資生堂は、戦禍によるやけど跡で苦しむ方に向けた日本初のメイクアップ製品の発売(1956年)をきっかけに、あざや傷跡などの外見の変化に対応する化粧品の開発や美容技術の向上に取り組むなど、科学的なアプローチで「美には心を豊かにし、生きる喜びや幸せをもたらす力がある」ことを解明してきました。美の力を通じ、さまざまな悩みや困難を抱える人の心身および社会的な満足※を実現する活動を、各種支援団体をはじめ、医療機関、地方自治体などをパートナーとして継続的な取り組みを推進しています。
日本においては、社会活動に専任する7名のソーシャルエリアリーダーと43名のソーシャルエリアパートナーが資生堂ジャパンに所属しています。彼女たちは社会活動に必要とされる知識や技術など専門性を身につけ、地域の特性とそれぞれの社会課題に対し、きめ細かい社会活動の企画・実行をリードしてきました。2024年は累計2,367件の活動のうち、新規活動は約40%に及び、新たな社会活動の担い手として地域に貢献しています。具体的な活動例としては、高齢者向けの化粧療法講座やがん治療中の方への外見ケアセミナー、視覚障がい者向けのガイドメイク講座、さらには学生や社会人を対象とした身だしなみ講座などがあり、多様な人々の前向きな社会参加を支援しています。
ソーシャルエリアリーダー
また、2022年から2024年にかけて、国内8カ所(北海道、山形県、栃木県、大阪府、広島県、札幌市、松山市、小松島市)の自治体と連携協定を締結し、地域社会の人々との強い関係を築いてきました。2024年には札幌市とウェルネスに関する連携協定「さっぽろウェルネスパートナー協定」を締結しました。当社は、健康づくりに関する啓発・情報発信など、さまざまな面で連携することにより、札幌市民のより一層の健康的な生活の実現を図ることを目指しています。
警察学校における身だしなみ講座の様子
高齢者のための心身リフレッシュ講座の様子
約70年の活動実績を持つ「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」は、戦禍によるやけど跡で苦しむ方への日本で初めてのメイクアップ製品の提供に始まり、専用製品「パーフェクトカバー」の開発、がん治療の副作用による外見ケアのための美容情報の発信などを通じて、QOL(生活の質)向上のための社会的支援を行ってきました。
「パーフェクトカバー」はブランド設立30年を経てリニューアルを行いました。あざや白斑、やけど跡、傷跡、がん治療の副作用による肌の色変化など、通常のファンデーションではカバーが難しい悩みに対応し、「カバーすることで自分らしくいたい方」を応援するブランドです。新しい「パーフェクトカバー」は、グローバルの多様なスキントーンに対応した色調を配置し、ファンデーションでは最大の18色を展開しています。さらにご要望の声の多いさまざまなアイテムも開発しました。
2025年2月にリニューアルした「パーフェクトカバー」
グローバルな肌の色に対応した新色配置
深い肌悩みに対応する「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」
当社は「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」という社会活動を通じて、年齢や疾病、障がいにかかわらず、誰もが自分らしい一歩を踏み出せるよう支援しています。この活動は公益社団法人消費者関連専門家会議(以下、ACAP)が主催する、「第10回 ACAP 消費者志向活動表彰」において深い肌悩みを持つ方にノウハウを無償で提供する取り組み、さらに行政や医療機関とも永続性のある協働基盤を構築されていることが高く評価され「消費者志向活動章」を受章しました。現在では、日本、シンガポール、台湾の各国各地域で専門施設「資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター」を拠点に活動し、2025年からはフランスにおいてもフランス白斑協会など支援団体と協力のもと活動を展開しています。
「資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター(日本)」でのコンサルテーションの様子
フランス白斑協会との共同活動の様子
資生堂は2017年から、「がんになっても笑顔で過ごせる社会を目指す」をテーマにがんサバイバーを支援する「LAVENDER RING 」に参画しています。
当社は中心となる活動である「MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES 」を主導し、ヘアメイクとポートレートポスター制作を通して、がんになっても自分らしく生きていけるように、社会への復帰の一助となる支援を行っています。この活動は、2021年には公益社団法人 企業メセナ協議会からメセナ優秀賞を受賞しました。2022年からは海外4つの国と地域(中国、シンガポール、台湾、タイ)でも展開しており、2024年はマレーシア、フィリピンにも拡大し、7つの国と地域で実施されました。これまで、医療機関・患者団体と協働のもと、38回の「MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」を実施し、1,000組以上※のがんサバイバーが参加しました。
また、日本では2021年世界対がんデーに、LAVENDER RINGフォトブック「自分らしく、を生きていく。―がんとともに生きる206人の笑顔と想い―」を出版しました。
2024年には台湾でも同コンセプトのフォトブックを出版し、大型書店での記念イベントが開催されました。がんサバイバーの方々のポスターやエピソードは、がんサバイバーご本人やそのご家族、サポーターの方々はもちろん一般の読者からも、「勇気や気づきを与えてくれた」「がんは誰にでも起こり得る身近なものだと感じられた」など多くの反響が寄せられました。
「自分らしく、を生きていく。―がんとともに生きる206人の笑顔と想い―」(ハースト婦人画報社出版)
「LAVENDER RING」のサイトはこちら
「MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」のサイトはこちら
「自分らしく、を生きていく。— がんとともに生きる206人の笑顔と想い —」に関するサイトはこちら
2024年8月 LAVENDER RINGフォトブック出版(台湾版)
2024年8月 台湾での出版記念イベントの様子
2024年8月 東京開催での撮影風景
2024年8月 ポスター展(東京開催)
2024年、日焼け止めブランド「アネッサ」は、太陽のもとでの活動を通じて、子どもたちの心と身体の健全な成長を支援する「ANESSA Sunshine Project(アネッサ サンシャイン プロジェクト)」※1を開始しました。
外で遊ぶことは、子どもの発育・発達における5つの側面(身体・情緒・社会・知的・精神)をバランスよく育み、特に自律神経機能向上により、意欲や自発性といった生きる力を形成する※2という知見に基づき、資生堂は、子どもたちが自発的に外で遊ぶ習慣を促すイベントの開催や、教育関係者や親子に向けた紫外線対策知識の提供を行いました。
この社会活動の一環として、公益財団法人日本サッカー協会のパートナーシップ制度「JFA PARTNERSHIP PROJECT for DREAM」において、化粧品ブランドとして初めてJFAソーシャルバリューパートナー契約を締結しました。「アネッサ」がJFAと共同で子ども向けの体験イベン024年、日焼け止めブランド「アネッサ」は、太陽のもとでの活動を通じて、子どもたちの心と身体の健全な成長を支トを開催し、安全に太陽のもとで遊ぶための親子紫外線対策講座や、さまざまなアクティビティを実施しました。
ANESSA Sunshine Project
JFAとの連携、「ANESSA Sunshine Project」の様子
資生堂は、2000年から日光に当たることができない紫外線過敏の難病「色素性乾皮症(以下、XP)」の患者の方々への支援策として、日焼け止め製品の寄付や、研究員・美容職社員によるセミナーなどを行っています。
セミナーでは、XP患者の方々も屋外活動を楽しむことができるように、日焼け止めを使って効果的に肌を保護する方法を伝えています。また、2005年から資生堂社員の給与積み立てによる募金「資生堂カメリアファンド」を利用した支援にも取り組んでいます。
紫外線過敏の難病「色素性乾皮症(XP)」患者への支援
2024年、高齢化率※1は29.3 %を記録し※2、世界で最も高齢化が進む日本では、厚生労働省の指針により地域で住民の健康増進に資する取り組みが強化され、がんサバイバーや高齢の方々を地域でサポートする体制づくりが進められています。
資生堂ジャパンは、高齢の方々の心豊かな社会生活の支援を目指し、日本各地域でリテールパートナーをはじめ、各種支援団体、医療機関、地方自治体などと連携を深め、健康寿命の延伸につながる活動「高齢者向け美容講座」を展開しています。2024年、埼玉県では当社と地域包括支援センター、ウエルシア薬局株式会社と協働し、同薬局が提供するコミュニティスペース「ウエルカフェ」にて高齢の方々を対象に、11カ所57回の美容講座を開催しました。
高齢者向け美容講座の様子
2024年より、無料のオンライン美容相談サービス「Online Beauty」内で、聴覚に障がいのある方々を対象にしたコースを設けました。このサービスでは、手話や口話、チャットを用いて、聴覚に障がいのあるお客さまが美容カウンセリングを受けやすくすることを目的として、一人ひとりの最適なコミュニケーション方法に合わせたオンラインカウンセリングが受けられます。今後も利用者の声を反映し、サービス向上を目指しています。
資生堂ジャパンでは、当事者ご自身で簡単にメイクができる当社独自の化粧法である「ガイドメイク」を「資生堂 ライフクオリティー ビューティーセミナー」のメニューに追加しました。現在まで「視覚障がい者向けオンライン」メニューも拡充し、視覚に障がいのある方だけでなく、知的障がいや発達障がいなど、さまざまな障がいのある方々にも「化粧のちから」通して、自分らしく過ごせる社会の実現を目指しています。
オンラインカウンセリングメンバー
「ガイドメイク」ポスター
資生堂は、多様な美を提供するビューティーカンパニーとして、無意識の思い込みや偏見によって「自分らしい美しさ」が制限されるUnconscious Beauty Bias(以下、UBB)を払しょくする活動をグローバルで展開しています。また、社内外のLGBTQ+コミュニティとアライ※に寄り添う企業として、LGBTQ+コミュニティへの支援を展開しています。資生堂は、ジェンダー、年齢、国籍などにとらわれず、誰もが自分らしく人生を楽しみ、個々の美しさに共鳴し合える世界の実現に貢献していきます。
国内では、資生堂ジャパンに所属する地域と連携して社会活動に専任する専門職社員であるソーシャルエリアリーダーとソーシャルエリアパートナーが中心となって、各地域におけるLGBTQ+コミュニティへの支援を推進しています。
2024年は、東京、群馬、名古屋、大阪、広島の各地で行われたレインボープライドのイベントに参加し、約200名の社員ボランティアとともにパレードへの参加や、美容体験ブースなどを出展しました。
国内の団体と連携した活動では、プライドセンター大阪と「セクシュアルマイノリティのためのメイクアドバイス講座」、広島県セクシュアルマイノリティ協会とLGBTQ+とアライの方々を対象とした「自分らしさ発見!メイクで自己プロデュース」講座、またRainbow Tokyo北区と「トランスジェンダー女性を対象としたメイクアップ講座」を開催しました。
海外地域本社においても、ニューヨーク、ドイツで行われたプライドイベントに参加し、自主的な社内の従業員リソースグループやブランドとともにパレードに参加しました。
「東京レインボープライド2024」のパレードの様子
「レインボーフェスタ!2024」の様子
「New York City Pride」のパレードの様子
ドイツ「ColognePride 2024」でのパレードの様子
資生堂では、これまでさまざまな肌悩みや顔立ちの特徴に合わせたメイクアップ方法を開発してきました。
2025年6月、当社はトランスジェンダー女性・ノンバイナリーの方々が抱える化粧に関する悩みに寄り添い、自分らしい魅力を引き立てていただくことを目的に「自分らしさを彩るメイクアップガイド」を公開しました。
情報開発にあたってはLGBTQ+支援団体の協力のもと、化粧に関する悩みやニーズについてアンケートを実施し、トランスジェンダー女性・ノンバイナリーの当事者の方々のさまざまな声を集めました。さらに、詳細なインタビューを重ね、資生堂ビューティークリエイションセンター所属のへアメイクアップアーティストが監修し作成しました。
本冊子では、特にこれからメイクアップを始めたい方に向けて、自分自身の顔立ちを知り、肌づくり・眉・目もと・口もとなどのパーツごとの悩み解決テクニックを紹介しています。これからも、資生堂はトランスジェンダー女性・ノンバイナリーの方々が「自分らしい魅力」を探求するためのサポートをしていきます。
メイクアップガイドは下記よりダウンロードのうえご覧ください。
トランスジェンダー女性・ノンバイナリーの方に向けた「自分らしさを彩るメイクアップガイド」
ポイントメイク チークの入れ方
企業情報
ブランド
サステナビリティ
イノベーション
投資家情報