エネルギー不足で起こるとされていますが、パフォーマンスを維持・改善させることの大前提は、エネルギー不足を改善することです。

エネルギー不足が無月経を引き起こし、無月経が骨粗鬆症を引き起こすとも言われています。例えばここ最近で言えば、やや過剰なまでの糖質抜きダイエットなどに取り組む傾向も見られたりします。そういったことに影響を受けた意識や行動が、結果としてエネルギー不足を引き起こしている状況ともいえます。

エネルギーを補わずにランニングなどのスポーツをアクティブに取り組んでいらっしゃる方などもいるのですが、運動後の身体の回復には糖質が重要なんです。運動すると糖質をエネルギー源としてエネルギーが消費されるんですが、そのまま糖質を補給しないでいると、筋肉を分解してタンパク質を糖質に変えてカラダをキープしようとする。つまり筋肉のタンパク質が消費されてしまう。運動後にしっかり糖質を含んだ食事をしないと、筋肉が痩せていってしまい、疲労が蓄積するだけなんです。さらに筋肉量が減ると基礎代謝を低下させる原因にもなります。という点では、年齢を重ねても筋肉量を維持していくには、適度な運動をしながらも、筋肉のもととなるタンパク質と一緒に糖質もしっかり摂ることが大切だということになります。

例えば糖質。1日あたりの摂取量は

日本人の食事摂取基準(2020版)では、30~49歳女性で身体活動レベルが「普通」の人で1日の推定エネルギー必要量は2,050kcal。 そのうちの50~65%を炭水化物から摂ることが目標とされています。糖質のエネルギーは1gあたり4kcalなので

■50%で計算した場合
1日の推定エネルギー必要量 2,050kcal×50%=1,025kcal
糖質のエネルギーは1gあたり4kcalなので、1,025kcal÷4=256g

■65%で計算した場合
1日の推定エネルギー必要量 2,050kcal×65%=1,333kcal 
糖質のエネルギーは1gあたり4kcalなので、1,333kcal÷4=333g

結論としては、おおよそ250g~330gくらいが摂取量の目安となります。

身体活動レベルに応じた摂取量を知る

ただ、日常生活を含めた身体の動かし方によって、その目安量も違ってきます。

1.身体活動レベル:低い・・・生活の大部分が座位で静的な活動が中心の場合
2.身体活動レベル:普通・・・座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業、通勤、買い物、家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合
3.身体活動レベル:高い・・・移動や立位の多い仕事への従事者、あるいはスポーツ等余暇における活発な運動習慣をもっている場合

体を動かす方が増えていることを踏まえて「身体活動レベルが高い」30~49歳女性の推定エネルギー必要量を出すとすれば、 1日の推定エネルギー必要量が2,350kcalなので、摂取すべき量は以下となります。

■50%で計算した場合
1日の推定エネルギー必要量 2,350kcal×50%=1,175kcal
糖質のエネルギーは1gあたり4kcalなので、1,175kcal÷4=294g

■65%で計算した場合
1日の推定エネルギー必要量 2,350kcal×65%=1,528kcal
糖質のエネルギーは1gあたり4kcalなので、1,528kcal÷4=382g

結論としては、おおよそ300~380gくらいが摂取量の目安となります。

ヘルスコンシャスな時代へ。だからこそ、「you are what you eat.」

今回考えたのは、エネルギー源になる三大栄養素「炭水化物」、「タンパク質」、「脂質」が摂れる食材をベースに、骨粗鬆症予防として「カルシウム」、貧血予防として「鉄分」、「ビタミン」なども摂れることも意識したスムージーです。実は、常日頃から思うことの一つとして、アスリートのコンディショニング維持や向上の在り方に、一般の人たちの健康改善のヒントになることが多いということでした。

例えばフェリチンとか。これは貯蔵鉄と呼ばれていて、我々にとって必要不可欠な鉄を貯蔵しておくことができるもので、必要となればそこから利用しています。なので貧血を把握するうえでとても重要なものなんですが、通常一般の健康診断ではこれを測定するようには基本なっていません。なので、資生堂ランニングクラブの選手たちはこれを定期的に測定し、確認しています。フェリチン自体の重要性はアスリートの世界ではよく語られる文脈で、そのようなことも踏まえてパフォーマンス維持・向上に日々努めていたりします。貧血対策がいかに重要なのかがわかると思いますが、パフォーマンスの維持や向上って、それはアスリートの世界だけではないですよね。日々の生活や仕事にもパフォーマンスは求められます。だから、貧血対策を取り入れた食生活はすべての人にとって重要なことになるわけです。なので今回は特に鉄分摂取に力点をおいたものに仕上げています。

ココロとカラダはつながっています。コロナの影響もあり、ヘルスコンシャスな人が増えていることは事実ですが、食べたものが自分自身になる、つまりは、「you are what you eat.」ですね。非常に的を得た言葉だと思います。いまだからこそ、この考え方に戻りながら、正しく情報に触れ、理解して、日々の食生活に生かしていけるといいなと思います。

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