COOメッセージ
人々に幸せや潤いを提供できる特別な日本企業です。
こうした提供価値を洗練化し、
社員一人ひとりが楽しみながら、
人々に幸せや潤いを提供できる特別な日本企業です。
こうした提供価値を洗練化し、
社員一人ひとりが楽しみながら、
社長就任にあたって
人々の日常に喜びと感動をお届けできる特別な日本企業であることに、誇りを持っています。
2023年1月、社長 COOに就任した藤原です。
私は、1991年の資生堂入社以来、欧州、トラベルリテール、韓国、中国と、主に海外事業に携わってきました。入社時の海外売上高比率は10%に満たず、当時はここまでグローバルで成長するとは想像できませんでしたが、資生堂は創業した150年前から国際的な視点を有していた会社です。1897年のビューティービジネス進出に想いを馳せれば、当時の願いは、ユニークな日本発の価値を世界に届け、人々を幸せにしたいというものです。このビジョンが今、実現しつつあることに感動を覚えます。
私は資生堂を、世界中の人々の日常に「美」の力を通じて喜びと感動を与えられる、特別な日本企業だと捉えています。私自身、そういった企業に従事していることに、常々、喜びと誇りを持ってきました。
資生堂は、長い歴史の中で、日本発の独自の化粧文化を進化させ続け、その価値を広げてきました。そして、圧倒的な肌研究の知見と、絶対的な品質と安全性により、世界中から信頼を確立しています。例えば、海外の現地社員が資生堂に入社する理由の多くは、当社の文化、技術、品質に対する期待によるものです。言い換えれば、これらの強みをより具体的に発信し、グローバル競合と差別化することで成長をけん引させられるはずです。
私は社長就任にあたり、変化する市場の中で常に新しい成長エンジンを探し挑戦すること、また次の世代に課題を残さないこと、の2点を社内外に約束しました。次の150年に向け、グローバル成長の基盤を確立することが必要です。
そして、その実現のため、現場・現実主義とOne Teamでの経営を重視します。あくまでも起点はお客さま・生活者である以上、そこに一番近い、各地域・ブランドが創造性を発揮し、楽しみながら事業を行うことが重要です。これは、私の経営者としての原体験となっている、韓国事業の立て直し時に実感したことでもあります。当初は受け身であった現地社員と課題認識を共有し、各人が考えた施策を議論していくことで、やりがいを持って能動的に行動し、厳しい判断を伴う改革を遂行することができました。これからの全社の経営体制としても、創出価値、課題、リスクを共有しながら戦略を進める、一体型の経営チームを構築していきます。
1月に着任以降、最重要市場である日本をはじめ、各地域を順次訪問し、お得意先さまとの面談、現場社員と直接対話を推進しています。日本事業の社員からは、コロナ禍の厳しい市場環境下での苦しさ、それでも資生堂が好きで飛躍に向けてがんばりたいという声を聞くことができました。また、現場から改善すべき点の提言も積極的に発言してくれました。今後も、地域CEOや社員とともに、より多く現場と直接対話する機会を作り、成長が現場から沸き起こる組織作りを進めます。
資生堂が目指す2030年
「Personal Beauty Wellness Company」の実現に向けた成長を果たすべく、
「価値を生み出す力」と「価値を伝える力」を強化していきます。
資生堂は、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、2030年に目指す姿として「Personal Beauty Wellness Company」を掲げています。
生活者の価値観や幸せの在り方がさらに多様化する中、生活者への喜びや潤いといった資生堂の提供価値は、ますます重要になるでしょう。デジタルを通じてお客さまとつながり、一人ひとりに最適で多様なビューティーソリューションを提供していくことが極めて大切になってきます。
その価値創造に向け、いかなる成長を果たすか――。資生堂は現在、世界のビューティー企業で売上高第5位。まだまだ成長余地はあります。そこで、まず着目するのは「価値を生み出す力」と「価値を伝える力」です。価値を届ける個々のブランドに経営資源を重点投下するとともに、そのドライバーとなるイノベーションと人財に投資することで、価値を生み出す力を磨きます。同時に、ブランド・商品・サービスの独自性を磨き、お客さまに当社のイノベーションの価値を発信していきます。この2つの力を強化した好事例として、2022年に日本事業の中価格帯の回復をリードした「エリクシール」化粧水・乳液のリニューアルや、スキンビューティーの価値をメイクアップにも適用した「NARS」のライトリフレクティングファンデーションがあげられます。
こうした成長に向け、当面の3カ年はコアブランドに集中投資します。各ブランドで到達したい姿を定め、バックキャスト型で実現のための施策を実行していきます。成長に向けた成功モデルの確立がミッションの一つです。
中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」の改革テーマ
攻めの経営にシフトし、ブランド価値強化、日本事業の再成長による収益基盤の再構築、
そしてグローバルでのコスト構造の転換を果たします。
以上の考え方とこれまでの改革の進捗、環境分析を踏まえ、価値創造の戦略として落とし込んだものが「SHIFT 2025 and Beyond」です。
「SHIFT 2025 and Beyond」では、日本発のグローバルビューティーカンパニーとして持続的成長を遂げるため、攻めの経営にシフトし、投資により成長軌道を確立します。重点指標として、グローバル優良企業として必要な収益性、新たな挑戦への投資を可能とするコア営業利益率15%を掲げており、そのマイルストーンとして2025年目標を12%に設定しました。
目標達成においてこだわるのは、その道筋です。ブランド価値の強化、日本事業の再成長、コスト構造の転換の3点が主たる改革テーマとなります。
ブランド価値の強化
3カ年累計で1,000億円を上乗せするマーケティング投資、さらにはイノベーション、人財への投資を加速するとともに、投資を価値につなげるための「付加価値型経営モデル」の確立に注力します。「付加価値型経営モデル」とは、ブランドの独自性・新規性を追求し、確固たる付加価値を可視化・確立することで、プレミアムな価格と高粗利益な事業構造を実現する仕組みです。
そして、このモデル構築にあたっては、改めて「付加価値」を因数分解することが必要だと考えています。各事業・ブランドにおいて価値の構成要素を分析し、中長期的成長に資するKPI、いわゆる非財務指標(プレ財務指標)を検証します。愛用者数や社員エンゲージメント、ブランド価値など、さまざまな領域の指標が考えられますが、このKPIを社内の共通言語とすることで、事業とブランドとが一体となった経営を進めます。社員にとっても、明快なKPI目標に向け、自発的な取り組みを積極的に実践してもらいたいと考えています。
このKPIは株主・投資家への説明責任を果たす意味でも重要です。ブランドビジネスにおける投資は、短期リターンに直結するものだけでなく、成果が顕在化する時間軸も多様です。積極的な投資を行う以上、中期的成長のトリガーとしての成否を確認し、共有することが必要です。その対話のために当該KPIを活用していく構えです。
日本事業の再成長
「WIN 2023」の最大の積み残し課題となった日本事業の復活に向けては、まず成長モメンタムの構築に軸足を置きます。2023年の市場は、資生堂の主戦場である高価格帯が拡大するほか、中価格帯やインバウンドも回復傾向にあります。こうした機会を的確に捉え、スキンビューティーへの積極投資、間断ない商品イノベーションにより、愛用者の拡大を図り、売上高・シェアの伸長を実現します。中期的には、こうしたコア事業の成長に加え、ダーマ、インナービューティーなどの新たな成長領域にも進出し、パーソナルビューティーパートナーがウェルネス提案を行える体制を整備するとともに、その活動を支えるデジタルプラットフォームを構築していきます。
収益性の強化に向けては、スキンビューティーへの集中とブランド・チャネルミックスの改善を通じて、粗利益率を伸ばします。一方、市場悪化の影響が大きかったとはいえ3年間も不採算が続いた状況に鑑みると、抜本的な改革が不可避です。成長モメンタムを実現する、最適なコスト構造を描き、その達成に向けて、事業プロセスの見直し、返品・偏在の縮減、全世界共通のITプラットフォーム「FOCUS」導入による効率化などを進め、2025年の売上販管費比率60%台前半を目指します。
コスト構造の転換
継続的な投資を行える高収益構造へと転換すべく、コスト構造改革を進めます。
全社をあげて効率化を進めるべく、地域CEOとエグゼクティブオフィサーが一体となり、コスト構造最適化のプロジェクトをキックオフしました。それぞれの責任範囲のみならず、グローバルレベルの取り組み内容を決定し、すべての地域CEOとエグゼクティブオフィサーがチームとして一体となり、協力して取り組みます。
コスト構造の転換において、大きな効果をもたらすのは、DXの強化と「FOCUS」の稼働です。DXは、生活者データ戦略やビューティーテックの進化を推進するとともに、デジタルプラットフォームの構築により、マーケティングROIの向上に大きく寄与します。また、「FOCUS」稼働により、グローバルでのデータ、プロセス、システムが標準化され、ファイナンス、サプライネットワーク、マーケティング領域において、粗利益の増加、コスト削減、運転資本の効率化を実現していきます。
地域事業戦略
地域別の事業戦略としては、最重要市場である日本事業の再成長が最優先事項ですが、巨大マーケットである中国人市場(中国事業、トラベルリテール事業、日本事業インバウンド)でシェアを向上させることも、優先課題となります。
中国本土の市場は、価格競争やローカルブランドの台頭のほか、生活者ニーズ・オンラインの多様化など、引き続き激しい変化が予想されます。しかし、資生堂はその変化に柔軟に対応し、量から質を重視したマーケティング改革に取り組みます。短期的なROIを求めるのではなく、より中期的なリターン、すなわちブランドの愛用者拡大を目的としたマーケティングへと転換し、ブランド体験の強化、中国専用商品開発、CRM強化などを進めます。収益性についても、ブランドミックス効果に加え、マーケティングROI強化、「FOCUS」による効率化や拠点・店舗の最適化などに取り組み、2025年のコア営業利益率は、2022年から5ポイント改善させていきます。
一方、構造改革を経て収益性を伴う成長基盤が整った欧米や、今後の有望市場であるアジアパシフィックの拡大も重要です。2025年以降に本格拡大できるよう、事業基盤と成長エンジンを育てていきます。
今後の改革に向けて
経営の価値観や価値軸が定量化され、戦略・判断がシンプルに理解できる状態を作り、社内外の対話も進化させていきます。
以上の改革を進めるにあたり、各地域事業にはそれぞれのビジネスモデルに基づく、各地域特有のイノベーション創出を期待しています。サステナビリティの取り組みについても、各地域の文化・風土に即した活動を展開することで実効性は高まります。サステナビリティを独立させず、事業活動に取り込み、事業と一体化させることで価値創造が生まれ、新たなビジネス機会を作ることができると考えています。
さらに、各地域CEOには、それぞれの地域事業を成長・発展させていくことはもとより、グローバル全体の視座も持ってもらう考えです。新しい価値観やイノベーションが生まれる米国、国・地域をまたいだユニークなビジネスモデルを持つトラベルリテールなど、各地域の価値を掘り起こし、進化させ、それをグローバル全体で循環できる企業へと進化を図ります。
また、改革推進には社内外の納得性も大切で、そのためには対話が欠かせません。そして、有効な対話に向けては、「付加価値型経営モデル」のKPI設定に加え、私自身の価値観や価値軸が定量化され、測定できる状態を作っていきたいと考えています。それにより、社員も株主・投資家の皆さまも、戦略や判断に対するシンプルな理解ができる状態を作っていけると考えています。中長期的な成長という基軸を堅持しながら、対話の進め方も進化させていく方針ですので、今後とも株主・投資家の皆さまの一層のご理解・ご支援をお願いいたします。