資生堂が着目したのは、
効果は高いが壊れやすい、「純粋レチノール」。
さまざまな肌への働きが知られているレチノール類。資生堂が着目したのは、活性の高い「純粋レチノール」だ。光や酸素に非常に弱い性質を資生堂独自の技術で守り抜き、2017年、レチノール類で日本唯一、シワを改善する薬用有効成分として認可を受けた。
レチノールはビタミンAの一種。肌の酸化ダメージへの抵抗力を高める機能や、コラーゲンの生成を促進する働きがあることが知られている。
レチノールには部分的に化学構造が異なる「レチノール誘導体」が存在し、作用も異なる。そのため総称として「レチノール類」と呼ばれる。
資生堂が着目したのは、誘導体ではなくレチノールそのもの、つまり「純粋レチノール」。シワ改善の効果は高い一方、物質としては不安定で光や酸素、熱によって分解されやすい性質がある。製造工程や、一般的な容器では分解が進み劣化してしまうという問題があった。これを解決するのが、資生堂の独自技術「Shiseido Retinol TripleLock Technology 」だ。 処方、製造、容器それぞれに資生堂の技術力を駆使して、純粋レチノールを劣化から守り抜いている。
肌に関与する成分としてレチノールが知られるようになったのは1980年代のこと。資生堂はこれをシワ改善の有効成分としてお客さまに届けたいという想いで研究を開始し、メカニズムや効果の検証を30年以上にわたって続けてきた。
シワ改善の効能認可を得るには、有効性・安全性・安定性のすべてにおいて、厳しい審査をクリアすることが必要だ。資生堂の「純粋レチノール」はその審査に合格。2017年、レチノール類では日本で初めて、シワを改善する医薬部外品の有効成分として厚生労働省から認可を得た。
研究員 大田正弘
光ダメージを受けた皮ふに対して有用な成分として、レチノール類が登場した1980年代。その作用は皮膚科学界でも驚きをもって評価されましたが、実用化には程遠い時代でした。「なんとしてもこのレチノールの優れた有用性を肌への効果としてお客さまへ広く届けたい」——その想いから研究を開始しました。
薬用有効成分として認可を得るため、シワ評価指標の開発や、実験結果だけでなく「ヒトの肌で確実な効果を目に見えるようにする」ことに取り組んできました。レチノール以外の成分でシワ改善効果を探索したこともありましたが、その結論はやはり「レチノールに勝る成分はない」。大御所の皮膚科医教授の後押しもあり、諦めることなく向き合ってきました。繊細なレチノールの有効性を守るために、処方・製造・容器の技術も併せて開発。自信をもってお客さまのもとに届けられるようになりました。