CFOメッセージ
エグゼクティブオフィサー
チーフファイナンシャルオフィサー(最高財務責任者)
安定的な力強い売上成長とコスト効率化により
コア営業利益率15%の実現に再チャレンジします。
Q1.
「WIN 2023」策定時(2020年8月)には、コロナ禍からの回復を日本は2021年下期、中国は2020年下期と想定していましたが、この見通しは大幅にずれました。日本、中国という売上構成比の大きい地域の市場回復の遅れにより、売上と利益は当初計画に対して大きく下回ることとなりました。特に日本事業の成長回帰、収益性の改善は、最大の積み残し課題となりました。
一方、計画していた構造改革は、すべて予定通り実行することができました。事業規模2,000億円を超える構造改革などを通じた当社が強みを持つ領域への「選択と集中」により、スキンケア売上比率は70%を超える水準となったことに加え、米州・欧州事業の収益性は改善しました。また、厳しい事業環境下でも中長期成長に向けて投資を実行し、DXの加速、3工場(那須・大阪茨木・福岡久留米)の新設・順調な稼働により、生産性を向上し、将来の成長を支える基盤を整備しました。さらに、構造改革を通じて得たキャッシュは有利子負債の削減に充て、筋肉質な財務基盤を確立、今後の再成長への準備を整えました。
Q2.
「守り」から「攻め」に転じる「SHIFT 2025 and Beyond」の財務戦略としては、戦略的な成長投資を通じた売上拡大と効率性改善を図り、収益力およびキャッシュ創出力を高め、投資原資を生み出し続けられる高収益構造に転換することが大方針となります。
売上高計画は、事業譲渡影響を除いた2022年実績の0.9兆円を起点として、2025年までの3カ年はCAGR+8%、その後の2年はCAGR+6%の成長を目指します。2025年までは、日本・中国を中心とした再成長に加え、ブランド強化を通じて各地域で市場成長を上回る伸長を実現し、シェアを獲得します。
この力強い売上成長に加え、各地域で進めるコスト低減施策により、「WIN 2023」で掲げた営業利益率15%という目標に再び取り組みます。計画としては、コア営業利益率目標が2025年に12%、2027年15%、EBITDAマージンは同様に18%、20%を目指します。
資本効率については、これまでの構造改革を通じて確立した強固な財務基盤を活かして、成長をドライブしていきます。
資本効率指標として最重要視しているROICは、収益性の改善により2025年に12%、ROEは14%を目指します。
フリーキャッシュフローは、構造改革や生産拠点をはじめとする大型投資の一巡により、2025年には1,000億円を見込みます。財務安全性の面では2025年にNet D/E、Net D/EBITDAをそれぞれ0.2倍以下、0.5倍以下を目安に考えています。成長投資に必要な資金を低コストでタイムリーに調達可能なA格付を維持する方針は変わりません。今後も資本効率を注視しながら、適切なレバレッジとなるようコントロールしていきます。
Q3.
売上成長と高収益構造への転換という2つの側面でご説明します。
目標とする利益率達成に向けた最大のドライバーは、売上の拡大になります。
2025年までの売上高CAGR+8%の実現に向けては、日本・中国・トラベルリテール事業が成長をけん引する計画としています。日本および中国事業において、いずれも市場回復の機会を逃さず、スキンビューティー領域への積極投資によるシェアの拡大を図ること、そしてこの2地域にトラベルリテールも含めたクロスボーダーの展開を強化していくことが重要になります。アジアパシフィック・米州・欧州事業においても市場を上回る成長を実現し、事業規模を拡大していく計画です。
高収益構造への転換については、原価率が2022年の実質ベース23.6%に対して2.6ポイント改善の21%、販管費率は2022年と同水準の67%という2025年計画の達成が主題となります。
原価改善は、「FOCUS」導入などによる在庫管理精度の向上を通じて、返品や在庫償却の縮減が期待されるほか、さらなるブランド・商品ミックスの改善、新工場の稼働率向上、外注比率の低減、サプライネットワーク拠点の再編などがドライバーとなります。
販管費は、ブランド価値向上に向けて3カ年累計で1,000億円超の追加投資を行う一方、人件費率および経費率の着実な低減が不可欠となります。「FOCUS」稼働による生産性・効率性の向上と、各地域で進めるコスト構造改革を通じて固定費の削減・適正化を図ります。
Q4.
積極的な成長投資により収益性改善をドライブし、それを企業価値向上へつなげる好循環を実現したいと考えています。
資本政策の考え方としては、過度なレバレッジによりROEを高めるのではなく、本質的な収益力とキャッシュ創出力の向上を重視する方針に変更はありません。資本効率における最重要指標にROICを設定し、事業ポートフォリオの見直しや成長に寄与しない遊休資産の売却など、B/Sマネジメントを含めた資本効率向上へのさまざまなアクションを継続していきます。
「SHIFT 2025 and Beyond」では、ブランド、イノベーション、人財への成長投資による収益性改善で、3年間累計4,000億円の営業キャッシュフローを見込みます。
こうして創出したキャッシュを、まずは、「FOCUS」や各地域のIT設備、工場・物流センターなどのDX、先進的な環境対応設備の導入などの設備投資に投下します。あわせて、新規領域の開拓や、新技術の導入などに向けて、M&Aや事業投資に振り向けます。
なお、M&Aについては、自社開発では補えない分野や成長スピードが必要な領域を対象としており、十分な収益リターンが見込めることを前提としています。
株主還元については、安定的な現金配当を基本に、収益向上に伴って強化していきます。同時に、財務レバレッジについても適切にコントロールしていきます。
なお、株主の皆さまへの利益還元については、直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」を目指すという、従来の方針を堅持します。
配当金の決定にあたっては、連結業績、フリーキャッシュフローの状況を重視し、自己資本配当率(DOE)2.5%以上を目安とした長期安定的かつ継続的な還元拡充を行う方針としています。中期的には事業自体の稼ぐ力を土台にしたコアEPSの成長にあわせた配当の拡充を実施していきたいと考えています。
1株当たり配当金 /DOE(自己資本配当率)推移
Q5.
CFOとしての私の使命は、財務上のガバナンスとコンプライアンスを確保しながら、自らがカタリストとなり、「SHIFT 2025 and Beyond」を確実に推進し、利益率改善とキャッシュ創出の最大化に向けた変革を進めることです。
これまで説明してきた収益性改善、企業価値向上の実現をリードするのが、「FOCUS」です。「FOCUS」は私がプロジェクトオーナーを務める全社横断プロジェクトで、単なるシステム変革ではなく、DXを活用したビジネス変革がミッションです。2024年上期にすべての地域でグローバル統一のERPシステムを導入・稼働することに加え、2025年末までにすべての工場・研究開発領域でも「FOCUS」の導入が完了予定で、2030年に向けて標準化、自動化、高度化というステップのロードマップを描いています。稼働開始後は、需給管理精度向上による在庫適正化、偏在在庫の縮減、グローバル標準プロセスの整備による業務効率化、データ可視化によるマーケティングROI向上など、多岐にわたる効果を試算しています。「FOCUS」を通じて得られるグローバルデータの活用により、リアルタイムなビジネス分析、より高度で迅速な意思決定が可能となります。社員一人ひとりの働き方を変え、生産性向上や価値創造業務への移行へと結びつけることで、「Global No.1 Data-Driven Personal Skin Beauty & Wellness Company」を実現していきます。
中長期的な企業価値向上のためには、株主・投資家の皆さんとの建設的な対話の継続が非常に重要であると考えています。市場動向、戦略の進捗、取り組みの成果と課題、サステナビリティ活動など、丁寧な情報発信を行うことに加え、株主・投資家の方々からの意見を吸いあげ、経営陣で議論し、その観点を経営やIR活動に活かしていくことにも力を注ぎます。また、外部との対話を活発にしていくため、さらなる開示の進化の検討を続けていきます。
2023年4月