MESSAGE

D&I戦略

資生堂が培ってきたD&Iに関する知見や学び、
そして「美の力」を通じて、
インクルーシブな社会づくりに貢献していきます。

代表取締役
エグゼクティブオフィサー
常務
チーフマーケティングオフィサー
チーフD&Iオフィサー

鈴木 ゆかり

多様なプロフェッショナル人財

エグゼクティブオフィサーメッセージ

価値創造の戦略
Diverse
Professionals

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に対する考え方

ダイバーシティは、価値創造の源泉です。多様な価値観が尊重され、一人ひとりが持てる能力を存分に発揮できる環境をつくることは、企業成長を実現していくために不可欠と考えています。だからこそ、資生堂は創業以来、ダイバーシティの精神を培い、価値創造と組織能力の向上に努めてきました。
特に、女性の活躍推進においては、一人ひとりの社員がそれぞれのライフスタイル・ライフステージに合わせて、オーナーシップをもってキャリアを積み上げていくことを重視してきました。国内では、2017年からスタートした女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」や「Speak Jam」などの取り組みを強化したことから、2022年1月時点で国内女性管理職比率は2017年から12.2ポイント上昇し37.3%、グループ全体では58.3%となりました。
2020年には内閣府による「女性が輝く先進企業」で「内閣総理大臣表彰」を受けました。グローバルでは、各国・地域の取締役会で活躍する女性役員のネットワーク「Women Corporate Directors Foundation(WCD)」において、資生堂のトップマネジメントにおける多様性が評価され、日本企業として初めてVisionary Awardsの「Leadership and Governance of a Public Company部門」を受賞するなど、外部から評価いただけるようになりました。ここで満足することなく、さらなる高みを目指します。
また、ビューティービジネスを展開する基盤となる包摂性豊かな社会(インクルーシブな社会)づくりに向け、改めてD&Iを重要な経営戦略と位置づけています。

インクルーシブな社会の実現に向けて

資生堂では、中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」の策定に伴い、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現に向けて、何をなすべきか、社会にいかなる貢献ができるのか、議論を重ねてきました。「よりよい世界」とは、社会の一人ひとりが幸せを実感できる、すなわちインクルーシブな社会と言い換えることができます。
一方で、現在の社会に目を向けると課題は山積しています。人種、性別、国籍、性的指向、障がい、年齢など、これらの格差や排他性がもたらす問題は、世界的にも重要テーマとなっており、近年の「Black Lives Matter」や児童労働に代表されるように生活者の関心も高まっています。
しかしながら、日本は、ダイバーシティの面で大きく後れを取っていると言わざるを得ません。ダイバーシティの象徴である「ジェンダー格差」に至っては、日本は世界で120位(ジェンダー・ギャップ指数2021)という状況です。
私たちは資生堂が培ってきた知見や学び、そして「美の力」を通じ、インクルーシブな社会づくりに貢献ができるのではないかと考えています。これからは社内はもとより、社会に向けた活動も強化していきます。

戦略の方向性

社会への貢献を目指し、戦略の柱を以下の2つに定めました。

1つは、女性の活躍支援です。先に申し上げたとおり、日本企業のジェンダー格差解消は喫緊の課題であり、その解決は、日本社会全体の課題解決にも資すると考えています。社長 CEOの魚谷が会長を務める「30% Club Japan」での女性役員比率向上の取り組みをはじめ、この分野でのリーダーシップを発揮し、企業変革・社会変革のきっかけをつくり、女性活躍支援の加速を働きかけていきます。
また、グローバルラグジュアリーブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」は、2019年にユニセフ(国連児童基金)とグローバルパートナーシップを締結しました。3年間におよぶ本パートナーシップを通じ、ユニセフのジェンダー平等を目指す取り組みの分野において、世界最大規模となる合計870万米ドルの寄付を行い、少女たちの権利を守り、教育や雇用の機会を提供するユニセフの活動を支援しています。
その一環として、美容液「ル・セラム」を1本ご購入いただくごとに、売上の一部をユニセフの活動へ寄付するキャンペーンをグローバルで実施しています。また、同ブランドでは、グローバルチャリティープログラム「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」を設立し、教育を通じて少女たちの社会的地位の向上、女性のエンパワーメントを推進するため、毎年女子教育に貢献した女性を表彰するなど、独自の活動を行っています。

もう1つは、「美の力による包摂性向上」です。資生堂は、美の力によるエンパワーメントを重視してきました。「美」には多様なかたちがあり、さまざまな価値観によって成り立っていると考えます。資生堂の2030年ビジョンにおいても、生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美を実現する「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」を目指すこととしています。社会の新たな課題となっているアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)の解消に対して、化粧やビューティービジネスが果たせる役割は大きいと考えます。資生堂のそれぞれのブランドが持つ影響力、発信力を活かし、インクルーシブな社会づくりを前進させていきます。
さらに、あざや傷跡など深い肌悩みにお応えする「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」では、医療機関や関連団体、そして取引先の皆さまとの協働により展開拡大を図るほか、国内業界他社とともにがんに罹患された方の治療による外見ケアをサポートし、自分らしく生きていくことを応援する活動を強化します。日本以外にもすでに活動を進めている中国、シンガポール、台湾の国・地域に加え、今後は他の国・地域での展開も拡大していきます。

資生堂 ライフクオリティー メイクアップ
がん患者さんを支援する取り組み「LAVENDER RING」のオンラインイベントの参加者

社内のD&I推進

もちろん社内のD&Iの取り組みについても手を緩めることはできません。
D&Iの推進によって、多様な人財や異なる個性を受け入れ、一人ひとりがオープンに議論・協働し、イノベーションを生み出すインクルーシブな組織文化を醸成することを目指します。人事施策として各種制度・研修などの整備はもとより、近年では、多様な働き方を可能とする仕組みの構築、ジョブを起点とした処遇・報酬制度への転換や、これを適切に運用するためのマネジメント改革を行ってきました。2018年のグローバル本社での英語公用語化や、2017年に開始したリバースメンタリングプログラムなどは、導入から数年が経過し、世代やバックグラウンドの違いを尊重し合う土壌づくりにつながっていると感じます。
一方、引き続き女性の活躍支援は資生堂の最重要課題です。女性社員が能力を発揮できる労働環境の整備だけでなく、意思決定場面においてジェンダーバランスが確保されていることが重要です。日本においては、2030年までに「あらゆる階層における女性リーダー比率50%」という目標達成に向けた採用・育成、制度構築、啓発を重ね、活動を推進していきます。女性社員の自律的なキャリア構築の支援により、これまで女性登用の実績がなかった地域CEOや国内で初となる工場長といったポストで女性が活躍するなど、あらゆる領域や階層におけるジェンダーギャップの解消に向けて着実に前進しています。

チーフD&Iオフィサーとして

均一・同質の人財・組織文化は不健全であり、ともすれば危険を伴うことがあります。もちろん、アンコンシャスバイアスの問題は根深く、その解消は容易ではありません。しかしながら、人は、本来、多様なものです。今や多様性を尊重することが当たり前だと認識すべきだと思います。誰もが持てる能力を発揮できるインクルーシブな社会が人の幸せにつながると考えています。

私はD&Iについての学術的な研究や、人事部門での経験を積んだわけではありません。
しかしながら、チーフマーケティングオフィサーと兼務し、チーフD&Iオフィサーに就任した意義は、本業であるビューティービジネスを通じたD&Iの推進と社会価値の創出にあると捉えています。
私は、商品、店頭応対やサービスなどのブランド体験によって、一人ひとりのお客さまに寄り添いながら、インクルーシブな社会の実現に貢献できると思います。資生堂のD&Iを統括する立場として、その実現に向かって邁進していきたいと思います。

2022年4月

エグゼクティブオフィサーメッセージ

価値創造の戦略