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「資生堂ショック」と
呼ばれた
美容職社員の
働き方改革【前編】
「資生堂ショック」と
呼ばれた
美容職社員の
働き方改革【前編】
INDEX
01
資生堂ショックとは
2014年に「資生堂ショック」と一部メディアで呼ばれ、
社会で話題になった美容職社員の働き方改革をご存じでしょうか?
店頭でお客さまに接客をする育児期の美容職社員の働き方を見直したことについて、
当時、「女性に優しい会社の資生堂が働く女性に厳しくなったのか!」と
賛否の議論が交わされました。
当社では「仕事と育児の両立ができ、仕事を継続できる」段階でとどまるのではなく、
「育児や介護の両立を図りたい社員もキャリア成長に果敢に挑戦できる」
ことをゴールとしたこの働き方改革は、全社での女性活躍推進に向けて、
あらかじめ計画していた取り組みの一環でした。
これまでの「資生堂の女性活躍推進の歩み」についてはこちらの動画をご覧ください。
※上記動画は外部サービスであるYoutubeを利用しており、当サイトで対応しているウェブアクセシビリティの適応範囲外となります。
本記事では、なぜ美容職社員の働き方改革を実行したのか、その目的と取り組みの過程でどのような課題があり、どう乗り越えたのかを、当時の担当者へのインタビューをもとに振り返ります。
02
改革のキーアクション
当時人事部に在籍し改革をリードした、本多由紀さんにお話しをうかがいました。
そのころの店頭はどのような状況でしたか?
本多 : 当時、店頭では美容職社員の時短取得者の増加により、業務負担に偏りが出るなど、不平・不満の声は本社まで届いていました。
そこで人事部ではこの問題の解決にあたり、プロジェクトチームを立ち上げ、対応に乗り出しました。
改革推進のキーアクションは何でしたか?
本多 : 育児関連制度そのものは一切変更せず、制度の運用面を是正すると同時に、関連するさまざまな立場の社員間コミュニケーションの改善に努めました。
育児のための短時間勤務制度は一日2時間を上限としており、勤務時間の短縮を可能とするものの、変形労働時間制の美容職において、遅番、土日勤務までを免除するものではありません。遅番や土日勤務がないことは、あくまでも周囲の“配慮”であるという認識を確認することから始めました。
また、育児は多様なバッググラウンド形成につながる貴重な経験であり、むしろキャリアにおいてプラスに作用する側面があることを、社内に発信していきました。
そして、取り組みを進めるにあたり、改革のキーパーソンとなるのは育児期社員と面談をする直属の上司(管理職)でした。そのため、管理職に対するワークショップを全国で開催しました。
当時、管理職は育児や家事の経験がない男性が中心だったので、子育てに関してどんな質問をしていいのか、プライベートの話に踏み込んでよいのか、などの不安を払拭することから始めました。
また、制度運用変更の意図の説明や質問への対応が面談者によって一貫性を損なうことがないように、Q&A集を用意するなど、上司が「育児期社員に何を期待し、どうサポートすることで働き方改革が実現できるか」ということに真摯に向き合うことをゴールとしました。
上司、育児期社員、一緒に働く社員、すべての社員が“当事者”という認識をもつことがこの改革において極めて重要でしたので、社員との意見交換を重ね、労働組合のサポートも得ながらつくり上げた対策でした。
このような取り組みの結果、育児期にある美容職社員の98%が働き方を見直すとともに、職場における組織力の低下を防ぐことができました。
03
改革実行責任者としての想い
改革実行責任者としてどのような思いで実行されましたか?
本多 : 当時は、自身も未就学児を育てながら仕事をしていたので、両立の困難さはよくわかっていました。一方で、両立のためには、最短コースでゴールを目指すための工夫、サポートをしてくれる地域や家族からの理解を得るなど、これまで経験したことのない努力も相当量必要でした。 こうした経験を通じて得たものは計り知れません。だからこそ『子育てはキャリア形成において役に立つ経験だ』と、社内や社会に示したいと強く思いました。その考えは多くの育児期社員も同じでした。それがこの改革が成功した理由だと思います。
もうひとつこだわったことがあります。育児や介護だけが『特別』ではないということです。制度で保証されていないものの、長い仕事人生においてはさまざまなことが起こります。子どもの不登校、自身や家族の重篤な病気など、誰もが何かしらの事情を抱えながら、仕事に責任をもって向き合っています。この改革を通じて到達したかったのは、波打つ人生においてセルフマネジメント力を身につけながら、ジャストフィットな配慮をお互いに分かち合うことで、誰もが活躍できる職場が実現できるということでした。
今では、美容職だけでなくその他の職種においても男女問わず多くの社員が、育児と仕事を両立しながら、さまざまな職場で会社や社会に貢献しています。管理職として活躍する社員も多数存在するようになりました。
一律の制度に頼るのではなく、上司、本人、周囲の社員がそれぞれに最善のかたちを模索することで、誰もが活躍できる職場を実現できるという実感を得た経験でした。
このように、当時「資生堂ショック」と呼ばれた美容職社員の働き方改革は、当社の女性活躍推進の歩みにおいて、真に女性が活躍していくステージへの重要なキーライブとなりました。
さて、美容職の働き方改革から10年が経った今、
この改革は当社の女性活躍推進にどのような影響をもたらしたのでしょうか。
その成果を「『資生堂ショック』と呼ばれた美容職の働き方改革~あれから10年~」
で考察します。