多様なプロフェッショナル人財
PEOPLE FIRSTと価値創造
資生堂は「PEOPLE FIRST」という言葉が表すように、創業以来、「人」を価値創造の源泉と捉えてきました。当社の企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現においても、人財はきわめて重要な資源であり、「多様なプロフェッショナル人財」の活躍こそが、価値創造をけん引するものと考えています。
また、多様な知と能力の融合によって価値が生まれるとの考えのもと、150年の歴史を通じ、異なる価値観を尊重し共感し合うダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の精神を大切にしています。D&I推進によるイノベーション創出を重視し、価値創造と組織能力の向上に向けて、各種制度の構築や人財マネジメント改革に取り組んできました。
不透明で変化の激しい時代においては、社会は複雑で多様な課題を抱え、生活者の価値観・ライフスタイルもますます多様化していきます。資生堂では、社員一人ひとりが、生活者・社会・環境に新たな価値をもたらす原動力となり、自分らしい豊かな人生を実現していくことが重要だと考えています。そのため、人的資本への積極投資を行い、社員自らが成長と変革を起こすための「個の強化」と、多様な知の融合によるイノベーション創出に向けた「D&Iの加速」、そして多様な強い個が互いを尊重し、切磋琢磨して挑戦を続ける「強い組織文化の確立」に努めていきます。これらの取り組みにより、2030年ビジョンである「Personal Beauty Wellness Company」の実現を目指しています。
人財戦略の進化
個の強化
一人ひとりのお客さまにあった価値提供を実現すべく、社員一人ひとりがイノベーション創出に寄与する能力・スキルを自ら獲得し、成長し続けられる組織を目指します。
資生堂の将来ビジョンの構築やメンバーの成長を促すリーダーシップ開発をはじめ、適所適財を進める「ジョブ型人事制度」のもとで自律的にキャリアを描き成長していくための仕組み・制度の確立、優秀な人財の早期の発掘とグローバルモビリティによるグローバルに活躍できる人財の育成、マーケティングやR&Dなどの専門人財の採用・育成強化などに努めます。経営資源の投下先としては、引き続き、デジタルなどの専門スキル教育、リーダーシップ教育などグローバルに活躍できる人財の育成などに重点投資していきます。2023年秋には、創業の地である銀座に「Shiseido Future University」をオープンし、未来の資生堂を創っていく「知の拠点」として、グローバルな人財育成プログラムを展開していきます。
D&Iの加速
資生堂では、ジェンダーに限らず、国籍、人種、年齢、ライフスタイル、キャリア、働き方などの多様な個性を持つ人財が集い、異なるバックグラウンドや考え方から学び合い、共創し続けることを目指しています。
これまでも、女性の活躍推進に向けた労働環境の整備はもとより、タレントマネジメントの導入や、人財の多様性促進に向けたグローバル本社での英語公用語化、リバースメンタリングプログラムの実施などにより、異なる意見や価値観を尊重する風土が広がりつつあります。
引き続き、多様な個性の人財が自分らしくキャリアを築き、活躍するためのプログラムを開発・実行していくとともに、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)払拭のためのワークショップをはじめ、各種施策を進めていきます。
強い組織文化の確立
多様な考え方や価値観を持った人財が、それぞれに切磋琢磨しスキルアップしていくための基盤となるのが「強い組織文化」です。
全世界の社員がTRUST 8を自らの行動で体現しながら、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現に向けて挑戦し続けられる企業文化醸成に努めています。
TRUST 8を行動指針として定着させていくため、TRUST 8コンピテンシー(行動発揮)評価の導入強化や人財育成プログラムでの活用などに注力していきます。また、組織文化に大きな影響を与えるのは組織のリーダーです。「Shiseido Future University」では、最先端でグローバルレベルのビジネススクールの学びと、美への感性や心の豊かさを創業以来追求してきた、資生堂のヘリテージへの学びを掛け合わせたオリジナルカリキュラムを提供していくことで、“戦略性”や“リーダーシップ”、“感性”を身につけたリーダー人財の育成に努めます。加えて、社員やその家族の健康・安全を重視した経営を推進するため、全世界の社員の“well-being(心身と社会的な満足)”を高める取り組みを強化します。
こうした取り組みを通じ、社員エンゲージメントを向上させることで、多様な人財のパフォーマンスを最大化し、価値創造に貢献してまいります。
社内、そして社会に向けたD&Iの加速
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に関する
知見や学び、そして「美」の力を通じて、
インクルーシブな社会づくりに貢献していきます。
エグゼクティブオフィサー
常務
チーフD&Iオフィサー
資生堂は、1872年の創業以来、多様な価値観やライフスタイルのアップデートを通して時代を切り拓き心豊かな生き方を提案してきました。一方、現在の社会環境はかつてなく急激に変化し、既成概念や慣習、働き方にも多大な影響を与えています。新型コロナウイルス感染症拡大は社会的に困窮している人々の状況を悪化させるなど、課題は一層深刻になっています。
資生堂は、人は本来、多様であるとの認識のもと、一人ひとりが自分らしい人生を実現できる社会を目指し、固定的な価値観や偏見、同調圧力を払拭し、インクルーシブな(包摂性豊かな)社会の実現に向け、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を重要な経営戦略と位置づけています。また、注力課題として「ジェンダー平等」と「美の力によるエンパワーメント」の2つを定めています。本業であるビューティービジネスおよび社内D&Iの取り組みを通じて蓄積した当社の強み・知見・経験をグローバルでの社会課題解決に活かしていきます。
2023年2月に、D&Iに関する研究機能として、新たに「資生堂D&Iラボ」を立ち上げたことを発表しました。「資生堂D&Iラボ」では、社内における多様な人財の活躍に関するこれまでの実績・成果を検証することで、社内のD&I加速に向けた効果的なアクションにつなげていきます。これらの研究で得られた知見は自社内だけでなく社会にも公表することで、D&Iの実現による日本経済の成長促進へ貢献していきます。
私は、昨年チーフD&Iオフィサーに就任し、その立場からより社会を俯瞰したことで、D&Iは当社の持続的成長にとって不可欠なだけでなく、社会の成長のための大きなポテンシャルとして捉えるべき、との考えを強くしました。多様性は目的ではなく手段であり、多様性を活かし、イノベーションを起こし、価値創造を果たす組織文化への変革こそが本質的な課題です。一人ひとりが尊重され、誰もが持てる能力を発揮できるインクルーシブな社会に向け、私たちは挑戦を続けます。
2023年4月
D&I加速に向けた取り組み
女性のお客さまが多く、社員の女性比率もグローバルで80%を超える資生堂では、女性が能力を発揮できる労働環境が必須です。
私たちは、あらゆる階層で、機会均等の象徴である男女比率50:50を目指します。現在、取締役会に占める女性比率40.0%、女性エグゼクティブオフィサー比率35.3%、国内資生堂グループの女性管理職比率は37.6%と着実に向上していますが、2030年までの目標達成においてはまだ道半ばです。企業として取締役会での多様性向上はもとより、特に、組織文化への影響の大きい執行責任者層のジェンダーバランスの実現は重要かつチャレンジングな目標であると考えています。女性リーダー育成の研修「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」の多角化や、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)払拭のためのワークショップ拡充をはじめ、さらなる取り組みを強化していきます。
また、こうした女性の活躍推進に向けた諸制度の整備・運用強化をはじめとして、国籍、人種、年齢、ライフスタイル、キャリア、働き方などにかかわらず、多様な個性を持つ人財が活躍できるよう、人事制度の見直しやマネジメント改革など、異なる文化背景や価値観を持つ社員同士がそれぞれの能力を発揮し、互いを尊重し合う組織文化の構築を目指すことで社内のD&Iを推進します。
一方、社会に向けたD&Iの取り組みとしては、世界に大きく遅れをとっている日本におけるジェンダー平等を促進するため、日本企業の役員に占める女性比率の向上を目指す「30% Club Japan」にてCEOの魚谷が第1期に続き、2022年から始まった第2期も再任して会長を務め、チーフD&Iオフィサーの鈴木がステアリングコミッティメンバーに就任しました。日本企業における意思決定場面への女性参画を加速させ、日本社会の成長のポテンシャルでもある女性のさらなる活躍を促進すべく、リーダーシップを発揮しています。「30% Club Japan」の中心的コミュニティである「TOPIX社長会」では参加企業が35社に増えており、役員に占める女性比率は国内上場企業の平均を14ポイント上回る22.9%まで上昇しました。
加えて、グローバルでは、社会的に厳しい状況にある女性と少女への教育支援、自立支援を行っています。
2019年に「クレ・ド・ポー ボーテ」がユニセフ(国連児童基金)と結んだパートナーシップは2022年に3年目を迎えました。このパートナーシップにおいて、クレ・ド・ポー ボーテは、ユニセフのジェンダー平等のためのプログラムを支援する形で、複数の国や地域で教育と雇用、エンパワーメントを通じてジェンダー平等の促進に成果を上げています。
「美の力によるエンパワーメント」においては、60年以上にわたって取り組んでいる「資生堂 ライフクオリティービューティー」を中心に取り組みます。「美」の力が心身の満足だけでなく、社会的な満足にも寄与することを発信し、加齢、疾病、障がいなどを問わず、さまざまな人々が、自分らしい一歩を踏み出すことを支援しています。中でも、がん患者を支援する「LAVENDER RING」への参画においては、日本で主導してきた「MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」の活動に、2022年からは中国、シンガポール、タイ、台湾の4つの国・地域が参加し、グローバルでの展開を強化していきます。参加いただいた国内外のがんサバイバーの方々のメッセージや笑顔から、勇気や気づきが得られました。これからも、誰もが持つ「自分らしくありたい」という願いを、「美の力」で支援していきます。
主な施策と進捗
現在日本国内およびグローバルで推進している主な取り組みは、以下のとおりです。
- 適所適財を進めるため、「ジョブ型人事制度」を日本国内で導入
- 多様な人財を活かし「ジョブ型人事制度」を徹底運用するためのマネージャー向けマネジメントスキル向上研修を日本で継続開催
- キャリア自律促進のため、上司以外の管理職とも、キャリアに関する対話を持つことを可能にするキャリアメンタリングプログラムを日本で新たにスタート(2022年 266名受講)
- 国内外の資生堂グループ共通の基準となる「グローバルグレード制度」を導入
- 海外地域へのグループ共通賞与制度(One Shiseido Bonus Program)の導入
- エグゼクティブオフィサー・地域CEOをはじめ、リーダー層を対象とした本社・各地域の各種グローバルリーダーシップトレーニングを実施(2022年 162名)
- 自律的学習を推奨するラーニングプラットフォームとしてLinkedIn Learningのグローバル展開
グローバル受講者数(2022年 5,739名) - グローバル人財を育てるグローバルモビリティポリシーの刷新とプログラム強化
- グローバルエンゲージメント調査の実施(2022年 肯定的回答率 65%)
- 若手社員がエグゼクティブオフィサーや部門長のメンターとなって意見交換するリバースメンタリングを日本で実施(2017年~2022年で累計892名の社員が参加)
- 女性リーダー育成の研修「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を日本で実施(2017年~2022年で累計202名が参加)
- 女性役員と女性社員が直接キャリア開発について対話するメンタリングプログラム「Speak Jam」を日本で実施(2020年~2022年で累計117名が受講)