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資生堂の女性活躍とDE&I
2026年11月(日本)
資生堂の女性活躍とDE&I
「女性活躍を推進したいが、何から手をつければいいのか」
「制度は整えたはずなのに、現場の意識が変わらず、DE&Iが進まない」
企業の人事、DE&I推進を担う皆さまから、こうしたお悩みをよく伺います。
資生堂もまた、同じ問いに向き合いながら、制度改革や風土改革を重ねてきました。
その歩みのなか、多様な人材の活躍と企業成長のつながりを実証し役立てていただくことを
目的に生まれたのが、社内研究機関「資生堂DE&Iラボ」です。
今回は資生堂におけるDE&I推進の歩みと、現在取り組んでいる課題をご紹介します。
女性活躍の礎
資生堂における女性活躍の歩みは、DE&Iという概念も女性活躍という言葉もまだない時代から続いてきました。その象徴的な存在のひとつが、1934年に誕生した「ミス・シセイドウ」です。現在の美容職の前身にあたるこの職種は、化粧を楽しみ美しくありたいと願う同じ女性の立場や目線で、一人ひとりのお客さまに寄り添いたいという思いのあらわれでした。女性が働く意義を見出し、専門性を身につけ自立し活躍する道を切り拓いたのです。多様性を尊重する文化は、今日のDE&Iの礎として受け継がれています。
ミス・シセイドウ
DE&Iを経営戦略に置く ―まずジェンダーから始めた理由
資生堂は、人材こそが価値創出の源泉であると考え、DE&Iを経営戦略の重要な柱と位置づけています。2024年からは「ジェンダー」「世代」「LGBTQ+」「障がい」の4つの属性に注力しています。
そのなかでも、最も注力してきたのがジェンダー平等です。女性が十分に活躍できない組織では、多様な人材の活躍やインクルージョンの実現も難しいと考え、ジェンダー平等をDE&I推進のファーストステップと位置づけてきました。
本記事では、このジェンダー平等の歩みを軸にご紹介します。
女性管理職比率10%から43.3%へ
「資生堂は女性が多い会社だから女性活躍が進んだ」と思われることがあります。しかし、本社や営業部門などの総合職社員の男女比はほぼ半々です。2003年時点の国内資生堂グループの女性管理職比率は約10%でした。女性社員の比率は高かった一方で、意思決定を担うリーダー層における女性比率は十分とはいえない状況でした。
制度改革や人材育成、風土改革を積み重ねた結果、2026年には国内資生堂グループの女性管理職比率が43.3%になりました。2030年までに、国内資生堂グループのあらゆる階層における女性リーダー比率を機会均等の象徴である50%にすることを目指しています。
女性活躍の3つのステージ
資生堂の女性活躍の歴史は、大きく3つのステージに分けることができます。
第1ステージは、結婚や出産を機に女性が離職した段階です。両立の手段がなく、働き続ける難しさに直面していました。
第2ステージは、制度を利用して働き続けられるようになった一方、「大変だろうから」という本人や周囲の遠慮によって、成長機会やキャリアアップが制限された段階です。制度が整うほど生じやすい壁と言えます。
そして第3ステージは、育児や介護などのライフイベントがあっても、キャリアを伸ばし、リーダーに挑戦できる段階です。資生堂は、現在この段階にあると考えています。
自社がこの第1~第2ステージにいると感じている日本企業の方も少なからずいるのではないでしょうか。
資生堂は、育児休業法*に先駆けて1990年に育児休業制度を導入するなど、キャリアとライフイベントの両立支援の整備から着手しました。そして30年以上かけて、第3ステージへと歩みを進めてきました。
*正式名称は「育児休業等に関する法律」、現在は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称:育児介護休業法)」
制度だけでは変わらない -資生堂の2つの打ち手
女性活躍に正解はありません。組織の状況に応じた取り組みが必要です。
資生堂が重視してきたのは、トップコミットメントと女性のキャリア成長を促すための「全包囲型」のアプローチの2つです。
ひとつめのトップコミットメントとは、目標数値だけでなく「なぜ取り組むのか」を経営トップが繰り返し発信すること。
もうひとつの「全包囲型」のアプローチとは、女性が長く能力を発揮できるよう、①ライフイベント ②女性の健康 ③キャリア ④働きがい・評価 という4つの視点からたえまなく支援をすること。時間的な制約があってもプロフェッショナルとして自律し、「キャリア成長」を果たすための支援へと舵を切りました。
その結果、2025年時点で、育休後の定着率は83.8%、女性社員の平均勤続年数は14.8年と、男性社員(14.2年)とほぼ同水準になりました。制度を使うことがキャリアの中断にならない状態が数値にも表れました。
(2025年 国内資生堂グループ)
エビデンスに基づくDE&I推進
女性活躍に取り組み続けるなか、私たちの関心は格差の是正から「組織のあり方」へと移っていきました。誰に成長の機会が与えられているのか、無意識の思い込みは存在しないか。こうした問いは、女性に限らず、あらゆる人材の活躍に共通します。
そしてこれは、資生堂だけの課題ではありません。制度はあるのに活用されない、育成しても次のリーダーが育たない。そもそも多様性は企業成長につながるのか。多くの企業が直面する課題に向き合いながら、私たちは感覚ではなく組織の実態をデータで捉える必要性を感じ、2023年に社内研究機関「資生堂DE&Iラボ」を発足させました。
資生堂DE&Iラボは、社内をひとつの実験場として、データを用いて組織の実態を可視化する研究機関です。大学との共同研究による調査分析など、DE&Iと組織のパフォーマンスの関係を検証し、その結果を社外に公開しています。
取り組みは大きく2つあります。一つ目は、経験則で語られてきたことの検証です。「アンコンシャスバイアスの解消が重要だ」「成長機会の与えられ方に偏りがあるのではないか」。現場で感覚的に語られてきたこうした知見や経験則に、データで裏付けを取っていきます。実態が見えると、打ち手の優先順位を決められます。
2つ目は、好事例の分析です。インクルージョンや心理的安全性の高い組織を特定し、そこで何が行われているかをひも解くことで、他の組織でも再現できるヒントを抽出します。
私たちが目指しているのは、成功事例の紹介だけではありません。成果が出ない理由や、成果が出る組織の特徴を明らかにし、より効果的な施策へと改善していくことです。
おわりに
DE&Iは一度の施策で実現できるものではありません。取り組んだ結果、新たな課題が見つかることもあります。しかし、それは失敗ではなく、次の改善点の発見だと捉えています。資生堂も30年をかけて、制度を整え、そこで生じた新しい課題に向き合うことを繰り返してきました。なによりも、性別や年齢をはじめとするさまざまな違いを持つ一人ひとりが、自分らしく力を発揮できること。それこそが、資生堂が目指してきた組織の姿です。 本稿でご紹介したテーマについても、それぞれの課題や実践事例をRESEARCHやACTIONSの記事で詳しく紹介しています。関心のあるテーマから、ぜひご覧いただければ幸いです。資生堂DE&Iラボは今後も新たな知見や事例を継続的に発信していきます。
参考リンク
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第2ステージから第3ステージへの移行をどう実現したのか
資生堂ショックと呼ばれた美容職社員の働き方改革【前編】| ACTIONS | 資生堂DE&I ラボ 資生堂ショックと呼ばれた美容職社員の働き方改革【後編】| ACTIONS | 資生堂DE&I ラボ -
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