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「資⽣堂ショック」と呼ばれた
美容職社員の働き⽅改⾰
〜あれから10年〜 【後編】
「資⽣堂ショック」と呼ばれた
美容職社員の働き⽅改⾰
〜あれから10年〜 【後編】
「資⽣堂ショック」と呼ばれた美容職社員の働き⽅改⾰から約10年がたった今、
資⽣堂の⼥性活躍推進の歩みにあの改⾰がどのような影響と成果をもたらしたのか、
当時育児時間を取得していた美容職社員や周囲の社員への
インタビューを通して考察していきます。
「美容職社員の働き⽅改⾰」の詳細については下記の記事をご覧ください。
INDEX
01
育児時間取得社員
(当事者)の想い
当時2回目の育児休業から復職したばかりの美容職社員、百﨑さんにお話しをうかがいました。
会社から育児時間取得者の働き⽅に関する制度運⽤変更の案内があった際、率直にどう思いましたか?
百﨑 : 案内があった際は正直なところ、育児をしながら早番や遅番、⼟⽇祝⽇勤務などやっていけるだろうか? ⼦どものお迎えはどうしようなど不安がありました。でも、仕事を辞めるという思いには⾄らなかった。どうやりくりするか、パートナーの夫にも協⼒してもらい、なんとかやってきました。
辞めようと思わなかったのはどうしてでしょうか?
百﨑 : 当時、育児時間を取得していましたが、化粧品専⾨店の⼀つのお店を任されていました。お客さまのご満⾜を⾼めるにはどうすればよいか、とにかく仕事が楽しくやりがいを感じていましたし、周囲の⽅々の理解があり、とても環境に恵まれていました。責任を全うして期待に応えたいという思いがあったのです。
ご⾃⾝のキャリアを振り返って、キャリアを継続してこられた意義、また今後実現したいことはありますか?
百﨑 : 現在は美容職社員を育成・サポートする⽴場にいます。これまで家庭と仕事を両⽴してきた⾝として、育児期社員の状況や気持ちがよくわかっているつもりです。両⽴は⼤変で、辞めたいと思ったことももちろんありましたが、キャリアを継続してきた今は、当時の私と同じ悩みを抱えている後輩たちをサポートしたいですし、これまで⽀えてもらった感謝を、今私の周りにいる職場の仲間たちに返していきたいと思っています。
02
育児時間取得社員が
働く職場の状況
⼀⽅、育児時間取得者ではない、周囲の美容職社員は当時の状況をどうみていたのでしょうか? 当時、育児期の社員が多く働くデパートで、教育担任として店頭をサポートしていた⽊下さんにうかがいました。
制度運⽤の変更前、店頭はどのような状況でしたか?
木下 : 当時一部ですが、育児時間取得者は早番・遅番、休日シフトに入らないという暗黙の配慮がありました。育児期という困難さはわかっているものの、それをカバーする周囲の社員の負荷は増加傾向にあり、⾔葉にできない不満が⼤きくなっていました。必然的にチームのパフォーマンスにも影響を及ぼすという事態にあったと思います。
美容職社員の働き⽅改⾰は、そのような現場にどのような影響を与えましたか?
木下 : 制度運⽤変更の案内を契機に、これまで育児のための短時間勤務を取得していた社員も、周囲のサポートがあることで⾃分は早番・遅番、休⽇出勤なしが実現できていること、仕事仲間や家族、周囲の助けのうえに成り立っていることをあらためて考えるきっかけになりました。そして、実際に早番・遅番、土日祝日勤務を担うようになりました。また、育児経験がない社員もいつかは⾃分もサポートしてもらう⽴場になるかもしれないと思うようになり、育児期社員もそうでない社員もお互い⽀え、⽀えられながら成り⽴っているのだと、お互いの⽴場を思うよいきっかけになったと思います。
03
「資⽣堂ショック」が
もたらしたもの
〜インタビューを終えて〜
「美容職社員の働き⽅改⾰(資⽣堂ショック)」がもたらしたものとは
美容職社員の働き⽅改⾰は育児期の当事者はもちろん、
周囲の社員も含めた全員の働き⽅改⾰でもあったと思います。
どうすれば⼈⽣に起きるさまざまな事象を乗り越えていけるのか、
マイナスばかりではなくプラスの⾯も含め、みんなが⾃分事として考える機会になりました。
この働き⽅改⾰は、当社の課題を改善するために取り組んだことですが、
その後、働き⽅改⾰の⽬的が社会に正しく理解され、
「育児期社員もキャリア成⻑の対象であること」「男性(パートナー)の家事、育児への参画の必然性」
「インクルーシブな職場環境は全員の理解と⾏動変⾰で成し遂げるもの」
という3つの気づきを社会に提⽰したのではないかと考えています。
成果①「育児期社員のキャリア成⻑」
美容職社員の百﨑さんのお話しからわかるように、育児期でも責任ある仕事を任されたこと、それがやりがい・仕事の楽しさとなり、キャリアの継続と成長につながったことが語られています。育児期が困難な時期であることは間違いありませんが、ハードルは個々の状況によって異なります。育児期だからと“暗黙の配慮”をするのではなく、最適な配慮のあり方を本人と関係する社員が模索すること、さらに、その状況が変化することを理解すること、フレキシブルな環境対応力が求められていることを私たち資生堂は学びました。さまざまな事象を抱えた社員がそのハードルを乗り越え、自身のキャリア成長につなげることは可能だと確信した経験です。
成果②「男性(パートナー)の家事、育児への参画の必然性」
現在、企業における男性の育児休業取得促進も義務化され、10年前に比べ男女ともに育児や家事に取り組む風土は根付きつつあります。しかし当時の社会にとっては大きなインパクトがあったことは事実です。家事や育児の負担が大きく女性に偏っている課題を浮き彫りにし、同時に家事や育児への男性(パートナー)の参画意識の向上や働き方の課題を社会に提示しました。すべてを母親が抱え込まなければならない、という社会通念や固定観念から脱却していくことも不可欠なテーマです。
成果③「インクルーシブな職場環境」
「インクルーシブな職場環境」とは、誰もがお互いを尊重し、認め合い、個々の能力を存分に発揮できる職場であると考えます。この働き方改革により育児期社員もそうでない社員もケガや病気、介護などの問題により、誰でも制約のある状況になる可能性があり、お互いの立場を考え、支えあうことの大切さを考えるきっかけとなりました。誰もが中長期的なキャリアを描き、持てる力を発揮するためには、なによりも働くチーム全体でお互いを尊重すること。それが基盤となり、組織が成り立っていくのだと認識することができました。
資生堂の女性活躍はまだ道半ばですが、
「資生堂ショック」と呼ばれた美容職社員の働き方改革を通じて、
「育児と両立しながら仕事が続けられる」というステージから
「育児や介護などを抱えている社員もキャリアアップできる」という
ステージへの移行につながりました。
今では、男女問わず育児や介護をしながら管理職として
活躍する社員も多数存在します。
今後も資生堂は誰もが自分らしく能力を発揮できる会社・社会を目指し、
取り組みを推進していきます。