スキンビューティーカンパニーに
向けた
投資戦略
「SHIFT 2025 and Beyond」では、お客さま一人ひとりに合った体験を提供し、スキンビューティー領域における世界No.1を実現していくため、ブランド、イノベーション、人財にこれまで以上の重点投資を行い、価値創出力を強化していきます。
ブランド強化に向けた投資拡充
ブランドについては、その価値を高めるため、ポートフォリオにおける各ブランドの戦略的位置づけを明確化していきます。
グローバルブランドでは、「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「NARS」、「Drunk Elephant」の4ブランドを最重点育成ブランドと設定し、すべての地域で経営資源を集中的に投下します。アジアでは、「エリクシール」、「アネッサ」を主軸とした地域展開拡大を図ります。フレグランスに関しても、独自の研究・技術により付加価値を高めます。また、生活者価値観の多様化、地域ごとに異なるトレンドにも着目し、日本地域発の「BAUM」、欧州地域発の「Ulé」のように、現地主導の価値開発、地域本社での商品開発も強化します。さらに、大きな成長ポテンシャルを有するメンズ市場では、スキンケアに加えメイクアップ市場も開拓していきます。
これらのブランドの育成・成長に、2023年~2025年の3年間で累計1,000億円を超えるマーケティング費用の上乗せを行います。
また、新たな事業領域の展開などにおいては、選択的にM&A機会の探索やコーポレート・ベンチャーキャピタルの活用も検討します。
グローバルブランド
NARS、Drunk Elephant、Tory Burch
スキンビューティーの未来
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、お客さまの購買行動や購買内容にかつてないほど変容をもたらしました。お客さまが今強い関心を寄せているのは、ウェルネス、すなわち健康的で生き生きとした日々を送ること、そしてその中で、高い効能を実感できる製品を使い健康的な肌を保つことです。そうした中、ファンデーションとスキンケアが一体となった、クリーンで、サステナブル、かつスキンケア効果を有した商品へのニーズがますます高まりました。NARSは、こうしたトレンドを的確に捉え、お客さまが求める商品をいち早くお届けするために戦略に落とし込みました。
その成果が、2022年、NARSが発売した、「ライトリフレクティングファンデーション」です。これは、メイクアップとスキンケアのハイブリッドともいえるユニークな商品で、肌を外的なストレス要因から守り、肌の自然なバリア機能を強化します。発売初年度に記録的ヒット商品となり、米国のプレステージビューティー分野で新商品No.1となりました。「NARS」の今後の展開においても、私たちは資生堂が持つスキンケアの技術を活かし、スキンケア効果を融合させた業界最高レベルのイノベーションを起こしていきます。
「Drunk Elephant」においては、健康な肌とはハッピーな肌である、と考えており、すべての製品に、肌の健康に良いバイオコンパチブルな原料だけを使用しています。また、「Drunk Elephant」の売上の6割以上を米国市場が占める一方で、2021年、2022年には、25の新たな市場へ展開を拡大しました。ブランドの認知度を向上させ、お客さまとの信頼関係を構築するために、今後数年を顔中心のスキンケアに一層注力していきます。加えて、「Drunk Elephant」は、サステナビリティにも積極的に取り組んでおり、つめかえを普及させるプログラムを始めています。これは、リピート購買にもつながると考えています。「Drunk Elephant」が、将来世界でトップブランドになれる高いポテンシャルを持ったブランドであると確信しています。
私は、「NARS」と「Drunk Elephant」がこれまで成し遂げた成果にとても強い誇りを持ち、その未来には明るい展望を抱いています。両ブランドは、スキンビューティーの未来そのものであり、資生堂が世界No.1のスキンビューティーカンパニーとなるために不可欠な存在としてこれからも重要な役割を果たしていきます。
2023年4月
イノベーション、サプライネットワークの強化
ブランド価値の強化においては、資生堂の研究開発力を世界で最大限に発揮していくことが重要な要件となります。日本のグローバルイノベーションセンター(GIC)では基礎研究を拡充すると同時に、世界5カ所の地域イノベーションセンターとの連携をさらに強化していきます。こうしたR&Dのグローバルネットワークを一層強固なものにするため、「SHIFT 2025 and Beyond」では、売上高比率で3%程度の研究開発費を今後も投下していきます。
ブランドの競争優位性向上に向け、日本の高い品質にさらに磨きをかけるともに、生産性とコスト効率を高めるサプライネットワークの強化にも注力します。2019年以降に設立した那須・大阪茨木・福岡久留米の国内3工場の稼働率を高めるほか、福岡久留米工場では、 IoTやロボットを活用した最新鋭の機能を導入したラインの生産性が300%向上しており、こうした取り組みを他工場にも適用していきます。
イノベーション
人財への投資
ブランドの強化、イノベーションを実現していくため、価値創造の源泉である人財への投資も拡充します。
資生堂では、人的資本の拡充こそが企業価値を高めるとの考えから、「PEOPLE FIRST」を経営理念としています。守りから攻めに転じる「SHIFT 2025 and Beyond」では、社員エンゲージメントを高めることで、人的資本をグローバルな競争優位とすべく、さらに進化させていきます。
創業以来大切にしてきた多様性を価値とし、ダイバーシティ&インクルージョンの推進や働き方改革に注力することで、世界中の多様な個性を持つ優秀な人財が集まる企業を目指します。
育成面では、すでに世界で8,000人以上の社員が教育を受けている「SHISEIDO+デジタルアカデミー」や、資生堂インタラクティブビューティー(株)の設立により、デジタルITの専門人財を集め、集中的に育成するなど、デジタル能力のリスキリングを一層強化します。また、「ジョブ型人事制度」のもと、一人ひとりのキャリア開発の支援や各種研修プログラム、留学制度の充実を図り、リーダーの育成に積極的に投資していきます。
こうした取り組みを加速すべく、次世代を担うリーダーの人財開発施設「Shiseido Future University」を2023年秋にオープンする予定です。