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2026.04.22

資生堂DE&Iラボ シンポジウム2026 開催レポート「ジェンダー平等の視点で考えるインクルージョン ~自分らしさを出せる職場づくり~」

2026年3月、職場における女性活躍・ジェンダー平等の知見を紹介する「資生堂DE&Iラボ シンポジウム2026」をオンライン配信しました。

当日の熱量あるシンポジウムの模様は、ぜひ以下のアーカイブ動画にてご体感ください。テキストで伝わりにくい、登壇者のやり取りの空気感もお楽しみいただけます。(配信予定期間:2026年末まで)

(本アーカイブ動画には手話通訳は含まれておりません。字幕をご利用の方は、YouTubeの字幕設定をご確認ください。)

あわせて、開催レポートでは議論のポイントをまとめています。

多様なバックグラウンドを持つ人が共に働く職場では、その違いをどのように組織の力として活かすかが、チームをまとめる管理職や人事担当者に共通する課題です。

女性活躍やDE&Iの取り組みを進めてきた組織でも、「現場で本当に力が発揮されているのか」と感じる場面は少なくないのではないでしょうか。
誰もが自分らしく力を発揮できる職場を目指して、本シンポジウムでは、「帰属意識」と「独自性」という2つの視点から職場のインクルージョンを捉える考え方を紹介しました。研究による知見と企業の実践例を交えて、チーム運営に役立つヒントを探りました。異なる視点を持つ3名の登壇者によるパネルディスカッションを通じて、職場づくりに関する多様なヒントが語られました。

登壇者

山口慎太郎さん(東京大学大学院経済学研究科 教授)

半澤絵里奈さん(dentsu DEI innovations 代表 DEIコンサルタント)

岡林薫さん(資生堂 経営革新部 サステナビリティ戦略推進室 DE&Iグループマネージャー)

(左から 半澤さん、山口さん、岡林さん)

シンポジウムでは、各登壇者が自身の研究知見や企業ごとの取り組みを紹介しました。その内容をもとに、ジェンダー平等を進めるうえでつまずきやすいポイントや、今日から実践できる工夫について、率直な意見や気づきが共有されました。

  • 登壇者からの主なメッセージ

    • 山口慎太郎さん
      多様な人がいることは、新しいアイデアが生まれる土台になるが、多様性はそれだけで成果を生むわけではない―山口さんはいくつかの調査・研究をもとに、そう切り出しました。一人ひとりの経験や知識といった独自の強みが掛け合わさることで新しい発想が生まれるという考えです。この考えを踏まえ、山口さんはインクルージョンを「帰属意識」と「独自性」の2つの視点から整理する方法1)を紹介し、組織を4つのタイプに分けて解説しました。ここでいう「帰属意識」とはチームの一員として受け入れられていると感じる状態を意味し、「独自性」とは自分らしさを発揮できると感じられることを指します。この2つがともに満たされると、チームのメンバーであるという感覚を持ちながら、一方で、自分の強みを出すことが受け入れられているという組織にとって望ましい状態になります。さらに山口さんが注目したのは、資生堂社内の調査で浮かび上がったある事実です。「自分らしさを発揮できている」という実感に、男女で明確な差があったのです2)
      なぜこうした差が生まれるのかを丁寧に見ていく中で、独自性を育てるためには、挑戦の機会を女性社員にも公平に提供することや、将来のキャリアを描ける見通しを持たせることが重要だと述べました。あわせて、上司やリーダーが「何をどこまで期待しているのか」を言葉にして明確に伝えることが、一人ひとりの力を引き出すカギになると提言しました3)

    • 岡林薫さん
      岡林さんは、DE&Iが資生堂の企業ミッションである「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を実現するための経営戦略の重要な柱であると説明しました。そのうえで、社内で実際に行われている具体的な取り組みを紹介しました。

      事例①|多様な人が活躍できる会議運営4)
      出社を推奨する日の設定や、資料を事前共有して各自で考えを整理しておくプレリード制の会議など、一見すると業務効率を高める仕組みが紹介されました。こうした工夫が、社歴や業務経験、言語などの違いがあっても、意見を出しやすく力を発揮できる、インクルーシブな職場づくりにつながっていると語りました。

      事例②|自分の思い込みに気づくための機会づくり5)
      多様なバックグラウンドを持つ人があつまる組織では、日々の対話がより重要になると岡林さんは述べました。上司と部下のあいだで生じた認識のずれ、いわゆる「すれ違い」がどのように起き、解消されたのかを実際のエピソードを交えて紹介しました。安心して意見を伝えられる状態である心理的安全性が、新しい挑戦やイノベーションを生む土台になることにも触れました。こうした違いを理解しあうための場を意図的につくることが、互いの強みを活かす組織づくりにつながると話しました。

    • 半澤絵里奈さん
      半澤さんは、電通を含む6社での協働の取り組みとして、女性営業職の働き方に目を向けたプロジェクト6)を紹介しました。活動を進める中で、「女性だから」という属性そのものよりも、営業職に根付いてきた働き方や価値観、組織カルチャーそのものに課題があるのではないかと気づいたと語りました。半澤さんは、「重要なのは、自分たちはどう働きたいのかを、当事者自身が言葉にして話し合うこと」だと述べました。

      また、電通でリーダーに求められる6つの行動指針”dentsu Leadership Attributes(dLA)”7)を示し、とりわけ「自分より優れた人財を育成する」という視点が、組織の成長に欠かせないと共有しました。

  • ディスカッションより

    ディスカッションでは、インクルージョンをチームスポーツになぞらえながら話が進められました。マネジメントの実践ポイントに加え、部下が自らの状況や思いを上司に伝えるための一歩を踏み出すことの大切さにも話題が広がりました。誰もが参加しやすいインクルーシブなチームは、日々の小さなコミュニケーションの積み重ねから生まれる―そんな原点が、3者の対話を通じて改めて浮かび上がりました。

    Keywords 1.インクルージョン:帰属意識×独自性 2.独自性を高める経験機会:挑戦の機会、期待とキャリアの見通し 3.期待値の明確化 4.組織の実態を客観視:行動から変えてみる
  • Q&A

    ※当日の質疑応答のハイライトと、当日ご紹介しきれなかった内容についても、参考リンクをあわせて掲載しています。

    • 女性リーダーがまだ少ないチームでもできることは?

      山口慎太郎さん:資生堂の取り組みには、比較的取り入れやすい工夫も多くあります。そうした小さな積み重ねが、現在の姿につながってきたのではないでしょうか。まずは、「帰属意識」や「独自性」という視点から、チームの状態を振り返ってみることが大切です。日々のコミュニケーションでは、無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)に気をつける必要があります。「女性だから」と決めつけてしまうと、自分らしさを発揮しにくくなってしまいます。一人ひとりが異なる存在であることを前提にしたコミュニケーションを意識しましょう。

      岡林薫さん:ジェンダー平等やDE&Iに取り組む目的を、組織の中で共有することが重要です。方針だけが示されても、現場に共通認識がないと戸惑いが生じうると感じています。自分たちの組織にとって、この取り組みがどのような意味を持つのか、どんな課題があるのかを言葉にして捉えることが大切だと思います。

    • 定型業務の中で、自分らしさを発揮するのは難しいと感じる

      山口慎太郎さん:定型業務が中心の場合、自分らしさを発揮しにくいと感じるのは自然なことです。その中でも、求められている内容を少し超える工夫を考えてみる視点がヒントになるでしょう。
      その際、同僚や上司と相談しながら進めることで、方向性をすり合わせることができ、最終的な評価にもつながりやすくなるのではないでしょうか。

    • 資生堂で行われている研修について知りたい

      資生堂では、人の力を大切にする「PEOPLE FIRST」の考えのもと、社員自ら成長していく姿勢を大切にしています。そのため、一人ひとりの自律的なキャリア開発を支援する制度を整えてきました。目的と対象者に応じて、選抜型プログラム・選択型プログラム・必須プログラムの3種類の研修プログラムを提供しています。中でも、女性リーダーの育成を目的とした特徴的な研修については、以下で詳しく紹介しています。

    • 多様なライフスタイルを持つ社員に対して、どのように公平性を実現すべきか

      資生堂では、職務内容に応じた目標を設定し、上司と部下が一年を通じて対話を重ねる評価の仕組みとして「パフォーマンスマネジメント」を導入しています。この制度では、働いた時間の長さではなく、あらかじめ合意した目標に対して、どのような成果を生み出したかを重視しており、働き方の違いにかかわらず、一人ひとりの貢献を公正に評価するようにしています。多様な働き方と組織の公平性を両立する考え方については、以下をご覧ください。

  • シンポジウムを通じて

    組織のカルチャーを変えていく取り組みは、短期間で結果が見えるものではありません。まずは、自身の組織の状態を客観的に見つめ、小さな行動から変えていくことが出発点になります。
    課題は、見えにくい形で潜んでいることも多く、一つの壁を乗り越えた先で、また新たな課題に気づくこともあります。それは失敗や後退ではなく、前に進んだからこそ見える景色です。
    今回のシンポジウムでは、「始めること」、そして「続けること」そのものが、変化につながる大事な一歩であることが、改めて共有されました。

参加者アンケート

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